刑事訴訟法(公判)

公判の流れ㉒~「被告人質問」を説明

 前回の記事の続きです。

 公判手続は、冒頭手続→証拠調べ手続 →弁論手続→判決宣告の順序で行われます(詳しくは前の記事参照)。

 前回の記事では、証拠調べ手続のうち、

証拠調べに関する異議申立て

を説明しました。

 今回の記事では、証拠調べ手続のうち、

被告人質問

を説明します。

被告人質問とは?

 検察官、被告人又は被告人の証拠調べ請求から、裁判官の証拠決定が終わると、次に、被告人質問を行います。

 被告人質問において、検察官、弁護人、裁判官は、被告人に対し、被告人が犯罪事実を認めているなら、

  • なぜ犯行に及んだのか
  • 反省しているのか

などを質問し、被告人に供述を求めます。

 逆に、被告人が犯罪事実を否認しているのなら、被告人に対し、

  • 自分が犯人でないと主張する理由

などを質問し、被告人に供述を求めます。

 このように被告人の供述を求める質問を

被告人質問

と呼びます。

被告人質問はいつもで行うことができる

 実際の裁判おいては、上記のとおり、裁判官の証拠決定の後に被告人質問が行われます。

 とはいえ、刑事訴訟法において、被告人質問は、裁判官の証拠決定の後に行われるものに限らず、いつでも行うことができるというのがルールになっています。

 被告人が任意に供述をする場合には、裁判官は、いつでも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができるし、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人も、裁判官に告げて、被告人の供述を求めることができます(刑訴法311条2項・3項)。

 このように、被告人質問の時期に制限はありません。

 なので、審理の途中に必要が生じれば、審理のどの段階においても被告人質問を行うことができます。

 検察官又は弁護人が被告人質問をしたい場合は、裁判官にその旨を告げ、被告人に質問をするという流れになります。

被告人質問でした被告人の供述は犯罪事実を認定する証拠になる

 被告人の任意の供述は、利益・不利益を問わず証拠となります。

 事件が共犯事件で、被告人が、一緒に公判を受けている他の共同被告人(共犯者)の関係で供述した任意の供述も、利益・不利益を問わず証拠となります(最高裁判決 昭和26年6月29日)。

被告人は、被告人質問に対する供述を拒否することができる

 被告人は、裁判官、検察官、弁護人からの質問に対し、供述を拒否することができます(刑訴法311条1項)。

被告人が、被告人質問に対し、虚偽の供述をしても制裁はない

 被告人が、被告人質問に対して虚偽の供述をしても、それに対して制裁する規定はなく、被告人が制裁を受けることはありません。

 この点は、証人の場合と異なります。

 証人は、証言の義務があり、虚偽の供述(偽証)を行えば、偽証罪が成立します(刑法169条)。

 さらに、証人が宣誓(証人尋問の最初に虚偽の供述をしないことを誓うこと)や証言を拒否すれば、

  • 10万円以下の過料に処され、かつ、証言の拒絶により生じた費用の賠償を命ぜられる
  • 宣誓証言拒否罪が成立する(刑訴法161条)。

ことになります。

 被告人には証人のような制裁はありません。

次回の記事に続く

 次回の記事では、証拠調べ手続の次に行われる

弁論手続

を説明します。

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