令和4年司法予備試験の刑事訴訟法論文問題から学ぶ

 令和4年司法予備試験の刑事訴訟法論文問題の答案を作成してみました。

 この論文からは以下のテーマが学べます。

■ 捜索差押え

  • 捜索差押許可状の効力が第三者が所持している物に及ぶか
  • 捜索差押えにおける「必要な処分」
  • 捜索開始後に捜索「場所」に搬入された「物」を捜索することはできるか
  • 捜索に伴う有形力行使の限界

問題

 法務省ホームページの「令和4年司法予備試験問題」参照(問題文PDFリンク先)。

答案

第1 下線部①の行為の適法性

1 場所に対する捜索差押許可状(刑事訴訟法(以下法令名略)218条1項)の効力が第三者が所持している物に及ぶか

 令状主義(憲法35条)の趣旨は、捜査について事前の司法審査をし、捜査機関の恣意的な捜査により被処分者のプライバシー(憲法13条)などが侵害されることを防止する点にある。

 裁判官の令状審査は、場所に対する捜索差押許可状については、場所の管理権者ごとになされるため、捜査対象場所と同一の管理権に属する「物」については、場所のプライバシーに包摂されるものとして場所に対する令状の効力が及ぶ。

 捜査対象場所において、「物」を第三者が所持していた場合、捜索差押対象物である蓋然性が高いのに捜索差押えができないとするのは妥当ではない。

 そこで、第三者が所持してた物であっても、捜査対象場所と同一の管理権に属する「物」であれば、捜索差押許可状の効力が及び、捜索差押えすることができると解する。

2 甲はAの妻であり、A方に居住する者であることから、甲の所持するキャリーケースはAの管理権が及んでいるといえる。

 よって、甲のキャリケースに捜索差押許可状の効力が及ぶ。

3 さらに、捜索は所持品のプライバシー権を侵害する強制処分であるため、捜索の必要性が求められると解する(102条2項)。

 本件では、差押目的物である比較的小型な覚醒剤等を隠匿するに足りるサイズであるキャリーケースの所持者である甲は、Aと同居するAの妻であり、警察官が再三キャリーケースの中を見せるよう依頼しているのに断るという不審な態度を示しており、キャリーケースの中に覚醒剤等の差押目的物を隠匿している蓋然性があり、捜索の必要性が認められる。

4 よって、甲のキャリーケースの捜索は適法である。

5 次に、甲のキャリーケースのチャックを開けて、その中を捜索した行為は「必要な処分」(刑訴法222条1項111条1項)として適法か。 

 「必要な処分」として適法かどうかは、捜査比例の原則に基づき、捜索差押えの実行性を確保するために必要かつ相当であるかという観点から判断する。

 捜索差押えの際に被処分者から抵抗されることは容易に想定され、これを一切排除できないとするのは妥当ではない。

 甲は、キャリーケースが捜索されることに抵抗しているため、Pは捜索をするための実力行使をする必要がある。

 実力行使の内容は、キャリーケースのチャックを開けるという穏当なものであり、また、キャリーケースにしか触れていなことから、必要最小限度で相当性が認められる。

 よって、「必要な処分」として適法である。

6 以上より、下線部①の行為は適法である。

第2 下線部②の行為の適法性

1 乙のボストンバッグもA方室内という捜索「場所」に所在する 「物」であるため、本件捜索差押許可状により捜索できる。

2 もっとも、乙が帰宅したのは捜索差押許可状の執行後であり、ボストンバッグは搜索開始後に捜索「場所」に搬入された「物」に当たる。

 では、捜索開始後に捜索「場所」に搬入された「物」を捜索することができるか。

⑴ 捜査機関は捜索差押許可状の有効期間内であればいつでも任意の時期に許可状を執行できたのであり、その執行開始と搬入の前後という偶然の事情により捜索の範囲が左右することは妥当ではない。

 また、裁判官の捜索差押許可状の令状審査は、許可状の有効期間における捜索場所の管理権を単位に行われるものであり、令状呈示時に捜索場所に存在した物に限る趣旨ではない。

 そこで、捜索開始後に捜索「場所」に搬入された「物」を捜索することはできると解する。

⑵ したがって、本件捜索差押許可状により乙のボストンバッグを搜索できる。

3 また、ボストンバッグはAではなく乙の所持品であるが、乙はAの子であり、Aと同居しているため、乙の所持品についてはAの管理権に属し、捜索場所と同一管理権に服するため、本件捜索差押許可状により乙のボストンバッグを捜索できる。

4 さらに、差押目的物である比較的小型な覚醒剤等を隠匿するに足りるサイズであるボストンバッグの所持者である乙は、被疑者Aと同居するAの子であり、警察官による内部の呈示の再三の依頼をボストンバッグを両腕で抱きかえてまで断るという著しく不審な態度を示しており、ボストンバッグの中に覚醒剤等の差押目的物を隠匿している蓋然性があり、捜索の必要性が認められる。

5 よって、乙のボストンバッグの捜索は適法である。

6 もっとも、Pらが乙を羽交い締めにしてボストンバッグを取り上げた行為は適法か。

 捜索に伴う有形力行使の可否・限界が問題となる。

⑴ 法が捜索差押えという強制処分を認めている以上は、その実施に必要かつ相当な程度の有形力行使は、捜索差押許可状に基づく妨害排除措置として、許可状の効力の一環として認められると解する。

⑵ 本件では、乙がボストンバッグを両腕で抱きかえている以上は、ボストンバッグを捜索するには、乙とボストンバッグを引き離す必要があるため、乙を羽交い締めにする必要が認められる。

 また、乙からボストンバッグを取り上げるために乙を短時間羽交い締めにしたとしても、逮捕のような強力な身体の自由の制約は伴わないし、Pらの行為は乙に傷害を負わせるような態様のものではなかったため、捜索のため必要最小限度のものであったといえ、相当な程度のものであったといえる。

⑶ よって、上記行為は本件捜索差押許可状に基づく妨害排除措置として許容される。

7 以上より、下線②の行為は適法である。

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