公判調書とは?
公判調書とは、
公判期日(公判を行った日)における訴訟手続の内容を記載した書面
をいいます。
具体的には、公判調書には、
- 冒頭手続(人定質問、起訴状朗読、黙秘権の告知、被告人の罪状認否の陳述)の内容
- 検察官の冒頭陳述の内容
- 証拠調べの内容
- 証人尋問の内容
- 被告人質問の内容
- 弁論手続(検察官の論告、弁護人の論告、被告人の最終陳述)の内容
など、その日の公判で行われた訴訟手続の内容が記載されます。
公判調書を作成する意義
公判調書を作成する意義は、
にあります。
公判調書の作成
公判期日における訴訟手続については、公判調書を作成しなければなりません(刑訴法48条1項)。
公判調書は、裁判所書記官が作成します(刑訴法規則37条)。
公判調書には、裁判所書記官が「署名押印」し、裁判長が「認印」をする必要があります(刑訴規則46条1項)。
公判調書には、公判期日における手続の全てを記載するのではなく、審判に関する重要な事項のみが記載されます(刑訴法48条2項)。
その記載事項は、刑訴規則44条1項1号~49号に列挙されています。
被告人と証人の供述の記載
被告人の供述(刑訴規則44条1項19号)と証人の供述(刑訴規則44条1項22号)は、裁判長が相当と認めれば、その要旨のみを公判調書に記載することができます。
(被告人の供述や証人の供述を公判調書に一言一句記載する必要はなく、要点を記載できるということです)
その場合には、訴訟関係人(検察官、被告人又は弁護人)の同意が必要となります(刑訴規則44条の2)。
証人の供述については、公判期日外の尋問調書(刑訴規則38条3項・4項)の場合と異なり、供述者の署名押印は必要ではなく、また、供述者に対する読み聞かせも、特にその請求がない限り必要ではありません(刑訴規則45条)。
公判における供述・陳述の録音
証人尋問、被告人質問、訴訟関係人(検察官、弁護人又は被告人)の陳述については、裁判所速記官などに速記させるほか、録音することができます(刑訴規則47条、40条)。
その録音体は、裁判所が相当と認め、かつ、検察官及び被告人又は弁護人が同意したときは、録音体を公判調書に引用し、訴訟記録に添付して公判調書の一部とすることができます(刑訴規則52条の20)。
公判調書の証明カ
公判期日における訴訟手続で公判調書に記載されたものは、公判調書のみによって公判期日における訴訟手続を証明することができます(刑訴法52条)。
これを「公判調書の絶対的証明力」といいます。
具体的には、公判期日における訴訟手続を証明する場合には、公判調書だけを提出すればよく、公判調書の内容を裏付ける資料の提出は必要ないということです。
公判期日における訴訟手続の適法性について、上級審で問題となった場合に、様々な方法でその証明を許すと問題解決が紛糾してしまいます。
そのため、公判調書に記載があるものについては、公判調書以外の資料による証明は許さないとしたものです。
公判調書に絶対的証明力が認められる事項
公判調書に絶対的証明力が認められるのは、
公判期日における訴訟手続に関する事項
に限られます。
なので、公判調書に記載されている「公判期日における訴訟手続に関する事項」以外のことについては、公判調書に証明力はなく、公判調書を使っての証明はできません。
「公判期日における訴訟手続に関する事項」とは、例えば、
- 公判期日外における訴訟手続の有無・適否(公判期日外の証拠調べ(期日外尋問、裁判所による現場検証)など)
- 公判期日におけるものであっても、被告人・証人の供述内容のような「実体面」に関するもの
が該当します。
公判調書の閲覧
公判調書は、絶対的証明力を持つので、当事者(検察官、被告人又は弁護人)の攻撃、防御上も重要なものになります。
そのため、検察官・弁護人には、公判調書の閲覧・謄写権があります(刑訴法270条、40条)。
被告人は、弁護人がないときに限って公判調書の閲覧権があるにとどまります(刑訴法49条、刑訴規則50条)。
公判調書の閲覧・謄写方法の指定
裁判長は、公判調書の閲覧・謄写について、日時、場所、時間を指定することができます(刑訴規則301条1項)。
また、裁判長は、書類の破棄その他不法な行為を防ぐため、必要があると認めるときは、裁判所職員を立ち会わせるなどの措置を講じなければなりません(刑訴規則301条2項)。
ビデオリンク方式による証人尋問の状況を記録した記録媒体の謄写はできない
検察官、弁護人は、裁判記録(公判調書や裁判に提出された証拠など)を裁判所に申請して閲覧・謄写することができます(刑訴法40条1項、180条1項、270条1項)。
しかし、ビデオリンク方式による証人尋問の状況を記録した記録媒体については、その記録媒体が、様々な人の目に触れるようなことがあれば、証人のプライバシー、名誉、心情が害されることが考えられる上、万一これが流出すれば、その被害が拡大することから、検察官、弁護人は、 記録媒体の謄写をすることはできません(刑訴法40条2項、180条2項、270条2項)。
公判調書に対する意義
検察官、被告人又は弁護人は、公判調書を閲覧した結果、その記載に誤りがあるときは、公判調書の記載の正確性に対して異議を申し立てることができます(刑訴法51条1項)。
異議申立ては、公判調書に記載されている全ての事項についてなすことができ、訴訟の手続面であると、被告人や証人の供述などの実体面であるとを問いません。
公判調書に対する異議申立てがなされると、申立ての年月日とその要旨のほか、異議申立てに対する裁判長の意見が公判調書に記載されます(刑訴規則48条)。
異議申立てのあった事項については、公判調書の絶対的証明力が失われ、「公判調書の記載内容」と「異議申立ての内容」とが共に証明力を持ち、上訴審では、上訴審の裁判官の自由心証によって、いずれが正しいかを判断することになります。