故意
公然わいせつ罪(刑法174条)は、故意犯であり、過失によって本条に該当する行為を行っても処罰されません(故意犯の詳しい説明は前の記事参照)。
公然わいせつ罪の故意について、押さえるべきポイントは、
- 犯人は「わいせつ」と評価される行為を認識してこれを実行したこと要する
- 犯人は「公然性」を認識している必要ない
ことの2点になります。
『① 犯人は「わいせつ」と評価される行為を認識してこれを実行したこと要する』について
公然わいせつ罪の成立を認めるに当たり、犯人自身は「わいせつ」と評価される行為を認識してこれを実行したこと要します。
ただし、その行為が法的に「わいせつ」に該当するとの認識は不要とされます。
『② 犯人は「公然性」を認識している必要ない』について
公然わいせつ罪の成立を認めるに当たり、犯人自身が「公然性」を認識している必要はありません。
この点について判示した以下の判例があります。
東京高裁判決(昭和32年10月1日)
裁判官は、
- 行為者において、自己ないし関係者の行為が公然性を有することについての認識は必ずしもこれを必要とせず、客観的にその行為の行われる環境が公然性を有すれば足りる
と判示しました。
既遂時期
公然わいせつ罪は、単純行為犯であり、わいせつな行為を行うことによって直ちに既遂となり、未遂処罰規定はありません。
罪数
公然わいせつ罪の罪数の考え方について、参考となる判例として以下のものがあります。
最高裁判決(昭和56年7月17日)
ストリップショーにおいて、各回、異なる観客の前で別個独立のわいせつな演技を行った場合は、その演技回数に相当する公然わいせつ罪が成立するとしました。
「前後7回、各異なる多数の観客の前に別個独立の演劇行為をしたのであるから、7個の独立の犯罪があったものというに差支えない」として、7回の公然わいせつ行為を併合罪であるとしたました。
大審院判決(明治43年11月17日)
強制わいせつ罪に該当するわいせつ行為を公然行った場合は、1個の行為で強制わいせつ罪と公然わいせつ罪とに触れ、観念的競合になるとしました。
裁判官は、
と判示しました。
公然わいせつ罪の記事一覧(全4回)
公然わいせつ罪(1) ~「公然わいせつ罪とは?」「保護法益」「『公然』の意義」を判例で解説~
公然わいせつ罪(2) ~「わいせつ行為の意義」を判例で解説~
公然わいせつ罪(3) ~「故意」「既遂時期」「罪数」を判例で解説~
公然わいせつ罪(4) ~「共同正犯」「幇助犯」を判例で解説~