前回の記事の続きです。
名誉毀損行為の正当化は、刑法35条の正当行為が中心になります。
名誉損罪において、名誉毀損行為が正当行為であるとして無罪主張された事例として、
の判例があります。
この記事では、「報道」を説明します。
報道の正当性と名誉毀損罪の成否
新聞報道などが他人の名誉を害する事項を含んでいる場合にも、それが正当な業務行為の範囲に止まる限り、その違法性は阻却されます。
ただし、報道による名誉毀損行為の違法性が阻却される範囲はより広く、報道の内容が真実でない場合にも、報道の時点で調査を尽くしたのであればその行為は正当と認められるべきとされます。
参考となる以下の判例・裁判例があります。
新聞報道の自由と名誉毀損について述べた裁判例です。
裁判官は、
- 新聞が社会の出来事に付き事実を事実として報道し又は公正な評論をすることは、新聞本来の使命であるのみならず一般に報道の自由として何人にも許容される
- 報道の自由は絶対的のものではなく、ある事件の報道記事に牽連して、その表題並に掲載文の中において嘲侮軽蔑の文辞を羅列し、ことさらに他人に対する侮辱的意思を表現する記事を包括登載するが如きことは権利の濫用であって新聞紙に許容せられた正当行為の範囲を逸脱している
としました。
市長が市の物品の購入に際して不正に私利を図ったなどの記事を掲載した事案で、報道の限界を示した事例です。
裁判官は、
- 憲法21条は、言論の自由を無制限に保障しているものではない
- (本件)のごとき記事を新聞紙に掲載しこれを頒布して他人の名誉を毀損することは、言論の自由の乱用であって、憲法の保障する言論の自由の範囲内に属するものと認めることができない
としました。
裁判官は、人権侵害として法務局に告発がなされ、法務局及び労働基準局が調査を開始した事実、並びに、事件についての世人の動きと関心を客観的に叙述し、関係者の談話を付記した新聞記事について、
- 公益に影響を及ぼすべき問題であるから報道機関としての新聞紙がこれを取り上げ報道することは許容されるべきところである
- また、該記事の作成、編集の方法、記事の内容等をみても、ことさらに事実を歪曲したり、あるいは、当該事実の存在を暗示するような取り上げ方をしたとは認められない
として、原審が記者及び編集責任者を名誉毀損罪の幇助を認定したのを疑問とし、原判決を廃棄し、原審に審理のやり直しを命じました。
大阪高裁判決(昭和41年10月7日)
裁判官は、
としました。