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【心理学】確率の無視 ~小さなリスクに対する心配が膨れ上がる理由~

心配性の人は、リスクを確率で思考していない

 心配性の人(慢性的に心配性の人のほか、心配性に陥ることがある人を含む)は、小さなリスクに対処する能力が欠けています。

 心配性の人は、小さなリスクでも、無視できず、小さなリスクを過大視してしまいます。

 リスクをほどよく扱えないので、リスクを完全に無視するか、過大視するかの両極端になり、中間がありません。

 こうなるのは、リスクを確率の視点で思考していないからです。

心配性の人は、リスクが起きる確率の分子しか見えていない

 どれだけ心配するかは、リスクが起きる確率と釣り合うわけではありません。

 心配性の人が見ているのは、リスクが起きる確率の分子だけです。

 分母の方は見えていません。

 たとえば、今日、仕事でヘマをして、恥をかいたり、上司や先輩から怒られる確率が、1/100(1%)だったとします。

 このとき、心配性の人は、仕事でヘマをする確率の分子の1しか見えていません。

 分母の方の100が見えていません。

 心配性の人は、分子の1しか見えないので、仕事でヘマをする確率が、頭の中の世界では、1/1(100%)になっています。

 だから、現実には、小さなリスクだったとしても、頭の中では心配が膨れ上がるのです。

確率の無視

 リスクに対する確率の分子しか見えず、分母を無視する状況を「確率の無視」といいます。

 「確率の無視」をする人は、実際には、心配するようなことは、ほとんど起きないと分かっていても、最悪の事態をイメージしてしまうことをどうすることもできません。

 心配性の人の頭の中は、常に「もし〇〇になったらどうしよう」というネガティブな思考がループしています。

 それはリスクを確率として思考していないからです。

 リスクが起きる確率の分母を見ようとしなければ、頭の中では、リスクが現実化する確率は、1/1=100%という認知になってしまうことを知っておくことが大切です。

余談

 この記事を書いてる2020年9月現在は、新型コロナウィルスの流行により、「東京では新たに150人が新型コロナウィルスに感染しました」といったニュースが連日 報道されています。

 この手の報道により、私たちは、新型コロナウィルス感染の危険性を痛感しているところです。

 ここでも、「確率の無視」が起きています。

 上の例でいうと、ニュースでは、新規感染者数150人(リスクが起きる確率の分子)は報道するのですが、検査者数(リスクが起きる確率の分母)は報道していないのです。

 150人感染しても、検査者数が4000人であれば、新型コロナウィルスのような症状が出た人(総検査者数)のうち、実際に新型コロナウィルスに感染していた人は3.75%となるわけです。

 リスクを確率で考えることができれば、危険性の感じ方が大きく変わってきます。

※ ちなみに、2020年9月9日の東京都における新規感染数は149人、検査実施件数は4,760件でした(数値は、東京都ホームページで公開のもの)