正の相関関係バイアス
人間の脳は、つながりを推測するとき、実際にはない正の相関関係を見出すバイアスを持っています。
例えば、好きになった人がいたとします。
好きになればなるほど、この人は素晴らしい人だと考えます。
そして、いざ付き合ってみると「こんなはずじゃなかった」と思って別れます。
「好き」と「素晴らしい人」が正の相関関係にあり、相手に対して実態とは異なる予測を脳がしてしまったため、このような事態になります。
仕事においても正の相関関係バイアスは働きます。
東大卒の新卒社員が入社してきたら、普通の感覚に基づけば、その新卒社員は仕事ができるヤツなんだろうと予測します。
実際には、高学歴者が仕事ができるとは限りません。
このように、人間の脳は、事実がどうかに関係なく、正の相関関係を見出すようにプログラムされているのです。
人間の脳が、正の相関関係を見出すことについては、2007年のPsychonomic Bulletin & Review「 Iterated learning: Intergenerational knowledge transmission reveals inductive biases 」の研究論文で発表されています。
この研究では、‶人はつながりを見出すとき、実際にはない正の相関関係を見出だす。つまり、ある要素が増せば(例えば、トマトのサイズが大きくなったら)、もう一つの要素(トマトの甘さ)も同じような比率で増すというふうに結論づけてしまう″と人間がどんな場合でも正の相関関係を見出す傾向にあることを明らかにしました。
正の相関関係バイアスと錯覚資産
私は、人に正の相関関係バイアスが備わっていることを理解して意識できることが、仕事や私生活を送る上で重要であると思ったので、今回この記事を書きました。
仕事において、初期段階で‶頭が良い″などのレッテルは貼ってもらえるなど、第一印象が良い人は、その後も、上司から優秀なヤツという推測をしてもらえるので、実際に優れた仕事ができていなくても、高い評価を受けやすくなります。
逆に、最初に仕事でミスが多いダメなヤツというレッテルを貼られると、その後も、上司からダメなヤツとう推測をされてしまうので、標準以上の仕事をしていても、評価が伸びないという事態に陥りやすくなります。
このような結果が導き出される理由は、人に正の相関関係バイアスが備わっているためです。
錯覚資産
林修先生も注目する「錯覚資産」という概念についても、正の相関関係バイアスがもたらす産物といえます。
錯覚資産は、『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている(ふろむだ著)』という本から生み出され、社会的に認知されるようになりました。
錯覚資産とは、「人々が自分に対して持っている、自分に都合のいい思考の錯覚及びその錯覚を引き起こす事実」と定義されます。
例えば、東大卒という事実は錯覚資産になります。
東大卒である事実が、他人に、‶あなたは優秀な人間である″という認知の錯覚を引き起こすからです。
実際に、政治家の出身大学について、一番人数が多いのが東京大学、二位が早稲田大学、三位が慶応大学となっており、有名大学出身の方が、人々から指示される(票をもらえる)ことが分かります。
「有名大学=優秀な人間」という正の相関関係バイアスが存在していることが分かると思います。
参考に林修先生の錯覚資産に関する動画を置いていきます。面白ですよ。→動画リンク
なぜ正の相関関係バイアスに支配されるのか
人が正の相関関係バイアスに支配される理由は、人間の未来予測能力に関係していると私は思っています。
人が持つ未来の予測能力は、超絶貧弱です。
過去+現在→未来
というように、過去と現在のつながりから、未来を予測するのが精一杯なのです。
自分が経験した過去を‶1″、現在を‶1″という数値にして例えると、
1+1→2
という計算をやっているようなものです。
人間の脳では、1+1→3、4、5、6…というふうに未来を予測することができません。
自分が経験した過去の‶1″と現在の‶1″を足した‶2″より先の数値は、地球上の様々な因果で構成される数値になるので、人間一人の脳みそでは計り知ることができないからです。
人の脳は、過去と現在の情報を足して、未来を予測するということをしているのです。
なので、新入社員が最初に優秀な活躍をすれば、現在は平凡な活躍しかしていなくても、上司から、優秀+平凡→優秀という未来予測をしてもらえるのです。
心理学的でいうところのハロー効果(ある対象を評価する時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象)状態です。
人は最初の印象で全てが決まるというやつです。
人の「過去+現在→未来」という未来予測能力の貧弱さが、人が正の相関関係バイアスに支配される理由になっているといえます。
余談
話が変わりますが、不安症の人は、人の未来予測能力は、「過去+現在→未来」程度しかないことを理解できると良いと思います。
分からない未来に過剰に恐れを感じてしまうと不安症を発症してしまいます。
人間の脳みそに、先の未来を予知する能力は備わっていません。
人間に与えられた能力上、未来は分からないものだということを理解し、割り切りましょう。
どんな未来がくるか分からないのは誰のせいでもありません。
人間の能力上の問題です。
確にも分からない未来を不安に感じることに時間と労力を費やしても徒労に終わるだけです。
コントロールできない未来に不安を感じるより、コントロールできる現在に時間と労力を注いでいきましょう。
とはいえ、私は、困難や苦痛を伴う未来が来る予感がする時は不安になってしまうので、そんな時は、ブログを書いて知識のアウトプットをして思考力を鍛えるなど、現在の自分の実力を高めることにコミットし、未来を迎え撃つというポジティブな感覚を作ることで不安を軽減するなどの努力をしたりします。
できることといえば、困難な未来が来ても戦えるように現在の自分を鍛えることくらいしかありません。
あのホリエモンも「人間なんて5年先の未来でさえも予測できない。だから未来のことなんか考えることに意味はない。」という言葉を残しています→動画リンク
まとめ
タイトル回収のためのまとめをします。
人間は、正の相関関係バイアスに支配されて生きています。
そして、私たちは、正の相関性バイアスを持った他人から評価されながら社会生活を送っています。
つまり、私たちは、正の相関関係バイアスを持った他人に、バイアスによる偏見に基づいた評価を受けて価値づけされて生きているということになります。
バイアスのかかった他人の不完全な評価の影響を受け、自分の価値を定義して生きる人生はクソゲーだと思っています。