前回の記事の続きです。
死者の名誉毀損罪(刑法230条2項)を説明
名誉毀損罪の刑法230条2項の条文は、
死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない
というものであり、
虚偽の事実を公然と摘示することによって成立する死者の名誉毀損罪
を規定しています。
刑法230条2項の条文は、「でなければ、罰しない」という消極的な形式で規定されていますが、処罰阻却事由ではなく、独立の構成要件を定めたものと解されています。
行為の客体
死者の名誉毀損罪の行為客体は
死者の名誉
です。
その内容は、刑法230条1項の名誉毀損罪と同様と考えてよいです。
行為の内容
死者の名誉毀損罪の実行行為は、虚偽の事実を摘示することによってしたのでなければなりません。
単純に「虚偽の事実を摘示した」とするのではなく、「摘示することによってした」と規定されているのは、事実が虚偽であって、そのことにつき確定的認識を持っていることを要するためです。
また、名誉毀損行為は、刑法230条1項と同様、公然と行われることを要します。
相手方の生死につき錯誤があった場合の死者の名誉毀損罪の成否
相手方の生死につき錯誤があった場合、刑法230条1項の名誉毀損罪と刑法230条2項の死者の名誉毀損罪の間に重なり合いがあるとみて、相手方の現実の生死に応じた罪が成立すると解されます。
1個の行為で、死者の名誉を害すると同時に、遺族の名誉も害した場合
1個の行為で、死者の名誉を害すると同時に、遺族の名誉も害した場合には、刑法230条2項の死者の名誉毀損罪と刑法230条1項の名誉毀損罪とが観念的競合として共に成立するとされます。