刑事訴訟法(公判)

公判手続とは?② ~「当事者主義・職権主義とは?」「日本の刑事裁判は、一次的には当事者主義を、補充的に職権主義を採っている」を説明

 前回の記事の続きです。

 今回の記事では、公判手続における6つの基本ルールである

  1. 公開主義
  2. 当事者主義
  3. 口頭弁論主義
  4. 直接主義
  5. 継続審理主義
  6. 予断排除の原則

のうち、②当事者主義を説明します。

当事者主義・職権主義とは?

 公判手続において、検察官と被告人を当事者といいます。

 そして、当事者主義とは

公判手続における主導的役割を当事者である検察官と被告人に果たさせる主義

をいいます。

 当事者主義は、検察官と当事者が、審理においてそれぞれの主張を言い合い、裁判官がそれぞれの主張を元に判決を言い渡すというイメージです。

 当事者主義の対になる概念として、職権主義があります。

 職権主義とは、

公判手続における主導的な役割を裁判所が自ら果たす主義

をいいます。

 職権主義は、裁判官自らが事件の証拠収集をするなど、裁判官が主導的に動いて集めた証拠も考慮して判決を言い渡すというイメージです。

日本の刑事裁判は、一次的には当事者主義を、補充的に職権主義を採っている

 日本の刑事事件の裁判は、一次的には当事者主義を、補充的に職権主義を採っています。

 当事者主義を採っていることが表れている法制度として、以下のものがあります。

  1. 公訴事実を明らかにし、裁判において、当事者(検察官・被告人)の攻撃・防御の対象を明らかにするための訴因制度(刑訴法256条3項
  2. 裁判所は第1回の公判には白紙で臨む予断排除の原則(裁判官は事件の証拠を前もって見ない。偏見を持って審理に臨むことを防ぐ。)(刑訴法256条6項)
  3. 当事者(検察官・被告人)に第一次的な証拠調べ請求権が与えられていること(刑訴法298条1項
  4. 当事者(検察官・被告人)の同意によって伝聞証拠証拠能力が与えられるとする同意制度(刑訴法326条1項

 補充的に職権主義を採っていることが表れている法制度として、以下のものがあります。

  1. 裁判官の職権による証拠調べ権(刑訴法298条2項
  2. 裁判官の訴因・罰条(刑罰の内容を定めた法律の条文)の追加・変更の命令権(刑訴法312条2項
  3. 裁判官の職権による公務所等への照会権(刑訴法279条

【参考】民事事件の裁判は完全な当事者主義となっている。

 上記のとおり、刑事裁判は、一次的には当事者主義を、補充的に職権主義を採っています。

 刑事裁判に対して、民事裁判は、完全な当事者主義となっています。

 具体的には、民事裁判では、刑事裁判と異なり、

  1. 裁判所の職権による証拠調べはない
  1. 当事者が自白した事実は証拠で証明する必要はない(民事訴訟法179条
  2. 当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす自白の擬制が認められている(民事訴訟法159条1項

など、当事者主義が徹底されています。

 刑事裁判と民事裁判とで、このような違いある理由は、民事裁判の目的が、刑事裁判のように「適正な国家刑罰権の実現」にあるのでなく、「私的自治の原則の下での当事者間の私的紛争の解決」にあるためです。

次回の記事に続く

 今回の記事では、公判手続における6つの基本ルールである

  1. 公開主義
  2. 当事者主義
  3. 口頭弁論主義
  4. 直接主義
  5. 継続審理主義
  6. 予断排除の原則

のうち、②当事者主義を説明しました。

 次回の記事では、③口頭弁論主義を説明します。