非認知能力とは?
『非認知能力(非認知的スキル)』とは、
- やり抜く力
- 好奇心
- 自制心
- 楽観的なものの見方
- 誠実さ
- 自尊心
- コミュニケーション能力
といった気質に基づく能力をいいます。
ちなみに、IQ、偏差値などの数値化できる能力を『認知能力(認知的スキル)』といいます。
『非認知能力(非認知的スキル)』は、数値化できない能力であり、数値化できる『認知能力(認知的スキル)』とは完全に別物であるため、そのように名づけられました。
『IQや偏差値など、測ることのできる能力を認知能力』
『測ることのできない能力を非認知能力』
と考えると捉えやすくなると思います。
非認知能力は教えることが難しい
非認知能力は、教えることが難しい能力です。
たとえば、「やり抜く力を持て!やり抜く力を持つことは、社会で成功する上で大切だ!」と熱く教えられても、好奇心を持てる人間にはなりません。
では、どうやって非認知能力は獲得されるのでしょうか?
答えは、環境です。
非認知能力は、自分をとりまく環境から獲得されるものなのです。
たとえば、有害なストレスがなく、精神衛生上、好ましい環境で育った人は、好奇心などの非認知能力が育ちやすくなります。
逆に、有害なストレスの多い環境で育った人は、心と体の健全な発達が阻害され、楽観的なものの見方などの非認知能力は育ちません。
気質・精神性に問題がある人は、有害なストレスのある環境下に身を置くことになってしまったため、非認知能力が健全に育たなかった人ということができます。
非認知能力は、自分をとりまく環境の産物です。
もし、非認知能力を高めたいと思ったら、人ではなく、環境に働きかける必要があるのです。
子どもの頃の環境が非認知能力に影響を与える
非認知能力は、特に、子どもの頃の環境に強い影響を受け、作り出されます。
(もちろん、大人になってからの環境も、非認知能力の形成に影響を与えます)
子どもの頃に作り出された気質・精神性は、自分の中に根強く残り、大人になってもズルズルと引きずります。
私の場合は、他人の怒りの感情に過剰に反応してしまい、メンタルが落ちやすいという気質があります。
これは、私が怒鳴り散らす親のいる環境下で育ったがために、非認知能力が健全に育たず、楽観的なものの見方ができないという気質になってしまったことに起因すると思っています。
研究によれば、親が、子供が動揺しているときに、厳しい反応を示したり、予測のつかない行動を取ったりすると、のちのち子供は感情をうまく処理することや、緊張度の高い状況に効果的に対応することができなくなることが分かっています。
逆に、子どもがストレスを感じているときに、落ち着きを取り戻すのを手伝ったりできる親は、のちに、子供がストレス対処能力を育むに当たり、大きなプラスの影響を与えることが分かっています。
親が、子どものもつれた感情に鋭敏に、注意深く反応するなら、子どもは、ストレス感情に自分でもうまく対処できるようになるということです。
非認知能力は、足し算・引き算、ひらがな・カタカナのように、子どもに教えることができない能力です。
親の在り方、親が作り出す環境そのものが、子どもに、どのような非認知能力を授けるかを決定します。
【余談】非認知能力に欠陥がある人は、対人関係で苦労する
過去に、慢性的に有害なストレスを受ける環境に身を置き、欠陥のある非認知能力が形成された人は、以下のような特徴を持ち、特に対人関係で苦労します。
- つねに脅威を警戒し続ける
- ストレスに敏感に反応する
- 失望や怒りへの反応を抑えることが困難である
- 小さな挫折に対し、大きな敗北を感じる
- すこし軽く扱われたように感じただけで、相手を敵視し、対立関係に入る
- 他人が差し出す救いの手を拒む
なぜこのような特徴を持つようになるかというと、有害なストレスにさらされる環境で育つと、脳の前頭前皮質(人間的な思考をつかさどる脳の部位)の発達が阻害されるためです。
具体的には、脳の前頭前皮質が制御する「実行機能」と呼ばれる自分の思考や感情を動かしたり、調整したり、制御する能力の発達が阻害されます。
脳の「実行機能」は、非認知能力の支えになる機能なので、「実行機能」が正常に育たなかった人は、非認知能力も育たないという結果を招きます。
非認知能力を高めるには?
「やり抜く力を持て!」
「好奇心を持て!」
「楽観的なものの見方をしろ!」
と言い聞かせるだけでは、非認知能力を高め、気質や精神性を変えることはできません。
非認知能力を高め、気質や精神性を変えるためには、行動して、経験して、体感することを継続的に強いられる環境を作ることです。
行動して、経験して、体感することで、非言語情報が入ってきます。
たとえば、行動して、失敗して、それでも挑戦して難題を乗り越えることができれば、成功体験という非言語情報を得ることができます。
その非言語情報により、「自分はできる!」「努力すれば能力を伸ばすことができる!」と確信的に考えることができる脳回路を作ることができます。
それが自分の気質や精神性に影響を与え、「やり抜く力」「好奇心」「楽観的なものの見方」などの非認知能力を高めます。
非認知能力は、努力体験、成功体験、苦労体験などを通じて育つのです。
そのため、そのような体験ができる環境に身を置くことが必要になります。