性的姿態撮影等処罰法

性的影像記録提供等罪(3)~「性的影像録を特定・少数の者に提供する行為」「性的影像記録を不特定・多数の者に提供する行為、又は、公然と陳列する行為」を説明

 前回の記事の続きです。

 この記事では、性的影像記録提供等罪(性的姿態撮影等処罰法3条)の「行為」を説明します。

3条1項の行為(性的影像録を特定・少数の者に提供する行為)

 3条1項の行為は、「性的影像録を特定・少数の者に提供すること」です。

 ここにいう「提供」とは、

性的影像記録を相手方が利用できる状態に置くこと

をいいます。

 「提供」は、方法や、有償・無償を問いません。

 必ずしも相手方が実際に閲覧・利用したり、物理的に受領することを要しません。

 「提供」の具体例として、例えば、

  • 性的影像記録をLINEなどのSNSで送信し、相手に受信させる行為
  • 性的影像記録データ保存されたUSBメモリを他人に交付する行為

が該当します。

性的影像記録の二次提供行為も性的影像記録提供等罪が成立する

 3条1項は、「提供」行為の主体(犯人)を、性的影像記録を撮影するなどして生成した者に限定していません。

 したがって、犯人から性的影像記録の提供を受けた者が、その影像記録が性的なものであると認識した上で、更に別の者にその性的影像記録を提供する行為(二次提供行為)も「提供」に含まれ、二次提供行為をした者に対し、性的影像記録提供等罪の成立が認められます。

性的影像記録の提供行為を被害者承諾した場合の性的影像記録提供等罪の成否

1⃣ 提供に承諾した被害者が16歳以上の場合、性的影像記録提供等罪は成立しない

 性的影像記録の撮影行為が行われた後、その性的影像記録の提供行為が行われる前に、撮影対象者(被害者)が提供を承諾するに至った場合は、性的影像記録提供等罪は成立しません。

 これは、被害者の承諾によって保護法益(自己の性的な姿態を他人に見られないという性的自由・性的自己決定権)が放棄されたといえることから、性的影像記録提供等罪は成立しないとされるものです。

2⃣ 提供に同意した被害者が16歳未満の場合、同意があっても性的影像記録提供等罪が成立する

 提供に承諾した被害者が16歳未満であった場合は、性的な行為に関する自由な意思決定の前提となる能力に欠け、保護法益の放棄ができないことから、承諾があったとしても性的影像記録提供等罪が成立します。

 ただし、16歳未満の者が、13歳以上16歳未満の者であった場合は、2条4項

  • 正当な理由がないのに、13歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は13歳以上16歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為

という規定にあるように、

  • 被害者が13歳以上16歳未満の者であった場合は、犯人の年齢がその被害者が生まれた日から5年以上前の日に生まれた年齢である場合に限り処罰する

という犯人の年齢制限要件を受けます。

 つまり、提供に承諾した被害者が13歳以上16歳未満の者であった場合で、被害者の承諾を受けて性的影像記録を提供した犯人の年齢がその被害者が生まれた日から5年以上前の日に生まれた年齢でなかった場合は、性的影像記録提供等罪は成立しないとなります。

※ 犯人の年齢制限要件の詳しい説明は、性的姿態等撮影罪(1)の記事の「犯人(主体)」の項目の説明部分参照

性的姿態等撮影罪(2条1項)を実行した共犯者間で性的影像記録の提供があった場合の性的影像記録提供等罪の成否

 性的姿態等撮影罪(2条1項)を実行した共犯者間で性的影像記録の提供があった場合に、性的影像記録提供等罪が成立するか否かについて、例えば、

  • 性的姿態等撮影罪を共に実行した共犯者AとBの間で、Aが撮影役を担って性的姿態の影像を撮影し、Bがその影像を販売する役を担っていた場合で、Aが撮影行為を行い、後日、Bのスマートフォンにその性的影像記録を送信した場合

は、

とともに、Aの撮影行為の時点では、性的影像記録をBが利用できる状態には至っておらず、AのBに対する性的影像記録の送信行為によって、Bが性的影像記録を利用できる状態に置いたことになるので、

  • Aに性的影像記録提供等罪が成立する

と考えられています。

 このように考えられるのは、性的姿態等撮影罪の後に、性的影像記録提供等罪が行われることで、

被害者の性的な姿態が他の機会に他人に見られる危険が生じるという新たな法益侵害の危険が生じる

ためです。

3条2項の行為(性的影像記録を不特定・多数の者に提供する行為、又は、公然と陳列する行為)

1⃣ 3条2項の行為は、「性的影像記録を不特定・多数の者に提供する行為、又は、公然と陳列すること」であり、処罰対象とする行為は、性的影像記録を

  • 不特定若しくは多数の者に提供する行為

   又は

  • 公然と陳列する行為

です。

2⃣ 「不特定」とは、

相手方が特殊の関係によって限定されていないこと

をいいます。

3⃣ 「多数」とは、

少なくとも2人以上であること

をいいます。

4⃣ 「提供」は、方法や、有償・無償を問いません。

 必ずしも相手方が実際に閲覧・利用したり、物理的に受領することを要しません。

 「提供」の具体例として、例えば、

  • 性的影像記録をLINEなどのSNSで送信し、相手に受信させる行為
  • 性的影像記録データ保存されたUSBメモリを他人に交付する行為

が該当します。

5⃣ 「公然」とは、

不特定又は多数の者が認識することのできる状態

をいいます。

6⃣ 「陳列」とは、

人が性的影像記録の内容を認識できる状態に置くこと

をいいます。

 必ずしも相手が実際に閲覧することを要しません。

 「公然と陳列した」とは、例えば、

  • 性的影像記録をインターネット上にアップし、不特定又は多数のインターネット利用者が閲覧が可能な状態にした行為

が挙げられます。

7⃣ 撮影対象者の提供行為に対する被害者の承諾と性的影像記録提供等罪の成否については、上記「3条1項の行為(性的影像録を特定・少数の者に提供する行為)」の説明と同様です。

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