性的姿態撮影等処罰法

性的影像記録保管罪(2)~「客体(性的影像記録)」を説明

 前回の記事の続きです。

 この記事では、性的影像記録保管罪(性的姿態撮影等処罰法4条)の客体を説明します。

客体(性的影像記録)

 性的影像記録保管罪(4条)の客体は、「性的影像記録」です。

「性的影像記録」とは?

1⃣ 性的影像記録保管罪の客体となる「性的影像記録」は、

  1. 人の性的な部位(性器、肛門、これらの周辺部、臀でん部、胸部)
  2. 人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
  3. わいせつな行為又は性交等(刑法177条1項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態

などの被害者の性的な姿態を記録した

  • 電磁的記録その他の記録

   又は

  • 当該記録の全部若しくは一部を複写したもの

です。

2⃣ なお、性的影像記録保管罪(4条)の客体となる「性的影像記録」は、性的影像記録提供等罪(3条)の客体となる「性的影像記録」とは異なります。

 具体的には、性的影像記録提供等罪(3条)の客体となる「性的影像記録」は、

により生成された電磁的記録その他の記録又は当該記録の全部若しくは一部を複写したものですが、性的影像記録保管罪(4条)の客体となる「性的影像記録」は、

  • 保管行為者が自ら性的姿態等撮影罪(2条第1~4号)の行為に及んだことにより生成されたものであることを要しない

という違いがあります。

「電磁的記録」とは?

 「電磁的記録」とは、

  • 電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録

であって、

  • 電子計算機による情報処理の用に供されるもの

をいい、

です。

「その他の記録」とは?

 「その他の記録」は、例えば、

  • 性的影像記録である電磁的記録を紙媒体に印刷したもの

が該当します。

「電磁的記録その他の記録」の複写物も「性的影像記録」に含む

 「電磁的記録その他の記録」を複写したものを保管した場合においても、性的影像記録保管罪を構成します。

 複写物であっても保管されれば、性的影像記録保管罪の保護法益(自己の性的な姿態を他人に見られないという性的自由・性的自己決定権)を侵害することから、複写物も「性的影像記録」に含むとされています。

保管した「性的影像記録」が加工されたものであった場合の本罪の成否

 保管された「性的影像記録」が加工されたものであった場合は、加工によって影像の同一性が失われたか否かによって「性的影像記録」に該当するか否かが判断されます。

 同一性の判断に当たっては、性的影像記録保管罪の保護法益が「自己の性的な姿態を他人に見られないという性的自由・性的自己決定権」であることを踏まえ、

性的影像の本質的部分である性的姿態の影像に変更があるかどうか

が重視されるとされます。

 加工がされていても同一性が失われないとされる場合として、例えば、

  • 撮影対象者の顔にはモザイク処理がされているが、性器や乳房にはモザイク処理がされていない場合

は、性的影像の本質的部分である性的姿態の影像に変更があるとはいえないので、同一性が認められ、性的影像記録保管罪が成立すると考えられています。

 反対に、加工により同一性が失われているとされる場合として、例えば、

  • 撮影対象者の性的部位を他人の性的部位を置き換える加工がされている場合

は、性的影像の本質的部分である性的姿態の影像に変更があるといえるので、同一性が認められず、性的影像記録保管罪が成立すると考えられています。

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