あなたに、たとえ話の質問をします。
あなたは、会社の上司で、部下のAさんとBさんを評価をする立場にあるとします。
部下Aさんの業績は、
- 今期の営業成績 100万円の売上
- Aさんに対するお客様満足度 95%
です。
部下Bさんの業績は、
- 今期の営業成績 20万円の売上
- Aさんに対するお客様満足度 45%
です。
それでは、部下Aさんと、部下Bさんの社内評価を行ってください。
評価項目は、以下の①と②の2つです。
①と②の2つの項目で、それぞれA~D評価(Aが一番良い、Dが一番悪い)をつけてください。
① 今期の業績評価
② 将来性の評価
― 回答 ―
ほとんどの人が、
部下Aさんについては、
① 今期の業績評価(現在の評価)
→ A評価
② 将来性の評価
→ A評価
部下Bさんの評価については、
① 今期の業績評価(現在の評価)
→ CまたはD評価
② 将来性の評価
→ CまたはD評価
になったと思います。
当たり前といえば当たり前です。
しかし、ここで大切なことがあります。
それは、人は、「将来の評価」を要求されたとしても、「将来の評価」を、手元の情報の評価(現在の評価)に置き換えてしまうということです。
しかも、無意識にです。
つまり、自動的に「現在の評価」=「将来の評価」になります。
人は、「現在の評価」と「将来の評価」を区別できないのです。
「現在の評価」と「将来の評価」を区別できない理由
人が、「現在の評価」と「将来の評価」を区別できない理由を2つ挙げます。
①「現在の評価」も「将来の評価」も、評価の材料が同じになる
人は、現実第一主義であり、「見たものがすべて」という思考をします。
そのため、「現在の評価」であろうが、「将来の評価」であろうが、評価の材料になるのは、手元にある情報、入手できた情報になります。
手元にない情報、入手できていない情報に思いをはせて、評価は行いません。
脳は、現実に認識できる情報でないと、信用しないからです。
まとめると、「現在の評価」も「将来の評価」も、評価に使う材料が同じになるため、「現在の評価」も「将来の評価」も同じ評価になってしまうのです。
② 人は、現在の感情を基に、未来を考えてしまう
人が未来を考えるとき、現在の感情を無視できません。
今、仕事がうまくいって儲かっており、ウキウキした気分のときに、将来(未来)のことを考えれば、将来も仕事がうまくいって儲かっていると予想します。
人が想像する未来とは、現在の感情や思考に、少しだけ変化を加えて作ったものになるからです。
人の創造力は乏しいのです。
今もっている手持ちの情報を使って想像するのだから、仕方ありません。
もし、今、仕事がうまくいかず、借金まみれであり、絶望的な気分のときに、将来(未来)のことを考えれば、将来も仕事がうまくいかず、借金が残っているかもしれないと予想してしまいます。
このように、人は、未来を考えるときに、現在の感情を未来に投げ出して、未来を想像するのです。
そのため、「現在の評価」を行ったときの感情が、「将来の評価」を行うときの感情と同じになり、「現在の評価」と「将来の評価」は同じような評価になるのです。
「現在の評価」は「将来の評価」であることを自覚すべき
現実には、「現在の評価」は「将来の評価」とイコールでありません。
今はダメでも、将来は突き抜けて伸びるなんてことは、ざらにあります。
他人から低評価を受けた時、「俺はこれからもっと伸びるんだ。あの人は、俺の本当の能力と価値を分かっていない。」と思うことがあると思います。
そして、その思いは正しいかもしれません。
しかしながら、他人にとって、あなたに対する「現在の評価」は、「将来の評価」とイコールになることは、肝に銘じておく必要があります。
人の脳が、「現在の評価」と「将来の評価」を区別できない作りになっているので、仕方がないのです。
「現在の評価」=「将来の評価」という前提を分かった上で、社会を立ち回っていける人が、賢い人です。