刑事訴訟法(公判)

心情等の意見陳述制度とは?~「被害者の精神的負担を軽減する措置(付添い、遮へい、ビデオリンク)」「被害者参加制度における『弁論としての意見陳述』との違い」などを説明

心情等の意見陳述制度とは?

 被害者等又は被害者の法定代理人(以下、被害者等といいます)は、裁判所に申し出て、公判期日において、犯罪被害に関する心情その他の被告事件に関する意見を陳述することができます(刑訴法292条の2第1項)。

 具体的には、被害者等が公判に出席し、裁判官、検察官、被告人、弁護人の面前で、「犯罪被害に遭って今でも苦しんでいる。被告人を厳罰に処してほしい。」などの意見を述べます。

 このように、被害者等が公判に出席し、心情を述べることができる制度を

心情等の意見陳述制度

といいます。

 被害者等は、意見陳述をしたい旨の申出を、あらかじめ検察官にしなければなりません(刑訴法292条の2第2項前段)。

 この申出を受けた検察官は、意見(「被害者が意見陳述することを認めるべきである」といった意見)を付してこれを裁判所に通知します(刑訴法292条の2第2項後段)。

被害者等とは?

 「被害者等又は被害者の法定代理人」における「被害者等」とは、

  1. 被害者本人
  2. 被害者本人が亡くなった場合や心身に重大な故障がある場合の被害者の配偶者、直系親族、兄弟姉妹

をいいます(刑訴法290条の2第1項)。

被害者の精神的負担を軽減する措置(付添い、遮へい、ビデオリンク)

 被害者等は、被告人が目の前にいる法廷内で心情を陳述することになります。

 そのため、被害者等によっては、精神的負担を強いられる場合があります。

 そのような場合に、被害者等の精神的負担を軽減するために、

が準用されます(刑訴法290条の2第4項)。

裁判官、検察官、被告人、弁護人は、被害者に対して質問ができる

 裁判官は、被害者等の陳述の後、その趣旨を明確にするため、被害者等に質問をすることができます(刑訴法292条の2第3項)。

 訴訟関係人(検察官、被告人、弁護人)も、裁判長に告げて、被害者等の陳述の後、その趣旨を明確にするため、被害者等に質問をすることができます(刑訴法292条の2第4項)。

 裁判官は、上記の陳述又は訴訟関係人(検察官、被告人、弁護人)の質問が既にした陳述若しくは質問と重複するとき、又は事件に関係のない事項にわたるときその他相当でないときは、これを制限することができます(刑訴法292条の2第5項)。

裁判所は、被害者が法廷で陳述するのに代えて、被害者に書面を提出させることができる

 裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して適当でないと認めるときは、意見陳述に代えて意見を記載した書面を提出させ、又は意見の陳述をさせないことができます(刑訴法292条の2第7項)。

意見陳述又はこれに代わる書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることはできないが、量刑上の資料の一つとすることはできる

 意見陳述又はこれに代わる書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることはできませんが(刑訴法292条の2第9項)が、量刑上の資料の一つとすることはできます。

 この点が、被害者参加制度において被害者参加人がする「弁論としての意見陳述」と異なります。

 刑訴法292条の2の「心情等の意見陳述制度」と混同しやすい制度として、刑訴法316条の38の被害者参加制度における「弁論としての意見陳述」があります。

 これらの制度の違いについて、以下で説明します。

被害者参加制度における「弁論としての意見陳述」とは?

 被害者参加制度における「弁論としての意見陳述」とは、被害者参加人又は被害者参加弁護士が、検察官と共に公判に参加し、

事実又は法律の適用について意見を陳述すること

をいいます(刑訴法316条の38)。

被害者参加制度における「弁論としての意見陳述」は、検察官の行う論告と同じ性質のものである

 被害者参加制度における「弁論としての意見陳述」は、犯罪事実又は法律の適用についての意見を陳述するものであるところ、例えば、「被告人は被害者にわいせつ行為をしたのは証拠から明らかである。よって被告人には不同意わいせつ罪を適用し、懲役1年の刑に処すべきである」などの事実又は法律の適用についての被害者参加人又は被害者参加弁護士の陳述が該当します。

 この陳述は、検察官の行う論告と同じ性質の陳述であり、言ってしまえば、被害者参加人又は被害者参加弁護士が行う論告と考えればよいです。

被害者参加制度における「弁論としての意見陳述」は、証拠とはならない

 被害者参加制度における「弁論としての意見陳述」は、事実又は法律の適用についての意見を陳述するものであり、検察官の論告・弁護人の弁論刑訴法293条)と同様に、

意見にすぎない

ものです。

 なので、被害者参加制度における「弁論としての意見陳述」は、

証拠とはならない

という性質のものです(刑訴法316条の38第4項)。

刑訴法292条の2の「心情等の意見陳述制度」の陳述は、情状事実として量刑の資料とすることができる

 被害者参加制度における「弁論としての意見陳述」は証拠とすることができません。

 これに対し、刑訴法292条の2の「心情等の意見陳述制度」の陳述は、犯罪事実の認定のための証拠とすることはできませんが(刑訴法292条の2第9項)、

情状事実として量刑の資料(裁判官が刑の重さを決めるための資料)

とすることはできます。

 刑訴法292条の2の「心情等の意見陳述制度」の陳述は、例えば、「犯罪被害を受けて夜も眠れず、今でも苦しんでいる。被告人には厳罰を望む。」などの被害者の気持ち(心情)に関する陳述が該当します。

 このような被害者の陳述を、裁判官は、犯人の刑の重さ(量刑)を決める上での資料にすることができます。

 つまり、裁判官は、「心情等の意見陳述制度」の被害者の陳述を汲み取って、犯人により重い刑を科すことができるということです。

 これに対して、被害者参加制度における「弁論としての意見陳述」は、犯罪事実の認定のための証拠にすることができないことはもちろん、量刑の資料とすることもできません。

 このことから言えることは、被害者参加制度を利用する被害参加人は、

被害者参加制度における「弁論としての意見陳述」

を行うのであれば、同時に、裁判官の量刑の資料とすることができる

「心情等の意見陳述制度」の陳述

も行った方がよいことになります。