刑事訴訟法(公判)

裁判を始めるまでの準備手続① ~「公判準備とは?」「被告人への起訴状謄本の送達」「被告人への弁護人選任権の告知」を説明

公判準備とは?

 検察官が事件を裁判所に起訴した後、裁判が始まるまでに、裁判を始める準備として裁判所が公判期日外(裁判を行う日以外の日)に行う手続を「公判準備」といいます。

 公判準備には、

  1. 被告人への起訴状謄本の送達
  2. 被告人への弁護人選任権の告知
  3. 公判期日の指定
  4. 被告人を裁判に召喚する手続
  5. 訴訟関係人(検察官、被告人・弁護人、裁判官)の事前準備

に分けられます。

 この記事では、「① 被告人への起訴状謄本の送達」と「② 被告人への弁護人選任権の告知」を説明します。

① 被告人への起訴状謄本の送達

 公訴の提起があると(検察官が事件を起訴すると)、裁判所は、 まず起訴状の謄本を被告人に送達します(刑訴法271条1項刑訴法規則176条)。

 これは、被告人に対して起訴状の内容を知らせ、被告人が裁判に臨むに当たり、事前に防御の準備を十分にさせるためです。

 刑訴法規則5条1項において、検察官は、公訴の提起と同時に、被告人の数に応ずる起拆状の謄本を裁判所に提出しなけれはならないと規定しており、起訴状謄本は、検察官が作成して裁判所に送付します。

 起訴状謄本の送達の方法は、民事訴訟法の規定(民訴法98~109条)が準用されます(刑訴法54条)。

 ただし、公示送達(裁判所の掲示板に掲示して送達の効果を発生させるもの)の規定(民訴法110条~113条)は準用されません(刑訴法54条)。

勾留中の被告人の場合は、被告人が勾留されている刑事施設の長に対し、起訴状謄本が送達される

 刑務所などの刑事施設や警察の留置施設に勾留中の被告人の場合は、起訴状謄本は、被告人が勾留されている刑事施設の長又は警察の留置施設の長に対して送達されます(民訴法102条3項)。

起訴状謄本が被告人に2か月以内に送達されない場合は、公訴が棄却される

 起訴状の謄本が、公訴提起日から2か月以内に被告人に送達されない場合は、公訴の提起はさかのぼって効力を失い、裁判官の決定で公訴が棄却されます(刑訴法271条2項刑訴法339条1項1号)。

 このため、裁判所は、起訴状謄本の送達ができなかったときは、直ちにそのことを検察官に通知しなければなりません(刑訴法規則176条2項)。

起訴状謄本の不送達により公訴が棄却された場合であっても、公訴時効は停止する

 公訴時効とは、刑事手続上の概念で、犯罪が終わった時から一定期間を過ぎると公訴が提起できなくなる(検察官は事件を起訴できなくなる)制度です。

 各犯罪の公訴時効は、刑訴法250条で定められており、例えば、傷害罪(刑法204条)は、法定刑の上限が15年以下の懲役なので、その公訴時効は、刑訴法250条2項3号により10年となります。

 本題ですが、起訴状謄本が被告人に送達されなかったため、公訴棄却の決定がされた場合であっても、公訴提起から公訴棄却決定の確定までの間につき、公訴時効の進行は停止したものとして扱われます(刑訴法254条1項)。

 この点を判示した判例があります。

最高裁決定(昭和55年5月12日)

 裁判官は、

  • 刑訴法254条1項の規定は、起訴状の謄本が同法271条2項所定の期間内に被告人に送達されなかったため、同法339条1項1号の規定に従い決定で公訴が棄却される場合にも適用があり、公訴の提起により進行を停止していた公訴時効は、右公訴棄却決定の確定したときから再びその進行を始めると解するのが相当である

と判示し、公訴提起によって進行を停止した公訴時効は、公訴棄却の決定の確定により再び進行を始めるとしました。

被告人への弁護人選任権の告知

 裁判所は、公訴の提起があったときは、被告人に弁護人があるときを除き、遅滞なく、被告人に対し、

  • 弁護人を選任することができること
  • 貧困その他の事由により私選弁護人を選任することができないときは国選弁護人の選任を請求することができること

を告知しなければなりません(刑訴法272条1項刑訴法規則177条)。

 さらに、必要的弁護事件(死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪、刑訴法289条)の場合を除き、

  • 国選弁護人の選任を請求するには資カ申告書を提出しなければならないこと
  • その資力が基準額以上(50万円以上)であるときは、あらかじめ弁護士会に弁護人選任の申出をしていなければならないこと

を教示しなければなりません(刑訴法272条2項36条36の2条36の3条)。

※ 国選弁護人を選任できるのは、資力が50万円未満である必要があります。資力が50万円以上ある場合は、国選弁護人は選任できないので、私選弁護人を選任することになります。

※ 資力の基準額が50万円以上とされる根拠は、刑事訴訟法第36条の2の資産及び同法第36条の3第1項の基準額を定める政令の2条に規定されています。

 このように被告人に対して弁護人選任権の告知することを必須とする法の規定になっているのは、被告人に対し、私選弁護人の選任権と国選弁護人の選任請求権があることを知らせ、弁護人選任の権利の行使を十分にさせるためです。

起訴後、裁判所は、被告人に対して、弁護人の選任の意思を確かめることを行う

 裁判所は、被告人に国選弁護人を付けるか否かを早めに決定する必要があります。

 そこで、裁判所は、検察官の起訴を受けた後、被告人に対し、書面を送るなどして連絡を取り、被告人の弁護人選任の意思を確認します。

 刑訴法規則178条において、

  1. 裁判所は、公訴の提起があった場合において被告人に弁護人がないときは、遅滞なく、被告人に対し、死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件(※必要的弁護事件のこと)については、弁護人を選任するかどうかを、その他の事件については、法第36条の規定による弁護人(※国選弁護人のこと)の選任を請求するかどうかを確めなければならない
  2. 裁判所は、前項の処置をするについては、被告人に対し、一定の期間を定めて回答を求めることができる
  3. 第1項前段の事件について、前項の期間内に回答がなく又は弁護人の選任がないときは、裁判長は、直ちに被告人のため弁護人を選任しなければならない

と規定しています。

 裁判所は、被告人から一定の期間を定めて国選弁護人を請求するか否かを回答をするかどうか求めます。

 必要的弁護事件の場合には、その期間内に被告人から回答がないか、又は、被告人が私選弁護人を選任しないときは、裁判長は、直ちに国選弁護人を選任しなければならないことになります。

次回の記事に続く

 公判準備は、

  1. 被告人への起訴状謄本の送達
  2. 被告人への弁護人選任権の告知
  3. 公判期日の指定
  4. 被告人を裁判に召喚する手続
  5. 訴訟関係人(検察官、被告人・弁護人、裁判官)の事前準備

に分けられるところ、次回の記事では、「③ 公判期日の指定」と「④ 被告人を裁判に召喚する手続」を説明します。