刑事訴訟法(公判)

公判前整理手続とは?⑥ ~「被告人・弁護人の検察官請求証拠に対する証拠意見の表明」「被告人・弁護人の証明予定事実の明示」「被告人・弁護人の証明予定事実を証明する証拠の調べ請求と検察官への証拠の開示」を説明

 前回の記事の続きです。

 まず最初に、公判前整理手続の流れ(以下の①~⑮)を整理します。

 これまでの記事で、①~⑦を説明しました。

 今回の記事では、⑧~⑪を説明します。

裁判所の決定によって公判前整理手続が開始される(刑訴法316条の2

検察官は、証明予定事実記載書面(公判において証拠により証明しようとする事実を記載した書面)を裁判所、被告人・弁護人に送付する(刑訴法316条の13第1項)。

検察官は、裁判所に対し、公判で提出する証拠の証拠調べ請求を行う(検察官が公判で提出したい証拠の一覧が記載された書面を裁判所、被告人・弁護人に提出する)(刑訴法316条の13第2項)。

検察官は、被告人・弁護人に対し、公判で提出する証拠を開示して閲覧させる(刑訴法316条の14第1項)。

検察官は、証拠の開示後、被告人・弁護人の請求があれば、検察官が被告人・弁護人に開示した公判で提出する証拠以外の証拠(これを「類型証拠」という)の一覧表を交付する(刑訴法316条の14第2~5項)。

被告人・弁護人は、検察官に対し、類型証拠の開示を請求する刑訴法316条の15)。

検察官は、被告人・弁護人に対し、類型証拠を開示し、閲覧させる(刑訴法316条の15)。

⑧ 被告人・弁護人は、検察官に対し、検察官が公判で提出する証拠に対する意見(証拠に異議があるのか、ないのか)を伝える(刑訴法316条の16)。

⑨ 被告人・弁護人は、公判において証明したいこと(証明予定事実)や、公判においてすることを予定している主張(例えば、犯罪事実はそのとおり間違いないや、私は犯人ではないといった主張)を、裁判官、検察官に対し、書面を送付するなどして明らかにする(刑訴法316条の17第1項)。

⑩ 被告人・弁護人は、公判において証明したいこと(証明予定事実)がある場合、裁判所に対し、それを証明するための証拠(被告人・弁護人が裁判所に提出する証拠)証拠調べ請求を行う(証拠の一覧が記載された書面を裁判所、検察官に提出する)(刑訴法316条の17第2項)。

⑪ 被告人・弁護人は、検察官に対し、被告人・弁護人が裁判所に提出する証拠を開示し、閲覧させる(刑訴法316条の18)。

検察官は、被告人・弁護人が裁判所に提出する証拠に対する意見(証拠に異議があるのか、ないのか)を伝える(刑訴法316条の19)。

弁護人・被告人は、事件の争点となっている証拠で、これまでに検察官から証拠の開示を受けていない証拠について、検察官に対し、必要に応じて開示を請求する(刑訴法316条の20)。

検察官は、⑬の弁護人・被告人からの証拠の開示請求に対し、相当と認めるときは、弁護人・被告人にその証拠を開示して閲覧させる(刑訴法316条の20)。

検察官は、①~⑭までの手続を追えた後、証明予定事実(公判期日において証拠により証明しようとする事実)を追加・変更する必要があるときは、その追加・変更する証明予定事実を記載した書面を、裁判所、被告人・弁護人に送付する(刑訴法316条の21)。

検察官請求証拠に対する証拠意見の表明

 被告人・弁護人は、検察官から証明予定事実記載書面(検察官が公判において証拠により証明しようとする事実を記載した書面)の送付を受け、検察官請求証拠(検察官が公判で裁判官に提出する証拠)と類型証拠(検察官請求証拠以外の証拠)の開示を受けたときは、

検察官請求証拠に対する証拠意見の表明

をしなければなりません。

 具体的には、被告人・弁護人は、検察官請求証拠について、

又は

  • 検察官が、裁判官に対し、検察官請求証拠の取調べを請求することに異議がないかどうか

の意見を、検察官に対し、明らかにしなければなりません(刑訴法316条の16)。

 被告人・弁護人が、検察官請求証拠に対し、「同意する」又は「異議がない」という意見を言った場合、検察官請求証拠は、公判において、裁判官に提出され、犯罪事実を認定する証拠として採用されます。

 反対に、被告人・弁護人が、検察官請求証拠に対し、「同意しない」又は「異議あり」という意見を言った場合、検察官は、検察官請求証拠を公判において裁判官に提出することができません。

 この場合、裁判の直接主義のルールに則り、証拠書面ではなく、証人が裁判に出廷して事件のことを証言する方法により、検察官は犯罪事実を証明することになります。

被告人・弁護人の証明予定事実の明示

 公判前整理手続の目的である「争点と証拠の整理」を十分に行うためには、検察官の主張に対しての被告人・弁護人の主張が明らかにされる必要があります。

 そこで、被告人・弁護人は、検察官から証明予定事実記載書面の交付を受け、検察官請求証拠と類型証拠の開示を受けた後に、裁判官、検察官に対し、自身の証明予定事実(公判で主張する事項)を明らかにしなければなりません。

 この点は、刑訴法316条の17第1項に規定があり、被告人・弁護人は、

  • 証明予定事実(被告人・弁護人が公判において証明しようとしている事実)
  • その他の公判期日においてすることを予定している事実
  • 法律の主張

があるときは、裁判所と検察官に対し、これらを明らかにしなければならないとされます。

 この時、被告人・弁護人の証明予定事実を主張する留意事項が、刑訴法規則217条の20第2項、217条の21に定められています。

刑訴法規則217条の20第2項】

 被告人又は弁護人は、刑訴法第316条の17第1項又は第316条の22第1項の規定により証明予定事実その他の公判期日においてすることを予定している事実上及び法律上の主張を明らかにするについては、事件の争点及び証拠の整理に必要な事項を具体的かつ簡潔に明示しなければならない。

刑訴法規則217条の21】

 検察官及び被告人又は弁護人は、証明予定事実を明らかにするに当たっては、事実とこれを証明するために用いる主要な証拠との関係を具体的に明示すること、その他の適当な方法によって、事件の争点及び証拠の整理が円滑に行われるように努めなければならない。

被告人・弁護人の証明予定事実を証明する証拠の調べ請求と検察官への証拠の開示

 被告人・弁護人は、証明予定事実があるときは、これを証明するために用いる証拠の取調べを請求しなければなりません(刑訴法316条の17第2項)。

  そして、その証拠を検察官に開示して閲覧させなければなりません(刑訴法316条の18)。

次回の記事に続く

 次回の記事では、

  • 被告人・弁護人の請求証拠に対する検察官の証拠意見の表明
  • 争点関連証拠の開示
  • 証明予定事実・主張の追加・変更

を説明します。