車でカーブを通過する際の注意義務
過失運転致死傷罪(自動車運転死傷行為処罰法5条)における「自動車の運転上必要な注意」とは、
自動車運転者が、自動車の各種装置を操作し、そのコントロール下において自動車を動かす上で必要とされる注意義務
を意味します。
(注意義務の考え方は、業務上過失致死傷罪と同じであり、前の記事参照)
その注意義務の具体的内容は、個別具体的な事案に即して認定されることになります。
今回は、車でカーブを通過する際の注意義務について説明します。
注意義務の内容
カーブ通過の際の事故は、対向車と行き違う際に生じるものが多数であり、この際の注意義務は道路の広狭、見通しの良し悪しなどの客観的状況によって異なります。
道幅が狭く見通しの悪いカーブでは、見通可能距離(対向車発見可能距離)の少なくとも二分の一で停止できる速度で進行すべきであると判示した裁判例があります(福岡高裁判決 昭和44年12月24日)。
道幅が狭いが見通しの悪くないカーブを通過する場合は、相手車と安全に離合できるように、自車を可能な限り左側に寄せ減速して進行すべきであり、このような措置をとったにもかかわらず、対向車との衝突事故が生じた場合は、対向車側に過失あるとした裁判例があります(仙台高裁判決 昭和39年11月19日)。
狭い道路で対向車と離合する際、その付近に離合に適当な箇所があれば、その箇所に近い方の車両がそこで一時停止して相手車を待避し、安全に離合した後に発進すべきであるとあした裁判例があり、このことは、カーブ通過の際にも当てはまります(岡山地裁判決 昭和41年2月7日)。
見通しの悪いカーブ通過において、大型車のように自車の通行部分を進むことが困難なときは、警音器を吹鳴して対向車に自車の接近を知らせるべきであるとされます(高松高裁判決 昭和47年3月7日)。
大型の対向車を認めたときは、自車が小型車であっても、離合の際に接触するおそれがあるので、徐々に減速してできる限り道路の左に寄りるべきとされます(大阪高裁判決 昭和46年5月28日)。
高速度で対向車線に進出することを避けるべきとされます(名古屋高裁判決 昭和59年7月12日)。
狭いカーブでの追越しは、対向車進行区分に進行することとなるので、避けるべきであることは当然とされます(広島高裁判決 昭和41年12月12日)。
被告車が、対向車を発見した後、減速し、道路左側に寄って進行したのに、相手車(原動機付自転車)が道路中央を対向して来るので、更に左転把し、急停車の措置をとったが衝突した事案で、相手に過失ありとし、被告人には過失はないとした裁判例があります(大阪高裁判決 昭和37年3月8日)。
業務上過失致死傷罪、重過失致死傷罪、過失運転致死傷罪の記事まとめ一覧