自我消耗とは?
- 何かを無理矢理がんばってこなした後で、次の難題が降りかかってきたとき
- 怒りなどのストレスに耐え抜いた直後に、また別のストレスが降りかかってきたとき
もう耐えることや努力することができなくなる現象が起こり、ストレスを爆発させたりします。
この現象を「自我消耗」といいます。
人は、それぞれメンタルエネルギーの水の入ったプールをもっていると考えると分かりやすいです。
辛い努力をしたり、怒りを我慢するなどを繰り返すたびに、メンタルエネルギーのプールの水が抜けていきます。
このプールから水が抜けていく状況が自我消耗している状況です。
プールの水がゼロになると、人は努力や怒りに耐えることができなくなり、努力を続けることをやめ、ストレスを爆発させます。
心理学者のロイ・バウマイスターらの実験
心理学者のロイ・バウマイスターのチームは、一連の実験を行い、認知的、感情的、身体的のいずれかを問わず、あらゆる自発的な努力は、メンタルエネルギーの共有プールを利用していることを証明しました。
バウマイスターらの実験は、同じ並行的なタスクではなく、連続的なタスクを使って行われました。
代表的な実験結果を紹介します。
感情を抑える→身体的耐久力のテストの成績が悪くなる
感情的な反応を抑えるよう指示したうえで、被験者に感動的な映画を見せると、その後は身体的耐久力のテスト(握力計を握り続けるテスト)で成績が悪くなりました。
これは、実験の前半で感情を抑える努力をしたために、筋収縮を保つ苦痛に耐える力が減ってしまったことが原因です。
自我消耗した人の末路
自我消耗した人は、「もうギブアップしたい」という衝動にいつもより早く駆り立てられます。
自我消耗した被験者は、この後で難しい認知的タスクを課されると、いつもより早く降参してしまいました。
強い意志やセルフコントロールの努力を続けるのは疲れる
実験で繰り返し確認されたのは、強い意志やセルフコントロールの努力を続けるのは疲れるということです。
意思力やセルフコントロールを消耗させる状況やタスクには、さまざまなものがあります。
- 考えたくないのに無理に考える
- 怒りを我慢する
- 自分の意思に反することを行う
- 他人に合わせる
などなど。
我慢に疲れ、我慢の限界に達すると、意志力やセルフコントロール力が吹き飛び、以下のような行動をとるようになります。
- 利己的になる
- 挑発的で汚い言葉遣いをしやすくなる
- キレる
- やる気がなくなる
- 仕事をなげだす
- 意思決定で適当な判断をする
この実験により、バウマイスターらのチームは、人には、メンタルエネルギーというものが確かに存在することを明らかにしました。
自我消耗は回復させる必要がある
人は、自我消耗を起こすので、自我消耗を回復させることを意識的に行う必要があります。
自我消耗により、水の抜けたプールに水をそそぐイメージです。
自我消耗を回復させる手段は、リフレッシュすることです。
旅行、運動、買い物、食事など、我慢のいらない好きなことすれば、少しずつ自我消耗を回復させることができます。
同じ好きなことをするにしても、ただ漫然と好きなことをして時間を消費する意識ではなく、自我消耗を回復するという目的をもって、生産的に時間を使う意識でいることに価値があります。
【追記】自我消耗はブドウ糖の摂取でも回復できる
脳は、エネルギーとして、多くのブドウ糖を消費する器官です。
自我消耗する仕事に取り組んでいるときに、脳のエネルギーであるブドウ糖が消費されます。
ブドウ糖が不足すると、自我消耗が加速します。
ということは、脳にブドウ糖を供給することができれば、自我消耗は回復できます。
バウマイスターらの実験により、ブドウ糖を摂取することで、自我消耗を回復できることが分かっています。
(ブドウ糖を摂取した被験者は、自我消耗後でも、脳が使えるブドウ糖レベルが回復したおかけで、与えたタスクの正答率は下がらなかったという実験結果がでています)