刑事訴訟法(公判)

裁判員制度とは?③ ~「裁判員裁判の法手続」「区分審理」を説明

 前回の記事の続きです。

 前回の記事では、「裁判員の選任手続」「被害者特定事項の秘匿のルール」を説明しました。

 今回の記事では、「裁判員裁判の法手続」「区分審理」について説明します。

裁判員裁判の法手続

 裁判員裁判を行うに当たり、以下の法のルールが定められています。

① 公判前整理手続

 公判前整理手続刑事訴訟法316条の2~32)は、裁判において集中的審理を行うことができるようにするために、1回目の裁判を開く前に、裁判の日以外の期日で、裁判官、検察官、弁護人らが事件の争点と証拠を整理し、明確な審理計画を立てられるようにするための制度です。

 裁判所は、裁判員裁判対象事件については、第1回の公判期日前に公判前整理手続に付さなければならず(裁判員法49条1項)、裁判員裁判においては、公判前整理手続を行うことが必須となっています。

② 裁判員の負担に対する配慮

 裁判官、検察官、弁護人は、裁判員の負担が過重なものとならないようにしつつ、裁判員がその職責を十分に果たすことができるように、審理を迅速で分かりやすいものとすることに努めなければならないと定められています(裁判員法51条)。

③ 冒頭陳述に当たっての義務

 冒頭陳述とは、検察官と弁護人が、裁判の初めに、証拠によって明らかにしようとすることを述べる手続です。

 裁判員が参加する公判手続において冒頭陳述を行うに当たっては、公判前整理手続における争点と証拠の整理の結果に基づき、証拠との関係を具体的に明示しなければなりません(裁判員法55条)。

 ちなみに、冒頭陳述は、裁判員裁判ではなく通常の裁判では、検察官のみが行うのが一般的です。

 しかし、公判前整理手続に付された事件については、被告人又は弁護人は、証拠により証明すべき事実その他の事実上の主張があるときは、検察官の冒頭陳述に引き続き、これを明らかにしなければならないので(刑訴法316条の30)、公判前整理手続が必ず行われる裁判員裁判においては、検察官のほか、弁護人の冒頭陳述が行われるのが通常となります。

④ 裁判員が行う被害者や証人に対する尋問権、被告人に対する質問権

 裁判員は、裁判官と一緒に裁判に参加し(公判に立ち会い)、判決まで関与することになります。

 裁判では、事件に関する証拠書類を取り調べるほか、証人や被告人に対する質問が行われます。

 裁判員から、証人や被告人に質問することもできます。

 この点の法手続は以下のとおり定められています。

① 裁判において、裁判所が被害者や証人を尋問する場合、裁判員は、裁判長に告げて、裁判員の関与する判断に必要な事項について尋問することができます(裁判員法56条)。

② また、裁判員は、裁判長に告げて、いつでも、裁判員の関与する判断に必要な事項について、被告人に質問し、被告人に供述を求めることができます(裁判員法59条)。

③ さらに、裁判員は、被害者や被害者の法定代理人等が意見陳述を行ったときには、被害者や被害者の法定代理人等に対して質問することができます(裁判員法58条)。

評議と評決

 裁判官と裁判員が証拠をすべて調べたら、今度は、犯罪事実を認定し、被告人が有罪か無罪か、有罪だとしたらどのような刑にするべきかを、裁判官と裁判員とで一緒に議論し(評議)、決定します(評決)。

 評議を尽くしても、意見の全員一致が得られなかったとき、評決は、多数決により行われます。

 ただし、裁判員だけによる意見では、被告人に不利な判断(被告人が有罪か無罪かの評決の場面では、有罪の判断)をすることはできず、裁判官1人以上が多数意見に賛成していることが必要となります。

 有罪か無罪か、有罪の場合の刑に関する裁判員の意見は、裁判官と同じ重みを持ちます。

 この点について定めた法手続は以下のとおりです。

① 裁判員の参加する合議体における裁判員の関与する判断のための評議は、裁判官と裁判員が行います(裁判員法66条1項)。

② 裁判員は、評議に出席し、意見を述べなければなりません(裁判員法66条2項)。

③ 裁判長は、評議において、裁判員に対して必要な法令に関する説明を丁寧に行うとともに、評議を裁判員に分かりやすいものとなるように整理し、裁判員が発言する機会を十分に設けるなど、裁判員がその職責を十分に果たすことができるように配慮しなければなりません(裁判員法66条5項)。

④ 評議における裁判員の関与する判断は、裁判官と裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見によります(裁判員法67条1項)。

区分審理

 区分審理とは、被告人が複数の事件について起訴されたときに、その事件をいくつかに分け、それぞれの事件ごとに別の裁判員が担当して、別の法廷でそれぞれの事件の審理を行うことをいいます。

 たとえば、連続殺人事件の事案で、同じ被告人による6個の殺人事件が起訴されたときに、6個の殺人事件の事実を審理することになります。

 6個の殺人事件を審理するとなると、審理が長期化し、裁判員に仕事を長期間休ませることを強いるなど、裁判員の負担は重いものとなります。

 そこで、裁判員が審理にかかわる時間的負担を軽減するために、裁判官は、区分審理を行うという決定をすることができます。

 区分審理の決定が行われると、事件は複数に区分され、上記の連続殺人事件の例に当てはめて例えると、1~3個目の殺人事件の事実を裁判員Aグループに担当させ、4~6個目の殺人事件の事実を裁判員Bグループに担当させることができるようになります。

 なお、区分審理が行われ、裁判員のメンバーが異なっても、裁判官は同じ人が担当します。

 区分審理について定めた法手続は以下のとおりです。

① 裁判所は、被告人を同じくする数個の裁判員裁判対象事件の弁論併合した場合等には、併合した事件を一括して審理することにより要すると見込まれる審判期間その他の裁判員の負担に関する事情を考慮し、その円滑な選任又は職務の遂行を確保するため特に必要があると認められるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、併合事件の一部を1又は2以止の被告事件ごとに区分し、順次、審理する旨の決定をすることができます(裁判員法71条1項)。

 区分事件に含まれる被告事件について、犯罪の証明があったときは、部分判決で有罪の言渡しをします(裁判員法78条1項)。

 部分判決において有罪の言渡しを行う場合には、事実認定のみを行い、 刑の量定は行わす、終局の判決において、刑を宣告します(裁判員法78条2項)。