前回の記事の続きです。
この記事では、性的影像記録保管罪(性的姿態撮影等処罰法4条)の罪数の考え方を説明します。
性的影像記録保管罪の罪数の考え方
① 同一の撮影対象者(被害者)に係る性的影像記録を複数保管した場合、性的影像記録保管罪の単純一罪が成立する
同一の撮影対象者(被害者)に係る同一内容の性的影像記録を複数保管する行為をした場合の罪数の考え方を説明します。
この場合、性的影像記録が複数であっても被害者は1名であり、保管態様がそれぞれ別個の保管と評価されるものでない限り、
被害者に対する法益侵害(自己の性的な姿態を他人に見られないという性的自由・性的自己決定権)は1個である
ことから、性的影像記録保管罪の単純一罪となり、1個の性的影像記録保管罪が成立します。
② 撮影対象者(被害者)を異にする性的影像記録を複数保管した場合、性的影像記録保管罪の罪数の考え方
撮影対象者(被害者)を異にする性的影像記録を複数保管する行為をした場合、
撮影対象者である被害者それぞれに対して法益侵害が生じる
ことから、被害者の数に応じた数の性的影像記録保管罪が成立します。
例えば、被害者がA、B、Cの3名であった場合は、3つの性的影像記録保管罪が成立します。
そして、この場合の罪数の考え方は、
- 法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価されるのであれば、3つの性的影像記録保管罪は観念的競合となり、一罪となる
- そのように評価されなければ、3つの性的影像記録保管罪は併合罪となる
とされます。
③ 提供行為をする目的で性的影像記録を保管した者が、その性的影像記録の提供行為に及んだ場合は、性的影像記録保管罪と性的影像記録提供等罪(3条)の両罪が成立する
提供行為をする目的で性的影像記録を保管した者が、その性的影像記録の提供行為に及んだ場合は、提供行為により新たな法益侵害が生じることから、性的影像記録保管罪と性的影像記録提供等罪(3条)の両罪が成立します。
両罪の罪数関係は、性的影像記録保管罪が性的影像記録の提供のための手段となり、性的影像記録提供等罪が提供した結果という関係(手段と結果の関係)にある場合は、両罪は牽連犯の関係になります。