結果バイアスとは?
人は、他人を評価をするとき、結果に至るまでのプロセスが適切だったかどうかではなく、結果が良かったか悪かったかで、他人を評価します。
この認知パターンを、『結果バイアス』といいます。
人は、結果バイアスをもっているため、後知恵で行為者を評価します。
行為者が良い結果を出せば、評価者は、後出しで、行為者の判断や戦略はすばらしかったと認定し、良い評価を贈ります。
反対に、行為者が悪い結果を出せば、評価者は、後出しで、行為者の判断や評価は良くなかった認定して、非難します。
結果バイアスのおかけで、結果に至るまでのプロセスに対する評価は、出した結果によって変化する後出しの評価になります。
結果バイアスは、当初はあったはず妥当性の評価を消し飛ばす
結果バイアスが入り込むと、意思決定を適切に評価すること、つまり、決定を下した時点で、それは妥当だったのか、という視点から評価することができなくなります。
決定を下した時点では、確かにその決定は正しくても、悪い結果が出た後は、当初あったはずの決定の正しさが認定されません。
たとえば、東日本大震災による福島の原発事故では、津波がくるという特殊事情が起こる前においては、福島の原発の管理体制は、特別に問題視されていなかったわけです。
もし、津波がこなかったパラレルワールドの世界が存在したとしたら、その世界では、福島原発の管理体制は、今でも妥当と判断されているかもしれません。
しかし、津波がきて、原発事故が発生し、いたましい被害が現実化したことで、津波がくる前の原発の管理体制の妥当性の評価は消滅することになりました。
結果バイアスは、もたらす結果によって、当初はあったはずの妥当性の評価を消し飛ばします。
悪い結果をもたらす「前兆」は、事後に見えるものである
評価者は、悪い結果を出した行為者を非難します。
たとえば、会社の上司は、部下がミスをすると、ミスの原因を創造し、「ちゃんと前兆があったのになぜ気づかなかったのか」というニュアンスで、部下を責め立てます。
その前兆となるものは、事後になって初めて見える代物です。
しかし、ほとんどの人は、それを意識できません。
そのため、後づけで悪い結果となった原因を考えたにもかかわらず、あたかも自分は最初から原因に気づいていたかのように振る舞い、行為者を非難するのです。
結果バイアスの弊害
もたらす結果が重大であるほど、結果バイアスは大きくなります。
良い結果が出れば問題はないですが、悪い結果が出た場合は、行為者は、結果バイアスに入り込んだ評価者から強く非難されます。
そのため、行為者は、非難をおそれて、リスクをとらない立ち回りをするようになります。
すると、行為者は、
- 挑戦しない
- 現状維持を優先する
- 標準的な業務手続に従う(標準的な業務手続を行っていれば、問題が起こっても手続のせいにできるので、後からとやかく言われる心配がない)
といった行動に走ります。
お役所仕事(業務規定に定めのない仕事は受けない、たらい回しにするなど)がよい例です。
こうなってくると、評価者(批判する側)も損をします。
結果を見て、行為者を批判すればするほど、行為者は消極になり、良い結果を生み出せなくなるからです。
行為者が良い結果を生み出せなくなれば、利益が評価者に回ってこなくなります。
結果を見て、行為者を批判するという行為は、評価者にとって、自分自身への利益相反行為でもあります。
行為者は批判されて不幸、評価者は利益が回ってこなくなって不幸、全員が不幸になる現象が起こります。
この現象は、たとえば、パワハラ上司と委縮して動けなく部下の関係など、身近なところで頻繁に起こっています。