人は、有意識でポジティブを意識しない限り、物事をネガティブに思考するようにできている
私たちの日常会話の内容を振り返ってみると、
「でも…」「やっぱり…」「…やめた方がいい」
とか、具体例や根拠がないのに、
「絶対ムリ」「できる分けない」
などの否定の会話が数多く交わされていることに気付くと思います。
これは、たまたま、自分の周りにネガティブ思考の人が多くいるからではありません。
全ての人間の本来的素質がネガティブであることから、必然的に、自分の周りがネガティブ思考の人だらけになるためです。
※ 有意識でネガティブ思考をコントロールする人格者がいる環境に身を置いている場合は除きます。
「全ての人間の本来的素質がネガティブである」と断言できる理由は、人間の脳が、物事をポジティブよりネガティブに思考するように作られているためす。
ここで主張したいことは、
私たちが、肯定的な言葉より、否定的な言葉を多く浴びて不快な思いをする根本的な原因は、私たち個人の性格や素質に問題があるのではなく、人間の脳の仕組みにそもそもの問題がある
ということです。
脳は、人間の注意を恐怖に確実に引きつけるように作られている
私たちの脳回路は、快楽回路と恐怖回路の2つに分けられます。
いずれの回路も、人が猛獣に食うか食われるかの生存競争をしていた大昔から発達してきた原始的な脳回路です。
快楽回路は、側坐核(そくざかく)のという脳組織の働きで、快楽を追求する行動をとるように人を仕向ける脳回路です。
快楽回路の働きのおかげで、人は、食べる、子供を作るなどの生物的に好ましい行動をとることができ、生存可能性を高めることができてきました。
恐怖回路は、扁桃体(へんとうたい)という脳組織の働きで、危険・不安・恐怖に人を引き込む脳回路です。
恐怖回路の働きのおかげで、人は、猛獣に食われるなどの危険を回避する行動をとることができ、生存可能性を高めることができました。
人間の生存可能性を高めるに、快楽回路と恐怖回路のどちらの機能が優先されるでしょうか。
もちろん、恐怖回路です。
食べ物を食べている時に、猛獣が目の前に現れた場合、快楽回路の機能が優先されてしまい、そのまま食べ物を食べ続けたら、猛獣に襲われて食い殺さてしまいます。
恐怖回路の機能が優先されることで、脳が危険に集中しろと人に命令を出すことができ、人は即座に逃げることや武器を持って戦うなどの行動をとることができ、生存可能性を高めることができます。
脳は、快楽は二の次にし、人の注意を恐怖に確実に引きつけるように作られているのです。
注意を恐怖に確実に引きつける脳の仕組みを理解し、物事を俯瞰(ふかん)して考えられるようにする
脳は、人間の注意を恐怖に確実に引きつけるように毎分毎秒動いています。
これは、生命を維持するための本能に基づく機能なので、止めようがありません。
この脳の機能により、人は、ネガティブに物事を思考することが標準の動きになります。
脳は、不安、恐怖、危険が想像できれば、すぐにその想像に飛びつき、ネガティブ思考を作り上げます。
これが、冒頭で、
「全ての人間の本来的素質がネガティブである」と断言し、人間の脳が、物事をポジティブよりネガティブに思考するように作られている
と話した理由です。
このため、世の中には、ポジティブ思考をする傾向の人より、ネガティブ思考をする傾向の人の方が圧倒的に多くなっています。
仕事や私生活で、他人から、「でも」「だって」「やっぱり」「絶対ムリ」「できる分けない」という言葉が発信されても、安易に流されたり、イラついたりしてはいけません。
「人がネガティブな思考や発言をするのは、脳の原始的機能の働きによるものなんだ」ということを思い出し、俯瞰(ふかん:高い所から見下ろすこと)した視点に立ち、感情的ではなく、客観的に出来事を分析して、自分の行動を考えることをおすすめします。
【追記】「注意を恐怖に確実に引きつける脳の仕組み」を利用して、テレビやマスコミは儲けている
人が、恐怖・危険などのネガティブ情報に確実に注意を引きつけられる性質を利用して稼いでいるのが、テレビやマスコミです。
殺人、虐待、事故、火事、不倫・不祥事などのゴシップなどのネガティブなニュースが、毎日、しかも同じ内容で繰り返し発信されています。
それは、この手のニュースは、視聴率がとれて金になるからです。
なぜ視聴率がとれるのか。
それは、私たちが、注意を恐怖などのネガティブな情報に確実に引きつけられる脳の仕組みをしているため、本能でネガティブなニュースに注目してしまうためです。
テレビ、マスコミは、それを分かって、ネガティブなニュースを放送しまくって視聴率をとりにいきます。
テレビ、マスコミの報道が金儲けの手段としてネガティブな情報を発信しているのに、それに踊らされ、日本や世界は悪いことばかりが起こっているなどの偏った思考に陥っている人が多くいるのではないでしょうか。
ネガティブ情報にさらされ続けると精神が脆弱になります。
テレビ、マスコミがネガティブなニュースを繰り返し発信するのは、メディアが金儲けするための手段であるという視点を持ち、リテラシーを高めて情報を受け取る必要があります。
【追記②】良い人より、嫌いな人・苦手な人のことの方に嫌でも意識が向く理由
自分にとって良い人より、嫌いな人や関わりたくない人のことを思い出してしまい、精神を消耗している人は多いのではないでしょうか。
この原因も、人間の脳が、物事をポジティブよりネガティブに思考する仕組みになっていることによります。
私たちは、仕事や家庭で、上司や家族に褒められた記憶場面より、非難・批判されたり、小言を言われたり、ディスられた記憶場面の方が、高い頻度でフラッシュバックされるようになっています。
これは、脳が、悪い情報を良い情報より入念に処理するようにできているためです。
このため、良いことより、悪いことの方がインパクトが強く残り、記憶が持続します。
この脳の機能により、良い人より、嫌いな人・苦手な人のことの方に嫌でも意識が向いてしまうのです。
嫌いな人、または嫌な出来事を思い出し、不快な時間を過ごすことに価値はありません。
ふとした瞬間に、嫌いな人、または嫌な出来事を思い出し、不快な精神状態に陥った場合、これは、
脳の「悪い情報を入念に処理する機能」が働いていることが原因なんだ
と客観的にその原因を考えることで、不快な感情を軽減できます。
おすすめしたい書籍
脳科学は人格を変えられるか? (文春文庫) [ エレーヌ・フォックス ]https://search.rakuten.co.jp/search/mall/脳科学は人格を変えられるか/
FACTFULNESS(ファクトフルネス)(日経BP) [ハンス・ロスリング ]https://books.rakuten.co.jp/rb/15747423/