人間のストレスの原因は「コントロール不能感」
人のストレスの原因は、コントロールの不能感です。
人は自分がコントロールできるものには快を感じますが、コントロールできないものには不快を感じます。
これは、人は、
- コントロールできるものを安心・安全で再現性があり、生存上、好ましいものと認知する
- 逆に、コントロールできないものは、危険で不安定なものであり、生存を脅かす、好ましくないものと認知する
からです。
他人の行動を変えたければ、コントロール感を与える
人は、自分のコントロール感が失われる出来事が起こると思ったら、その出来事は不快として抵抗します。
反対に、コントロール感が強まる出来事が起こると思ったら、それの出来事は快感として受け入れます。
よって、他人に影響を与え、他人の行動を変えたければ、相手をコントロールしたいという衝動を抑え込み、相手が相手にコントロール感を与えることが大切になります。
コントロール感を奪われると、人は、ストレスを感じ、怒り、失望し、反抗します。
逆に、コントロール感を与えられると、人は、自分自身が社会に影響を与えているという感覚を持つことができ、意欲を高めます。
コントロール感を与えるためには「選択肢」を与える
人は、選択肢を与えられると、コントロール感が増大し、意欲が高まることが分かっています。
アメリカのラトガーズ大学の神経学者マウリチオ・デルガード率いる研究チームは、実験で、
- 人は、選択の機会が与えられると、喜びを感じ、脳の報酬系である腹側線条体(ふくそくせんじょうたい)が活性化する
という結果を出しています。
ここで大切なのは、他人にコントロールしているという感覚を持たせることです。
人は、コントロールしているという感覚があるだけで意欲が高まります。
客観的事実としてコントロールしてる必要はありません。
「選ぶこと」でコントロール感が高まる理由
自分自身で選択すると、他人から押し付けられたものより自分の好みやニーズに合ったものを選ぶことができます。
たとえば、ユニクロに行き、あなたが着る服を母親が決めるよりも、あなた自身で決めた方が、自分が満足できる服を選ぶことができます。
自由選択の結果は好ましいという経験を繰り返すうちに、「選ぶこと」と満足感の関係が強固になり、私たちには、自分自身で選択したものに高い満足度を感じる脳回路が出来上がっているのです。
「選ぶこと」は、自らの自由選択の結果として気持ちを『快』にさせることから、あたかも自分が環境をコントロールしているかのような感覚にさせるのです。
なお、「選ぶこと」の内容は、たとえば、
- ユニクロで服を自分で選ぶのか
- 母親が選ぶのか
といった些細な内容でOKです。
重要なのは、何らかの選択肢があるという認識が持てることなのです。
まとめ
自分がやればできることに関して、できるかできないか分からない他の人間にコントロールを譲るのは、不安で、恐ろしく、ストレスを感じます。
多くの会社幹部、上司が、生産性や士気を損ねるにもかからわず、部下を細かく管理する必要があると感じてしまうのはこのせいです。
他人の行動に影響を与えたいとき、私たちは本能的に命令をしてしまいがちです。
しかし、人に命令する方法は、最善の結果や高い生産性をあげられない方法です。
人は、命令されて、コントロール感を失ってしまうと、主体性が制限されたと感じて発想力や創造力を失い、不安になってやる気をなくし、抵抗もしやすくなるためです。
そこで、他人に影響を与え、他人の行動を変えるためには、自分がコントロールしたい衝動を乗り越え、代わりに選択肢を与えなくてはなりません。
簡単ではないかもしれませんが、気づきがあれば、自分がコントロールしたい衝動は乗り越えられます。
時に、コントロールを託した人の仕事のクオリティが、自分のチームの仕事のクオリティであると割り切る覚悟も必要です。
選択肢があるという認識をもてるだけで、人のコントロール感は高まります。
コントロールを委ねること、もしくはコントロールしている気持ちにさせることは、人に創造力を発揮させ、最善の結果を出し、高い生産性をもたらす行動をさせるうえで最善の方法になります。