強盗罪における違法性阻却事由
違法性阻却事由とは?
犯罪は
- 構成要件該当性
- 違法性
- 有責性
の3つの要件がそろったときに成立します。
犯罪行為の疑いがある行為をしても、その行為に違法性がなければ犯罪は成立しません。
この違法性がない事由、つまり違法性がないが故に犯罪が成立しないとする事由を「違法性阻却事由」といいます(詳しくは、前の記事参照)。
今回は、強盗罪における違法性阻却事由として論点としてあがる
- 自救行為(被害者の自力救済行為として強盗行為)
について説明します。
被害者の自力救済行為として強盗行為
自救行為とは、
国家に頼らず、自らの力で自分の権利を守ること(自力救済すること)
をいいます。
犯罪行為が自救行為と認められた場合、その犯罪の違法性が阻却され、犯罪は不成立となります。
強盗罪において、正当権限者(強盗被害者)が、強盗の手段を用い、強盗犯人から自らの力で被害品を取り返した場合(自力救済した場合)に、強盗罪が成立するか否かが問題になります。
結論として、強盗被害者が、強盗犯人から被害品を強奪した場合には、自力救済の範囲内では、強盗罪の成立する余地はなく、暴行罪、脅迫罪の成立の余地があるにとどまります。
これは、被害品の関係では、他人の財物という要件が欠け、強盗罪が成立しませんが、被害者(この場合は強盗犯人)の身体・自由は、なお保護の法益たり得るからです。
なお、自力救済の範囲を超えた場合、つまり、緊急性、補充性、相当性に欠ける強奪行為の場合には、強盗罪の成立があり得ます。
第三者が、強盗犯人から被害品を強奪する場合にも、第三者による被害者のための自力救済といえる限り、暴行、脅迫のみが成立する余地があるにとどまります。