今回は、日常生活を送る上で知っておくべき心理学の知識「正常性バイアス」についてお話します。
前提知識として「認知バイアス」を説明
認知バイアスとは、意思決定を早めるためのショートカットのことです。
( 認知バイアスは、心理学者ダニエル・カーネマンが研究し、ノーベル賞を受賞しています)
脳はいつもで楽をしたいと思っているので、考えることをやめれるように、いくつもの思考のショートカットを作っているのです。
この認知バイアス(思考のショートカット)があるおかげで、人は、(その判断が正しいかどうかは別として)素早く物事を決めることができます。
この認知バイアスは、役立つこともありますが、思考のショートカットであるがゆえに、その判断は合理性を欠き、バイアス(認知の偏り・認知の歪み)を生じさせます。
認知バイアスには、様々な種類があります。
そのうちの一つが、今回のテーマである「正常性バイアス」です。
正常性バイアスとは?
正常性バイアスとは、分かりやすくいうと、「自分は大丈夫」という思い込みです。
芸能人が薬物で捕まったり、不倫をして報道されたりしますが、この人たちは、薬物をやっても自分は捕まらないだろう、不倫をしても自分はバレないだろうと思っているから、薬物をやったり不倫をするのです。
この時に発動しているのが、正常性バイアスです。
現実がどうかに関係なく、脳が勝手に、自分には悪いことは起こらないだろうと思考するのです。
もう一つ例をあげると、災害時に正常性バイアスが作用して、命を落とす人が多くいることが防災学者の研究で指摘されています。
自分の家まで津波は来ないだろう、洪水被害は起こらないだろう、家にいれば安全だろうと自分に都合がよい判断をし、現実を直視することなく、避難が遅れる人がいます。
なぜ、このようなことが起こるのか。
それは、人間の脳は、脳に負担がかかることを嫌うため、異常事態が起こりそうなときであっても、脳に負担がかかることを避けるため、「これは異常ではない、正常だ」と認識するようにできているためです。
これが正常性バイアスの働きの正体です。
正常性バイアスは日常生活で必要な機能である
正常性バイアスのマイナス面ばかりをお話ししましたが、正常性バイアスは、私たちがに日常生活を営む上で必要な機能でもあります。
もし、私たちに正常性バイアスがなかったなら、日常のちょっとした変化に過敏に反応し、不安症や神経症のような状態になってしまい、脳と身体がもちません。
正常性バイアスがあることで、脳と身体の負担を軽減することができるのです。
また、正常性バイアスがあるからこそ、「自分なら大丈夫」とポジティブに物事を考えることができ、新しいことにチャレンジできるなど、前向きな行動がとれるのです。
作業効率を上げるためにも、正常性バイアスは必要です。
仕事においていえば、手慣れた業務については正常性バイアスを発動させて、思考をショートカットし、ガンガン手を動かして仕事を流していった方が有効な場合が多いです。
このように、日常生活において、正常性バイアスを活用すべき場面はたくさんあります。
正常性バイアスは、決してマイナス面ばかりではありません。
まとめ
正常性バイアスは、脳が、現実はさておき、「状況は正常だ」「悪いことは起こらない」と認識することで、あれこれ悩むことを回避し、脳の負担を軽減するための思考のショートカットです。
正常性バイアスは、有効に作用する場合と有効にしない場合があります。
まずは、自分が正常性バイアスに陥っていることを自覚し、正常バイアスをそのまま活用すべきか、それとも、正常性バイアスをそのまま活用せず、いったん立ち止まり、安易に大丈夫だと判断しない方がいいのではないかと思考する癖をつけましょう。
そうすることで、今までより正確な判断ができるようになります。
ほとんどの人が、正常性バイアスに無自覚なので(そもそもバイアスとは特別に意識をしなければ自覚できない)、正常性バイアスがあることを自覚できるだけで、周囲の人より抜きん出ることになります。