「因果関係づけ」ができる事は ‶ 正しい ″
人の思考は、自動的に原因を探すようになっています。
人は、出来事に「因果関係づけ」をせずにはいられない脳回路になっているのです。
連想的な思考により、一貫性のある解釈を用いて、出来事と出来事をつなぎ、もっともらしいストーリーを作りあげます。
人は、因果関係づけができている事に対して、心地良さを感じます。
心地良さを感じるから、納得して、‶ 正しい ″ という認知になるのです。
まとめると、因果関係づけができている出来事や事象は、「心地良い」から「正しい」となります。
因果関係づけができていない出来事や事象は、「心地良さを感じない」から「正しいとは思われない」となります。
因果関係の知覚実験
心理学者アルベール・ミショットの実験
ミッショットは、
- 人間はさまざまな事象の相関性を繰り返し観察することによって、物理的な因果関係を推察する
- 人は、色を見るのと同じように、因果関係を見る
と主張し、以下のような実験を行いました。
被験者に①、②の図形の動きを見せる。
① 黒い四角を動かし、白い四角に接したところで止める。
② 白い四角が動き出して黒い四角から離れる。
実験結果
被験者は、白い四角がただちに動き始めたのを見て、黒い四角に押されたのだと勝手に考えてしまうという結果となりました。
被験者は、二つの四角が衝突したわけではないことを観察しているにもかかわらず、強力な因果関係の錯覚にとらわれました。
ミショットは、人が無意識に因果関係を作り出す思考をすることを証明しました。
人は生まれながらにして因果関係を見る能力をもつ
別の実験では、生後6か月の乳児に連続する出来事を見せると、因果関係として認識し、出来事の順序を入れ替えると驚くことが確かめられています。
つまり、人は、生まれたときから、因果関係の印象を受けやすくできているということです。
心理学者フリッツ・ハインダーらの実験
心理学者のフリッツ・ハインダーとマリアンヌ・ジンメルは、意志的な因果関係の知覚実験を行いました。
① 被験者に対し、図形が以下のような動きをする動画に見せる。
- 大きな△と小さな△と一つの〇が、家の形をした図形の周りをずっと動いている。
- 家のドアは開いている。
- 大きな△は攻撃的で、小さな△をいじめ、〇を怯えさせている。
- 小さな△と〇は力を合わせて大きな△をやっつけようとする。
- ドアのあたりで小競り合いが起き、最後は大衝突になる。
② 実験結果
動画を見せられた被験者は、どうしても上記のように、単なる図形に意思と感情を感じ取ってしまう結果となりました。
ちなみに、そうした感情を抱かなかったのは、自閉症の被験者だけでした。
図形がいじめるとか、怯えるといったことは、すべて人が頭の中で勝手に考えたことです。
この実験は、人は、何かしら主体を見つけ、それに人格や意思を持たせる傾向があることを明らかにしました。
事象に意思を見出す能力
0歳児ですら、いじめる側といじめられる側の区別ができます。
これは、人間に、事象に意思を見出す能力が生まれつき備わっているからです。
事象に意思を見出す能力があるために、人は、
- 他人の顔色をうかがい
- 他人の感情を推し量ることできる
のです。
因果関係づけを利用すれば、他人をコントロールできる
人は、因果関係づけができる事に対し、心地よさを感じ、‶ 正しい ″ という認知をします。
この性質を利用すれば、他人を説得したり、自分の都合の良いようにコントロールできるわけです。
たとえば、仕事で、報告書や企画書を作成する際には、因果関係づけを意識すればよいわけです。
正論・数値・事実に基づく根拠を用いるなどして、もっともらしい因果関係づけができれば、上司の脳に、作成した報告書や企画書を ‶ 正しい ” と認知させやすくなります。
次の例は、法律です。
法律は、最強の因果関係づけです。
例えば、殺人をした人は、刑務所行きになり、死刑により命を奪われることもあります。
殺人と死刑は、人が人を殺すという客観的状況に違いはありません。
しかし、死刑は、” 正しいこと ” と認知されるので、許容されます。
これは、人の脳内では、「死刑→法律にのっとって行われること→正しいこと」という因果関係づけが行われるためす。
法律による因果関係づけは、法律という最強の正論を用いた因果関係づけなので、99%の国民が思考停止で正しいという認知を行います。