コミュニケーション

【アサーション①】非主張的な自己表現 ~自己主張できない人のコミュニケーション~

非主張的な自己表現とは?

 非主張的な自己表現とは、

自分の考え・気持ち・要望を率直に伝えない自己表現

をいいます。

 具体的には、相手の顔色をうかがうなどし、不安や恐怖を芽生えさせてしまい、自分の意思をハッキリと表現しない(ハッキリと表現できない)自己表現の態様です。

 非主張的な自己表現をしてしまう人は、不安症傾向が強い精神状態になっています。

 相手に対して自己表現することに、無意識・反射的に不安、恐怖、抵抗感を作り出してしまうため、自己表現が、

  • 曖昧な言い方になる
  • 遠回しな言い方になる
  • 遠慮がちな言い方になる
  • オドオドした言い方になる
  • 声がちいさくなる
  • どもる

などしてしまい、相手に真意が伝わらないものになります。

 相手も、あなたの真意を受け取ることができず、ぎくしゃくした気まずいコミュニケーションになってしまったり、相手をイラつかせたりしてしまいます。

 そのため、ますます非主張的な自己表現しかできなくなっていきます。

非主張的な自己表現になってしまう要因

 非主張的な自己表現になってしまう要因は、

  1. 衝突を避けたい・嫌われなくない気持ちが強すぎる
  2. 相手との力の差を感じ、気後れする
  3. 察してほしい気持ちが強すぎる(察してくれるだろうと思っている)

ことがあげられます。

「①衝突を避けたい・嫌われなくない気持ちが強すぎる」について

 ハッキリとした自己表現をして、相手が不機嫌になったり、否定的な返しをしてきたら、誰でも傷つきます。

 しかし、この点に関して、敏感に反応しすぎるのは、不合理であり、マイナスです。

 自己表現したことに対して、相手が多少の不満や愚痴を言ったり、多少の否定的な反応を示しただけで、

「責められた」「怒られた」「否定された」

などと過敏に感情が動いてしまい、気持ちを乱してオドオドしてしまうと、良好・親密な関係を築くのが難しくなります。

 相手のネガティブな反応に過剰に反応してしまうと、相手を恐れるようになり、自分を守るために、本能的に相手と距離をとるようになります。

 それにより、次第に自由に言葉が出なくなり、率直・素直な自己表現をすることができなくなっていき、コミュニケーションが閉ざされていきます。

「②相手との力の差を感じ、気後れする」について

 非主張的な自己表現をしてしまうと、相手に、

あなたが弱い存在

という印象を植えつけてしまいます。

 同時に、自分自身の中でも、

自分は相手より弱い存在

という自意識を芽生えさせ、その自意識が、現実に態度(おどおどするなど)に現れるようになります。

 そのため、非主張的な自己表現をしてしまうと、

相手が上、自分が下

という上下関係が自動的に形成されてしまいます。

 非主張的な自己表現をすることは、相手に「どうぞマウントをとってください」と表現しているようなものです。

 実際に、相手は、具体的な態度であなたのマウントをとらなくても、少なくとも精神的にあなたのマウントをとるようになるので、以後、不利な立ち回りを強いられることになります。

 一度形成された上下関係は、そう簡単にはひっくり返りません。

 これは、人間には、「一貫性の心理」という心理法則が働くためです。

 「一貫性の心理」とは、自分の行動、言動、価値観に一貫性を保つように振る舞うことを好む心理をいいます。

 「一貫性の心理」により、人は、前と違うこと(一貫性の通らないこと)に対し、不快感や違和感を感じ、強い心理抵抗が生じます。

 なので、一度形成された上下関係を変えることは、「一貫性の心理」の力により難しいのです。

 たとえば、学生の頃の先輩・後輩の上下関係は、社会人になっても引きずり続けます。

 お互い社会人になり、久しぶりに会う後輩が「久しぶり!元気だった?」などとタメ口をたたいてきたら、あなたは強烈な違和感を感じることでしょう。

 このように、非主張的な自己表現を続けてしまうと、

相手が上、自分が下

という後からひっくり返し難い上下関係が形成されてしまい、相手との力の差を感じ、気後れしてしまうようになります。

 それにより、ますます非主張的な自己表現しかできなくなっていきます。

「③察してほしい気持ちが強すぎる(察してくれるだろうと思っている)」について

 「言わなくても察する」、さらには「察しないヤツが悪い」という価値観は、日本では多くの人がもっている価値観です。

 非主張的な自己表現をしてしまう要因の一つとして、

  • 察してほしい気持ちが強すぎる
  • 察してくれるだろうと期待する

という心理が根底にあることがあげられます。

 「言わなくても分かってくれるだろう」は甘えです。

 あなた自身が、相手の気持ちや考えを常に察することができないのと同じで、相手もあなたの気持や考えを常に察することはできません。

 「言わなくても分かってくれるだろう」という甘えから脱することで、非主張的な自己表現ではなく、ハッキリとした自己表現ができる可能性が高くなります。

 相手が察してくれることを期待するのではなく、自分が率直で適切な表現で伝えることを実行する方が、良い未来を作れるでしょう。

非主張的な自己表現をせずに、アサーティブな自己表現をする

 非主張的な自己表現は、

  • 不安や恐怖を抱え、おどおどする
  • 相手にマウントをとらせる
  • 自分に自信がもてなくなる

などし、自分の気持ちを率直・適切に相手に伝えることができないコミュニケーションです。

 非主張的な自己表現をして、相手に合わせたり、何となく分かった雰囲気を作ることで、短期的には問題を解決するように見えます。

 しかし、これは、問題を先送りしたり、後々、相手との関係にマイナスを生じさせるので、お勧めできません。

 なので、解決方法として、非主張的な自己表現ではなく、できるだけ、

アサーティブな自己表現

をすることが打開策になります。

 アサーティブな自己表現とは、

自分の気持ちや考えを、率直かつ状況に合った適切な方法で、相手の気持ちに配慮した上で伝える自己表現

をいいます。

 アサーティブな自己表現は、良好で親密な人間関係を作るための最善の自己表現の方法です。

このシリーズの記事まとめ一覧

【アサーション①】非主張的な自己表現 ~自己主張できない人のコミュニケーション~

【アサーション②】攻撃的な自己表現 ~相手を責めてしまう人のコミュニケーション~

【アサーション③】アサーティブな自己表現 ~自分と他人の両方を大切にするコミュニケーション~