公判における弁護人
弁護人とは、
刑事事件において、被疑者・被告人を補助する者
をいいます。
弁護人は、基本的には弁護士がなります。
今回は、公判において被告人を補助する弁護人について説明します。
※ 捜査において被疑者を補助する弁護人についての説明は前の記事参照
※ 被疑者と被告人の違いの説明は前の記事参照
被告人に弁護人を付すことを規定した法
被告人は、法律の知識に乏しく、被告人一人で法律の専門家であり国家機関である検察官に対等に立ち向かうことは困難です。
そのため、法は、以下のような、被告人に弁護人を付すことの詳細な規定を設けています。
- 被告人の弁護人依頼権を保障(憲法37条3項)
- 被告人はいつでも弁護人を選任できる(刑訴法30条)
- 被告人を勾留するには、被告人に対し、弁護人を選任することができる旨及び貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない(刑訴法77条)
- 司法警察員、検察官は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取ったときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げなければならい(刑訴法203条、204条)
弁護人の役割
弁護人は、被告人の正当な権利の保護者であり、被告人の訴訟法上の権利を誠実に行使すべき義務があります。
具体的には、以下の①~③の義務があります。
① 弁護人は、被告人の不利益に行動してはならない
例えば、被告人の意思に反して不利益な証拠を裁判に提出することは、弁護人の役割に反する行為になります。
② 弁護人は、被告人の正当でない利益を擁護してはならない
例えば、
- 虚偽の証拠を裁判所に提出すること
- 証人に虚偽の供述を勧めること
は、弁護人の正当な弁護活動の範囲を逸脱するものとなります。
弁護人の上記のような行為は犯罪を構成する場合があり、以下の裁判例があります。
大審院判決(大正7年4月20日)
弁護人が虚偽の証拠であることを知りながら、真正なものとして、裁判官にその虚偽の証拠を提出した場合は、証拠隠滅罪(刑法104条)が成立するとしました。
③ 弁護人は、被告人に従属することなく、法律家としての立場で、被告人の正当な利益が何であるかを判断しなければならない
例えば、被告人が身代わり犯人として有罪になることを望んだとしても、弁護人は被告人の正当な利益のため、被告人の望みに従うべきではありません。
身代わり犯人の弁護を引き受けた弁護人が、真犯人の自首を阻止するとともに、法廷で被告人が真犯人であるかのような弁論をした事案で、弁護人に犯人隠避罪が成立するとした判例(大審院判決 昭和5年2月7日)があります。
補佐人とは?
弁護人と同じく、被告人を補佐する者として補佐人がいます。
補佐人とは、
被告人との一定の身分関係に基づいて、情宜上、被告人を補助する者
をいいます。
補佐人となり得る者は、
です(刑訴法42条)。
補佐人となり得る者の範囲は私選弁護人の選任権者の範囲(刑訴法30条2項)と同じです。
補佐人となるには、審級ごと(一審、控訴審、上告審ごと)にその旨を裁判所に書面で提出しなければなりません(刑訴法42条2項、刑訴法規則32条)。
補佐人になるに当たり、
- 被告人の選任行為は必要ではない
- 裁判所の許可が必要である
という点で、私選弁護人や特別弁護人の選任の場合と異なります。
(私選弁護人や特別弁護人の選任は、被告人の選任行為が必要であり、裁判所の許可は必要ありません)
補佐人は、被告人の明示の意思に反せず、かつ、刑事訴訟法に特別の定めがある場合を除いて、被告人がなし得る訴訟行為を全てなすことができます(刑訴法42条3項)。
次回の記事に続く
次回の記事では、被告人の私選弁護人を説明します。
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