刑事訴訟法(公判)

伝聞証拠⑮~刑訴法324条の「被告人から」又は「被告人以外の者から」の伝聞供述の証拠能力の説明

 前回の記事の続きです。

 前回の記事では、刑訴法323条の特に信用できる書面の説明をしました。

 今回の記事では、刑訴法324条の「被告人から」又は「被告人以外の者から」の伝聞供述の証拠能力の説明をします。

被告人からの伝聞供述の証拠能力の説明(刑訴法324条1項)

 刑訴法324条1項は、

証人尋問を実施し、法廷において被告人以外の者が、被告人から聞いた話を内容とする供述(証言)をした場合に、その証言は、刑訴法322条の規定を準用し、証拠能力を与える

とする規定です。

 より詳しく説明すると、被告人以外の者A(共犯者・参考人など)が、公判準備又は公判期日において、裁判所又は裁判官に対し、法廷外で被告人Bから聞いた内容(原供述)を供述(伝聞供述)する場合には、刑訴法322条の規定を準用し、被告人BがAになした供述(原供述)が刑訴法322条の要件を満たすときは、Aの伝聞供述に証拠能力を認めるというものです。

 「刑訴法322条の要件を満たすとき、Aの伝聞供述に証拠能力を認める」とは、被告人BがAになした原供述が、

  1. 被告人に不利益な内容(自白・不利益事実の承認)であった場合は、その被告人の供述に任意性があれば無条件で証拠能力を認める(刑訴法322条1項本文前段)
  2. 被告人に不利益な内容でない場合は、その被告人の供述が特に信用すべき情況の下になされたときに限り証拠能力を認める(刑訴法322条1項本文後段)

というものです。

 このような伝聞供述に刑訴法322条を準用する理由は、

Aの法廷における伝聞供述は、あたかも法廷外における被告人Bの供述をAが書面に録取して、その供述録取書をAが法廷に提出するのと実質的に同じため

です。

裁判例

 刑訴法324条1項により伝聞供述に証拠能力が与えられた事例として、以下の裁判例があります。

名古屋高裁判決(昭和25年3月2日)

 被告人を取り調べた警察官が、証人として出廷し、法廷でした被告人の供述を内容とする証言は、刑訴法324条1項により証拠能力が与えらえるとしました。

 裁判官は、

  • Tの証言はTが大垣市警察署巡査部長として勤務中本件に関し、被告人らを取調べた際における被告人らの供述をその内容とするものであって、明らかに刑事訴訟法第324条第1項所定の被告人以外の者の公判期日における供述に該当する

と判示しました。

東京高裁判決(平成3年6月18日)

 被告人を取り調べた検事が、証人として出廷し、法廷でした被告人の供述を内容する証言は、刑訴法324条1項により証拠能力が与えらえるとしました。

 裁判官は、

  • 捜査官が被告人を取調べて聴取した内容を公判廷において証人として供述した場合に、その供述に刑訴法324条の適用がないと解すべき法令上、実質上の根拠は見当たらない
  • 刑訴法324条1項によれば、「被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人の供述を内容とするものについては第322条の規定を準用する」とし、刑訴法322条は、「被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名もしくは押印のあるものは、被告人に不利益な事実の承認を内容とするもの又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り証拠とすることができる」旨を規定していて、刑訴法324条1項が、「被告人以外の者」の範囲について法文上なんら限定を加えていないばかりでなく、証人がした供述は宣誓によってその信用性が担保され、一方、被告人としても、公判廷で証人に対し被告人が供述したとされる内容が正確に再現されているか否か十分に反対尋問をすることができ、更に、いつでも右証言内容に関する被告人自身の意見弁解を述べることができるのであるから、被告人の供述がその署名押印のある供述調書に記載されている場合とを比較して、証人の供述により公判廷に顕れた被告人の捜査官に対する供述内容のほうが、その信用性や証明力が劣るということはできない

と判示しました。

被告人以外の者からの伝聞供述の証拠能力の説明(刑訴法324条2項)

 刑訴法324条2項は、

証人尋問を実施し、法廷において、被告人以外の者Aが、被告人以外の者Bから聞いた話を内容とする供述(証言)をした場合に、その証言は、刑訴法321条1項3号の規定を準用し、証拠能力を与える

とする規定です。

 より詳しく説明すると、被告人以外の者A(共犯者・参考人など)が、公判準備又は公判期日において、裁判所又は裁判官に対し、法廷外で被告人以外の者B(共犯者・参考人など)から聞いた内容(原供述)を供述(伝聞供述)する場合には、刑訴法321条1項3号の規定を準用し、BがAになした供述(原供述)が刑訴法321条1項3号の要件を満たすときは、Aの伝聞供述に証拠能力を認めるというものです。

 「刑訴法321条1項3号の要件を満たすときは、Aの伝聞供述に証拠能力を認める」とは、BがAに対してなした原供述が、

  1. 法廷における供述不能
  2. 犯罪の存否の証明に不可欠
  3. 特信情況の存在

の三要件を全ての備える場合に Aの伝聞供述に証拠能力を認めるというものです。

 刑訴法321条1項3号が準用される理由は、

Aの法廷における伝聞供述は、あたかも法廷外におけるBの供述をAが書面に録取して、その供述録取書をAが法廷に提出するのと実質的に変わりがないため

です。

 なお、刑訴法321条1項では、伝聞供述が供述録取書に記載され、その供述の相手が裁判官であるとき(裁判官面前調書:1号書面)又は検察官であるとき(検察官面前調書:2号書面は、刑訴法321条1項1号・2号で要件が緩和されていますが、伝聞供述の場合は、伝聞供述者Aが裁判官・検察官であっても刑訴法321条1項3号の三要件全て(①法廷における供述不能、②犯罪の存否の証明に不可欠、③特信情況の存在)を備えなければ、証拠能力が付与さない点がポイントです。

 これは、伝聞供述の場合は、供述録取書の場合と異なり、原供述者が供述の正確性を確認していないためです。

裁判例

 刑訴法324条2項により証拠能力が認められた伝聞供述の事例として、以下の判例・裁判例があります。

福岡高裁判決(昭和28年8月21日)

 ひき逃げ事件の目撃者A(事件後に所在不明となり連絡が取れなくなった者)から事故現場で「加害車両はBのものだ」と聞いたCが、目撃者Aからの伝聞内容を公判廷で証言したCの証言部分(伝聞供述)について刑訴法324条2項により証拠能力を認めました。

 裁判官は、

  • 第三者(※目撃者A)は その氏名、所在不明であって公判期日に喚問することができず、かつその供述(伝聞部分)が犯罪事実の存否の証明に欠くことのできないものであり、なおその供述者は本件事故を起した自動車のすぐ後に続いて事故現場を自転車に乗り、通りかかった者であり、その場においては被害者の同伴者であるCに対し 前記自動車はBのものだと告げたことをその内容とするものであるから、特に信用すべき情況の下になされたものと解するを相当とする
  • そうだとすれば、刑事訴訟法第324条第2項により準用される同法第321条第1項第3号の条件を充足するものとし前示伝聞の部分に付いても証拠能力を認むるを相当とする

と判示しました。

 さらに、このひき逃げ事故で、被害者D (死亡)が「やられた、やられた、B、B」と叫んだのを聞いたEが、被害者Dからの伝聞内容を公判準備で証言したEの証言部分(伝聞供述)についても刑訴法324条2項により証拠能力を認めました。

 裁判官は、

  • 被害者Dが「やられた、やられた、B、B」と言ったとの部分は伝聞証言ではあるが、事故により死に瀕している者の事故に関する発言を内容とするものであるから、右伝聞に証拠能力を認むべきものと解するを相当とする

と判示しました。

東京高裁判決(昭和36年2月1日)

 ひき逃げ事件の目撃者Cが所在不明となり、Cから事故現場で加害車両の特徴を聞いた警察官Aが、証人として法廷でしたCから聞いた話を内容とする証言は、刑訴法324条2項に規定する伝聞供述であるとしました。

 裁判官は、

  • 証人(警察官A)がタクシーの運転者から聞いたという本件の事故を起した車はカゴメソースの車てあり、接触したのを見たとの趣旨の言葉は、刑事訴訟法第324条第2項に規定するいわゆる伝聞供述であることは明らかであるが、右タクシー運転者は、氏名及び住居ともに不明であって、公判準備又は公判期日において供述することはできないものであり、かつ、右運転者の供述は、犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものと解せられ、しかも、右証人の供述する当時の状況からみて、右運転者の供述が特に信用すべき情況の下にされたものと認められるのであるから、右法条によって準用される同法第321条第1項第3号により、右証人の伝聞供述は、証拠能力を有するものということができる
  • 右証人が警察官でありながら、右タクシー運転者の住所、氏名、勤務先等を確かめる方法をとらなかったことは、捜査に従事する者として適切な措置を欠いたとのそしりを免れないとしても、これがため、右タクシー運転者が同法第321条第1項第3号にいう所在不明のため公判準備又は公判期日において供述することができない場合に当らないものとするわけにはいかない

と判示しました。

最高裁判決(昭和38年10月17日)

 共犯者A又はDから「拳銃の射撃訓練を円山の射撃場で行った。」旨を聞いた共犯者Cが、A又はDから聞いた伝聞内容を法廷で証言したその証言は、刑訴法324条2項に規定する伝聞供述であるとし、原供述者は、二者択一(A又はDのいすれか)であっても原供述者の範囲が特定されているために証拠能力を有しないとはいえないと判断しました。

 裁判官は、

  • 円山の警察官射撃場における拳銃の射撃訓練に関する部分は、A、Bらが円山の警察官射撃場で拳銃の射撃訓練をしたことを要証事実としているものと解せらそるが、供述者Cは、自ら体験せずAまたはDから聞知した事実を述べているのであるから伝聞供述であり、しかも原供述者はニ者択一的である
  • しかしながら、原供述者がニ者択一的であっても、原供述者の範囲が特定の両者に限定されている以上、所在不明等の事由さえなければ証人として各これを尋問し、反対尋問を行なうことができるのであるから、伝聞供述の原供述者がニ者択一的であるというだけの理由で、その供述が証拠能力を有しないものとはいえない
  • しかして、右伝聞供述が刑訴324条2項321条1項3号所定の要件を具備し、従って証拠能力を有するものと認められる

と判示しました。

再伝聞の証拠能力の説明

 被告人や被害者などの供述書・供述録取書の記載中に、被告人や被害者が他の者から聞いた話(伝聞事項)が記載されている場合、その伝聞事項を「再伝聞」といいます。

 供述書・供述録取書自体が伝聞(第1次伝聞)なので、その第1次伝聞に記載されている伝聞事項は第2次伝聞となり、その第2次伝聞は「再伝聞」と呼ばれるものです。

⑴ まず初めに、再伝聞の部分は、刑訴法326条の検察官又は被告人の証拠にしてもよいとする同意の意思表示によって証拠能力が与えられます。

 再伝聞の部分も刑訴法326条の同意により証拠能力が与えらえることを判示した以下の裁判例があります。

広島高裁判決岡山支部(昭和27年2月27日)

 裁判官は、

  • Hの司法巡査に対する供述調書を証拠として採用していること及び同調書の内容にHの直接体験した事実に関する供述のほかに、Mより伝聞した事実に関する供述をも含んで居り、またその供述に一部食い違いのあることは、原判決竝びに前記供述調書の記載によってこれを認めることができるが、右伝聞供述の記載を含む同調書を証拠とすることについては、被告人も弁護人も何らの制限をも加えず完全に同意しているのであって、右同意は、同調書の供述者であるHのみならず、原供述者であるMに対する反対尋問の権利をも併せて放棄したものと認めるのが相当であるから、これを採って事実認定の証拠としたからといっても毫も伝聞法則の禁止に触れるものではない

と判示しました。

⑵ 次に、刑訴法326条の同意がなかった場合には、再伝聞の部分の証拠能力は、刑訴法321条1項322条を適用した上、更に刑訴法324条1項・2項を類推適用して証拠能力が決せられます。

 例えば、警察官A作成の供述調書(第1次伝聞)を通して法廷に顕出された目撃者Bの「被害者が犯人はCだと言っていた」という供述(再伝聞の部分)(第2次伝聞)は、刑訴法324条の「公判準備又は公判期日における供述」と同視できるため、再伝聞の部分については、第1次伝聞に関する規定である刑訴法321条1項322条を適用した上、更に法324条1項・2項を類推適用して、その証拠能力を決します。

 参考となる判例、裁判例として以下のものがあります。

最高裁判決(昭和32年1月22日)

 被告人以外の者の検察官調書に記載された被告人からの伝聞事項については、刑訴法321条1項2号検察官調書の証拠能力)に加えて、刑訴法324条1項322条が準用され、証拠能力が認められるとしました。

東京高裁判決(昭和30年4月2日)

 被告人以外の者の検察官調書に記載された被告人以外の者からの伝聞事項については、刑訴法321条1項2号のほか、324条2項321条1項3号が準用され証拠能力の有無が決せられるとしました。

 裁判官は、

  • 原判示第一の放火未遂の事実の証拠として原判決は被告人A6の検察官に対する供述調書を挙げているし、それもその供述内容を刻明に判決に引用し、単に証拠の標目を示しているだけにとどまらないのであるが、この引用された供述中に被告人A6が「A5からA5、B4、A7、B1の4人でG7方へ火焔瓶を投げつけてきたという話を聞いた」旨の供述記載があることは所論(※弁護人の主張)のとおりである
  • そこで所論(※弁護人の主張)は検察官に対する伝聞事項の供述は、公判期日における供述中の伝聞について刑事訴訟法第324条の規定が存するのとは違い、直接証拠能力を認めた規定がないから、前記A6の供述調書中同被告人がA5から聞知した内容は証拠能力がなく(刑訴第320条)これを証拠としている原判決は違法であると主張するのである
  • なるほど刑事訴訟法第324条は被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で、被告人又は被告人以外の者の供述を内容とするものの証拠能力について規定するが、検察官に対する供述調書中に現われている伝聞事項の証拠能力につき直接規定はない
  • しかし供述者本人が死亡とか行方不明そのほか刑事訴訟法第321条第1項各号所定の事由があるとき、その供述調書に証拠能力を認めたのは、公判準備又は公判期日における供述にかえて書類を証拠とすることを許したものにほかならないから、刑事訴訟法第321条第1項第2号により証拠能力を認むべき供述調書中の伝聞にわたる供述は公判準備又は公判期日における供述と同等の証拠能力を有するものと解するのが相当である
  • 換言すれば、検察官供述調書中の伝聞でない供述は刑事訴訟法第321条第1項第2号のみによってその証拠能力が決められるに反し、伝聞の部分については同条のほか、同法第324条が類推適用され、従って同条により更に同法第322条又は第321条第1項第3号が準用されて証拠能力の有無を判断すべきであり、伝聞を内容とする供述はそうでない供述よりも証拠能力が一層厳重な制約を受けるわけであるが、検察官に対する供述調書中の伝聞にわたる供述なるが故に証拠能力が絶無とはいえない

と判示しました。

次回の記事に続く

 次回の記事では、

刑訴法325条の供述の任意性の調査の説明

をします。

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