強要未遂罪とは?
強要未遂罪(刑法223条1項・3項)は、強要罪の手段としての脅迫又は暴行はなされたが、
相手方に義務のないことを行わせ、又は、権利の行使を妨害するには至らなかった場合
に成立します。
また、強要罪の成立を認めるには、脅迫暴行と被害者の作為・不作為との間に因果関係が認められる必要があります。
なので、
脅迫、暴行と被害者の作為・不作為との間に因果関係が認められない場合
には、強要罪の成立は認められず、強要未遂罪となります。
したがって、
脅迫があったにもかかわらず、畏怖心を生ぜず、しかし、何らかの他の理由によって義務のないことを行ったというような場合
は、強要未遂罪として罰せられます。
強要未遂罪と脅迫罪の関係
強要罪の手段として脅迫を行った以上、強要の目的を遂げるに至らなくても、強要未遂罪を構成することは当然ですが、当然に強要未遂罪ではなく、脅迫罪(刑法222条)が認定されるものではありません。
ただし、態様により、強要罪自体(強要罪・強要未遂罪)が成立しない場合には、脅迫罪が成立し得るという関係にはあります。
この点に関する参考判例として、次のものがあります。
大審院判決(昭和7年3月17日)
この判例で、裁判官は、
- 人の生命・身体等に対し、特定の条件の下に、危害を加えるべき旨の通告を為したる場合において、その条件が被通告者をして義務なきことを行わしむることに存するときは、刑法第222条の単純脅迫罪に該当せずして、第223条の強要的脅迫罪に該当するものとす
- 而して、叙上の如き危害を加えるべき通告を為したるに、被通告者をして義務なきことを行わしむるに至らざるときは、同第223条第3項の未遂罪を構成するものとす
と判示しました。
強要未遂罪の成立時期
強要未遂罪の成立時期は、
強要罪の実行の着手があったとき
です。
そして、強要罪の実行の着手時期は、強要の目的で脅迫、暴行が開始された時点に求められるべきであるとするのが多数説となっています。
参考となる判例として、次のものがあります。
大審院判決(昭和7年3月17日)
この判例は、陸軍運輸部長に郵送した脅迫状を、庶務課長が内容不穏であるとして同部長に渡さなかったために、強要の目的を遂げなかったという事案で、強要未遂罪を認めました。