ストレスの役割は、ネガティブな記憶の形成である

ストレス反応の役割は、3つあります。

 それは、

  1. 危険に集中する
  2. 危険を退けるための反応(行動)を起こす
  3. 将来のために、危険の経験を記憶する

です。

 1の「危険に集中する」と、2の「危険を退けるための反応(行動)を起こす」は、分かりやすいと思います。

 たとえば、刃物をもった人が襲ってきたら、目の前の危険に集中し、すぐさま闘う・逃げるなどの危険回避行動をとります。

 これに対し、3の「将来のために、危険の経験を記憶する」という役割は、ストレスが果たす役割として、あまり意識されないのではないでしょうか?

 今回は、ストレスが、危険などのネガティブな記憶の形成の役割を果たしていることについて書きます。

ストレス経験は強制的に記憶される

 ストレスの重要な役割の一つは、

  記憶を形成して呼び超すこと

です。

 このような機能があるのは、ストレスを強く感じた状況を記憶しておくことが、進化上、有用だったからです。

 ストレスを強く感じた状況を記憶できた人類が、今日まで生き延びてきました。

 たとえば、村の西側にある森に狩りに入って、トラに襲われるという危険な経験をした場合、「西側の森にはトラの縄張りがあるから危険だ」という記憶を形成できた者が、再び同じヘマをせずに、生き延びる可能性が高くなるというわけです。

 ストレスを強く感じた状況を記憶できる者が、環境に適応し、今日まで生き残ってきました。

 私たちは、そのようにして生き残ってきた人類の子孫なので、嫌でもストレス経験(ネガティブな経験)を記憶し、その記憶を呼び超す能力がデフォルト設定になっているのです。

ストレス下では、ストレスと関係のない記憶を形成できない

 ストレスが大きすぎると、人は、ストレスと関係のない記憶を形成できなくなり、かつ、スストレスと関係のない記憶を取り出せなくなります。

 これは、大きなストレス下のおいては、脳細胞(ニューロン)が生存にかかわる記憶(ストレスの原因となっている状況の記憶)の処理に脳の全リソースを割くからです。

 生存にかかわらない記憶は、脳回路から遮断され、考えられなくなってしまいます。

 大きなストレス下において、ストレスと関係のない記憶を形成することができない原因を作っているのが、脳から分泌されるコルチゾールというストレス物質です。

 ストレスがかかると、脳からコルチゾールが分泌され、普通であれば、脳の記憶回路に送られるべき情報を遮断します。

 ストレスに関係する情報を重要な情報をとらえ、その重要な情報一つを記憶を刻むために、ほかのそれほど重要ではない情報の記憶を排除するというわけです。

 みなさんも、緊張、不安、恐怖などの強いストレスを感じる場面では、思考が展開できず、脳の血管が詰まったような感覚になり、頭がまっ白になる経験をしたことがあると思います。

 この時、頭の中ではコルチゾールがバンバン分泌されています。

 そのため、何も思い出せず、何も考えられなくなってしまうのです。

 ストレスに苦しめられているときは、ほかの選択肢があることも、これで世界が終わるわけではないことも思い出せなくなってしまうことさえあるのです。

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