刑事訴訟法(公判)

公判前整理手続とは?⑦ ~「被告人・弁護人の請求証拠に対する検察官の証拠意見の表明」「争点関連証拠の開示」「証明予定事実・主張の追加・変更」を説明

 前回の記事の続きです。

 公判前整理手続の流れは以下の①~⑮のとおりです。

 これまでの記事で、①~⑪を説明しました。

 今回の記事では、⑫~⑮を説明します。

裁判所の決定によって公判前整理手続が開始される(刑訴法316条の2

検察官は、証明予定事実記載書面(公判において証拠により証明しようとする事実を記載した書面)を裁判所、被告人・弁護人に送付する(刑訴法316条の13第1項)。

検察官は、裁判所に対し、公判で提出する証拠の証拠調べ請求を行う(検察官が公判で提出したい証拠の一覧が記載された書面を裁判所、被告人・弁護人に提出する)(刑訴法316条の13第2項)。

検察官は、被告人・弁護人に対し、公判で提出する証拠を開示して閲覧させる(刑訴法316条の14第1項)。

検察官は、証拠の開示後、被告人・弁護人の請求があれば、検察官が被告人・弁護人に開示した公判で提出する証拠以外の証拠(これを「類型証拠」という)の一覧表を交付する(刑訴法316条の14第2~5項)。

被告人・弁護人は、検察官に対し、類型証拠の開示を請求する刑訴法316条の15)。

検察官は、被告人・弁護人に対し、類型証拠を開示し、閲覧させる(刑訴法316条の15)。

⑧ 被告人・弁護人は、検察官に対し、検察官が公判で提出する証拠に対する意見(証拠に異議があるのか、ないのか)を伝える(刑訴法316条の16)。

⑨ 被告人・弁護人は、公判において証明したいこと(証明予定事実)や、公判においてすることを予定している主張(例えば、犯罪事実はそのとおり間違いないや、私は犯人ではないといった主張)を、裁判官、検察官に対し、書面を送付するなどして明らかにする(刑訴法316条の17第1項)。

⑩ 被告人・弁護人は、公判において証明したいこと(証明予定事実)がある場合、裁判所に対し、それを証明するための証拠(被告人・弁護人が裁判所に提出する証拠)証拠調べ請求を行う(証拠の一覧が記載された書面を裁判所、検察官に提出する)(刑訴法316条の17第2項)。

⑪ 被告人・弁護人は、検察官に対し、被告人・弁護人が裁判所に提出する証拠を開示し、閲覧させる(刑訴法316条の18)。

⑫ 検察官は、被告人・弁護人が裁判所に提出する証拠に対する意見(証拠に異議があるのか、ないのか)を伝える(刑訴法316条の19)。

⑬ 弁護人・被告人は、事件の争点となっている証拠で、これまでに検察官から証拠の開示を受けていない証拠について、検察官に対し、必要に応じて開示を請求する(刑訴法316条の20)。

⑭ 検察官は、⑬の弁護人・被告人からの証拠の開示請求に対し、相当と認めるときは、弁護人・被告人にその証拠を開示して閲覧させる(刑訴法316条の20)。

⑮ 検察官は、①~⑭までの手続を追えた後、証明予定事実(公判期日において証拠により証明しようとする事実)を追加・変更する必要があるときは、その追加・変更する証明予定事実を記載した書面を、裁判所、被告人・弁護人に送付する(刑訴法316条の21)。

被告人・弁護人の請求証拠に対する検察官の証拠意見の表明

 公判前整理手続が進んで行くと、被告人・弁護人は、検察官に対し、被告人・弁護人が裁判所に提出する証拠を開示し、閲覧させます(刑訴法316条の18)。

 そして、被告人・弁護人が裁判所に提出する証拠を閲覧した検察官は、その証拠に対し、

又は

  • 被告人・弁護人がその証拠を裁判所に提出することに異議がないかどうか

の意見を明らかにします(刑訴法316条の19)。

 検察官が、被告人・弁護人が証拠を裁判所に提出することに対し、同意しない場合、又は意義ありとした場合、被告人・弁護人は、証拠書面としてその証拠を裁判所に提出することができなくなくなります。

 この場合、裁判の直接主義のルールに則り、証拠書面ではなく、証人が裁判に出廷して被告人・弁護人が証明したいことを証言する方法により、被告人・弁護人は主張を証明することになります。

争点関連証拠の開示

① 検察官による争点関連証拠の開示

 弁護人・被告人は、

事件の争点となっている証拠で、これまでに検察官から証拠の開示を受けていない証拠(これを「争点関連証拠」といいます)

について、検察官に対し、必要に応じて証拠開示請求をします(刑訴法316条の20)。

 検察官は、未開示の証拠であって、被告人・弁護人が公判で主張することを予定している事項に関連すると認められる証拠について、被告人・弁護人から開示の請求があった場合において、

  • 関連性の程度
  • 被告人の防御の準備のために証拠を開示をすることの必要性の程度
  • 開示によって生じるおそれのある弊害の内容・程度

を考慮し、相当と認めるときは、速やかに、その証拠を開示しなければなりません。

② 被告人・弁護人による争点関連証拠の開示請求

 被告人・弁護人は、争点関連証拠の開示を請求するには、刑訴法316条の20第2項の所定の事由である

  • 開示請求に係る証拠を識別するに足りる事項
  • 被告人・弁護人が明示した事実上・法律上の主張との関連性
  • その他の被告人の防御の準備のために証拠開示が必要である理由

を明らかにしなければなりません。

 証拠開示が必要である理由は、抽象的なものでは足りず、被告人・弁護人の主張及び主張との関連性を含め、具体的なものでなければなりません。

③ 検察官の証拠開示の方法

 検察官は、被告人・弁護人に対し、争点関連証拠を開示するに当たり、必要と認めるときは、証拠開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができます(刑訴法316条の20第1項後段)。

 検察官は、争点関連証拠を開示しない場合は、被告人・弁護人に対し、その理由を告げなければなりません(刑訴法規則217条の26)。

証明予定事実・主張の追加・変更

 公判前整理手続がここまで進んでくると、検察官、被告人・弁護人のそれぞれの主張の内容が整理されて明らかになります。

 この段階に来ると、整理されて明らかになった検察官、被告人・弁護人のそれぞれの主張に対し、反論が生まれるなどし、新たな主張を行う展開が起こり得ます。

 新たな主張を行う展開となった場合には、従来の主張を修正することが必要となります。

 この場合、検察官、被告人・弁護人は、必要があれば、これまでの主張(証明予定事実)を追加・変更すること、追加の証拠調べ請求、証拠開示などを行うものとされています(刑訴法316条の21刑訴法316条の22)。

 そして、このような手順を必要に応じて繰り返すことで、検察官、被告人・弁護人の主張、事件の争点、証拠の整理が進んでいき、最終的に主張、争点、証拠の整理が完了し、公判前整理手続が終了することになります。

公判前整理手続の終了

 手続がここまで進むと、いよいよ公判前整理手続は終了に向かいます。

 この後、裁判所は、

などをして、審理計画を策定します。

 最後に、裁判所は、公判前整理手続を終するに当たり、検察官、被告人・弁護人との間で、

  • 事件の争点
  • 証拠整理の結果

を確認した後、公判前整理手続を終します(刑訴法316条の24)。

次回の記事に続く

 次回の記事では、

  • 証拠開示に関する裁判所の裁定(証拠開示命令、証拠提示命令、その命令に対する不服申立て)

を説明します。