強いコミュニケーション
強いコミュニケーションは、自分の優位を確立しようとする強気のコミュニケーションです。
声を張り上げて権利を主張し、自信をもって自分をアピールします。
時に威圧的な言葉を使い、必要とあらば、怒りや脅しを織り交ぜながら力を誇示します。
相手に強力なメッセージを送って、会話を自分の思う方向にもっていこうとします。
強いコミュニケーションは、優位を得て、他人のマウントをとれる点で優れています。
強いコミュニケーションは、実際は有能でなくても、有能であるかのように演出することができるので、うまくいけば、本当は有能でない人でも影響力を手に入れることができます。
また、リーダーシップを狙っている場合は、強いコミュニケーションは有効なコミュニケーション手段となります。
ただし、強いコミュニケーションは、その場かぎりです。
長期的には、人間関係を崩し、他人からの尊敬や賞賛を失います。
ゆるいコミュニケーション
強いコミュニケーションを使って、他人より優位に立とうとすればするほど、相手は抵抗します。
強いコミュニケーションで相手のマウントをとって、自分が権力と権限を手に入れれば入れるほど、相手の権力と権限は小さくなるため、相手は不満を募らせるからです。
ここで対抗馬として登場するのが、ゆるいコミュニケーションです。
ゆるいコミュニケーションは、強いコミュニケーションのように、自分の優位性とリーダーシップは獲得できないものの、自分の弱さをさらけだし、信用と信望を獲得しようとするコミュニケーションです。
弱さをさらけだせば、自分の優位と権限は危うくなりますが、あえて威圧的な態度をとらず、歩み寄る姿勢を見せることで、人間らしく親しみやすい印象を与え、信用と信望を獲得できます。
ただし、ゆるいコミュニケーションで信用と信望を獲得できるのは、周囲の人たちから有能だと認められている場合に限るので注意が必要です。
周囲の人から有能だと認められていないのに、ゆるいコミュニケーションをとると、
- 自分の意見がない弱いヤツ
- 自身のないヤツ
- 自分の頭で物事を考えて決められないヤツ
- ドジでバカなヤツ
といった印象を与えてしまいます。
有能だと思われている人が見せる弱さは、人間らしく親しみやすい印象を与え、好感度を上げるのに対し、有能だと思われていない人が見せる弱さは、無能な印象を与え、好感度を下げます。
ちなみに、この現象を、「プラットフォール効果」といいます。
プラットフォール効果
心理学者エリオット・アロンソンの実験
プラットフォール効果は、心理学者エリオット・アロンソンの実験により提唱された概念です。
【実験内容】
被験者の学生に、クイズ大会志願者のオーディションを録音したテープを聞かせます。
テープの前半には、クイズの達人が登場し、正答率は92%でした。
テープの後半には、平均的な知識しかないクイズ志願者が登場し、正答率は30%でした。
当然、被験者の学生はクイズの達人に好感をもちます。
その後、被験者に別のテープを聞かせます。
別のあるテープには、皿がガシャンと割れる音とともに、平均的な知識しかないクイズ志願者が「あー、しまった!コーヒーをスーツにこぼしちゃったよ」という声が入っています。
別のあるテープには、皿がガシャンと割れる音とともに、クイズ達人が「あー、しまった!コーヒーをスーツにこぼしちゃったよ」という声が入っています。
【実験結果】
平均的な知識しかないクイズ志願者がヘマをしたときは、被験者の学生は、平均的な知識しかないクイズ志願者に対する好感度をさらに下げました。
これに対し、クイズの達人がヘマをしたときは、被験者の学生は、クイズの達人に対する好感度をさらに上げました。
有能だと思われていない人が失敗すると、「やっぱりな」と鼻で笑われ、好感度を下げます。
逆に、有能だと思われている人が失敗すると、「この人でも失敗することがあるんだ」と微笑ましく思われ、好感度が上がります。
まずは、自分が、周囲から有能だと思われているのか、それても有能だと思われていないのかを客観的に認知できることが大切です。
その上で、自分が失敗したり、ゆるいコミュニケーションをとった場合、プラットフォール効果により、好感度が上がるのか、それとも好感度が下がるのかを考えられることが重要です。
まとめ
強いコミュニケーションは、自分の優位性やリーダーシップを獲得したい場合に有効となります。
しかし、長期的には、人間関係を崩し、他人からの尊敬や賞賛を失います。
ゆるいコミュニケーションは、信望や信頼を獲得し、長期的に友好的な人間関係を構築したい場合に有効となります。
しかし、自分が周囲から有能だと思われていない場合、プラットフォール効果により、自信がないなどの弱々しい印象を与えてしまい、マイナス効果を生む可能性があります。
強いコミュケーションとゆるいコミュニケーションとで、どちらが良くて、どちらが悪いということはありません。
強いコミュケーションが有効な場面、ゆるいコミュニケーションが有効な場面はそれぞれあるので、使い分けが必要になります。
状況の分析力と、強いコミュケーションとゆるいコミュニケーションを使い分ける演技力が必要になります。
計算して、強いコミュケーションとゆるいコミュニケーションを使い分ける力が求められます。