刑法(非現住建造物等放火罪)

非現住建造物等放火罪(4) ~「罪数」「他罪との関係」を説明~

 前回の記事の続きです。

罪数

 非現住建造物等放火罪(刑法109条)の罪数の考え方は、現住建造物等放火罪(刑法108条)の罪数の考え方と同じです。

※ 現住建造物等放火罪(刑法108条)の罪数の考え方は前の記事参照

 非現住建造物等放火罪(刑法109条)の罪数に関する判例として以下のものがあります。

1個の放火行為で数人が共有する漁船を焼損した場合、刑法109条1項の単純一罪であるとした事例

大審院判決(大正12年11月15日)

1個の放火行為で複数の非現住建造物を焼損した場合、1個の非現住建造物放火罪が成立するとした事例

大審院判決(大正11年12月13日)

 裁判官は、

  • 単一なる放火行為により数個の建造物を焼燬したるときは、これを包括的に観察し、単一なる放火罪として処分すべきものとす

と判示しました。

大審院判決(大正12年11月15日)

 裁判官は、

  • 放火罪の規定は公共的法益の侵害に重きを置いて設けられたるものにして、単一なる放火行為により数人の財産的法益を侵害したる場合といえども、単一なる放火罪として処断すべきものとす

と判示しました。

刑法109条1項の建造物とともに、より軽い罰則の物件を焼損したときには、刑法109条1項の罪のみが成立するとした事例

大審院判決(昭和2年4月20日)

 非現住建造物内にある刑法110条1項の物件(建造物等以外放火罪の客体を焼損した事例です。

 裁判官は、

と判示しました。

大審院判決(昭和7年12月14日)

 他人所有の非現住建造物と犯人の自己所有の保険を付した建造物を併せて焼損した事案で、刑法115条(差押え等に係る自己の物に関する特例)を適用する必要はないとし、刑法109条1項の非現住建造物等放火罪のみが成立するとした事例です。

 裁判官は、

  • 刑法第109条第1項における他人の所有物と自己の所有物とを併せ焼燬したる場合においては、自己の所有物が保険に付しあるときといえども、同法第115条を適用する要なきものとす

と判示しました。

他罪との罪数の関係

 非現住建造物等放火罪(刑法109条)の他罪との罪数の考え方も、現住建造物等放火罪(刑法108条)の考え方と同じです。

※ 現住建造物等放火罪(刑法108条)の他罪との罪数の考え方は前の記事①前の記事②参照