前回の記事の続きです。
この記事では、背任罪と加重収賄罪の関係を説明します。
背任罪と加重収賄罪の関係
加重収賄罪(刑法197条の3第1項・2項)において、収賄者の不正行為が背任罪(刑法247条)を構成することがあります。
加重収賄罪と背任罪は観念的競合(刑法54条)になるとした以下の判例があります。
大審院判決(明治45年5月6日)
裁判所は、
- 司法省エ事が裁判所庁舎の新築工事監督中、請負人の依頼により報酬を得て、右工事を寛にしたる行為ありたる場合において、もし司法省エ手にして公務員ならんが収賄罪を構成すると同時に背任罪をも構成し、刑法第54条にいわゆる1個の行為にして数個の罪名に触れたるものというを得べし
と判示し、加重収賄罪と背任罪が成立し、両罪は観念的競合となるとしました。
「収賄罪」と「贈賄者の背任の共同正犯」が成立するとした事例
収賄者が賄賂を受けるため、贈賄者の背任に加功した事案で、収賄者に対し、「収賄罪」と「贈賄者の背任罪の共同正犯」が成立するとした事例があります。
札幌高裁判決(昭和34年12月19日)
裁判所は、
- 被告人Mが、その任務に背いて土地連の資金を不正に流用したことが認められるが、被告人Kにおいて該事実を予知しながら金借の申込みをした事実、すなわち背任罪の共犯としての罪責がある事実は、証拠上認め難いのみならず、仮にその罪責があるとしても被告人Kが同Mから職務に関し金融の利益を得たことは収賄罪を構成し両者は1個の行為にして2個の罪名に触れるものと解するのが相当である
として、仮定論ですが、「収賄罪」と「贈賄者の背任の共犯」が成立するとしました。