前回の記事の続きです。
「つきまとい等」(2条柱書)の対象者(被害者・被害者の密接関係者)
1⃣ ストーカー規制法2条柱書にある「つきまとい等」とは、
特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、2条1項1~8号の行為をすること
をいいます。
簡潔にいうと、「つきまとい等」は、
- 恋愛感情その他の好意の感情を充足する目的で2条1項1~8号の行為をすること
又は
- 恋愛感情その他の好意の感情が満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、2条1項1~8号の行為をすること
となります。
「つきまとい等」の対象者(被害者等)は、
- 特定の者(ストーカー行為の被害者)
- 特定の者(ストーカー行為の被害者)の配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者
です。
「特定の者」とは?
「特定の者」とは、
- 「好意の感情」又は「怨恨の感情」を抱かれている者
をいい、つまり、
- ストーカー行為の被害者
です。
「特定の者」(被害者)として、例えば、
- 犯人の元交際相手
- 犯人が一方的な好意感情を抱く犯人の友人
- 犯人が名前も知らず話したこともないが、一方的な好意感情を抱く近所に住む女性
- 犯人が一方的な行為感情を抱くアイドル、有名人、ユーチューバーなどのインフルエンサー
が該当します。
犯人が特定の者(被害者)の人定事項を了知している必要はありません。
また、犯人と特定の者との関係に制限はなく、例えば、義理の娘であっても被害者になり得ます。
「配偶者」とは?
「配偶者」とは、
- 法律上の婚姻関係にある相手(夫、妻)
をいいます。
「配偶者」には、婚姻届を出してないが、事実上結婚関係と同様の事情にある者、つまり、
- 内縁関係にあるもの(内縁の夫、内縁の妻)
も含まれると解されています。
「親族」とは?
1⃣「親族」とは、
をいいます(民法725条)。
2⃣ 「直系若しくは同居の親族」とは、
- 6親等内の直系血族と3親等内の直系姻族と同居している親族
をいいます。
「同居の親族」とは、
- 事実上同じ住居のもとで日常生活を共にしている親族
をいいます。
「特定の者と社会生活において密接な関係を有する者」(親密関係者)とは?
「特定の者と社会生活において密接な関係を有する者」とは、
- 「特定の者」(被害者)の身上、安全等を配慮する立場にある者
をいい、「密接関係者」と呼ばれます。
例えば、
- 「特定の者」(被害者)の恋人、友人、職場の上司
が該当し得ます。
密接関係者の該当性の認定について、
- 親密関係者の存在によって犯人の被害者に対する行為の感情が満たされない状況がある
- 犯人が親密関係者に嫌がらせを行うことによって、被害者が心理的に圧迫され、意思決定が歪められる状況がある
という事情があれば、密接関係者に該当し得ると解されています。