ストーカー規制法

ストーカー規制法(5)~2条1項2号の「その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと」を説明

 前回の記事の続きです。

2条1項2号の「その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと」とは?

 ストーカー規制法2条1項2号は、ストーカー行為として、

  • その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと

と規定します。

 2条1項2号の行為は、

  1. 被害者・被害者の密接関係者に対し、犯人が被害者を監視する行為をしていると思わせる事項を告げる行為
  2. 被害者・被害者の密接関係者に対し、犯人が被害者を監視する行為をしていることを知り得る状態を作る行為

です。

 被害者は、自分がストーカーに監視されていること、監視されているかもしれないことを知れば恐怖し、生活の安全と平穏が害されることなります。

 そのため、①②のような行為は取り締まる必要があります。

 2条1項2号の行為として、

  • 被害者の車のフロントガラスとワイパーの間に、被害者を盗撮した写真を挟んで置いておく行為
  • 被害者が自宅にいるところで、自宅に向かって被害者の氏名を叫ぶ行為
  • 被害者に「昨日の午後3時頃にコンビニで一緒に買い物をしていた男は誰だ」などとスマートフォンでメッセージを送ったり、自宅ポストにその旨を書いた手紙を投函する行為

などが該当し得ます。

「その行動」とは?

 2条1項2号の「その行動」とは、

  • ストーカー行為の標的となっている被害者の行動

の意味です。

 犯人が監視している対象が被害者本人ではなく、密接関係者(被害者の配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者)であった場合は、「その行動」とは、

  • 密接関係者の行動

を意味します。

「監視していると思わせるような事項を告げ」とは?

 「監視していると思わせるような事項」を告げたと認定するためには、

  • 行為の相手方(被害者、密接関係者)の行動を監視していると思わせるような程度に至ること

が必要であり、この程度に至ると認められるためには、例えば、

  • 犯人が相手方(被害者、密接関係者)の行動を関している旨を明示的述べること

はもちろん、

  • 犯人が相手方(被害者、密接関係者)の行動を監視していなければ知り得ない事項を述べること

も該当し得ます。

「告げる」とは?

 「告げる」とは、

  • 相手方(被害者、密接関係者)に直接伝達すること

という意味です。

 告げる方法に限定はなく、

  • 口頭
  • 文書(手紙、張り紙など)
  • スマートフォンによるメッセージ送信

が方法として挙げられます。

「その知り得る状態に置く」とは?

 「その知り得る状態に置く」とは、

  • 直接相手方(被害者、密接関係者)に伝達するものではないものの、相手方(被害者、密接関係者)が日常生活において了知し得る範囲内に到達させること

をいいます。

 行為の相手方(被害者、密接関係者)が知り得た状態に置いたと認定するためには、

  • 行為が相手方(被害者、密接関係者)に対して行われたものであること

    かつ

  • 相手方(被害者、密接関係者)が了知し得る状態であったこと

が必要になります。

 例えば、

  • 相手方(被害者、密接関係者)が所持するスマートフォンのメッセージアプリ(毎日必ず確認する習慣のあるLINEなどSNSアプリ)にメッセージを送信するした場合

は、行為の相手方(被害者、密接関係者)が知り得た状態に置いたと認定できると考えられます。

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