このブログでは、これからしばらくの間、刑事訴訟法について勉強します。
今回は、「適正手続の保障」について説明します。
適正手続の保障とは?
犯罪を犯すと、警察に逮捕されることがあります。
逮捕されると、事件の捜査や裁判のために、数日から数か月の間、警察署などの刑事施設に留置されます。
この間、犯人は、身体を拘束され、自由を奪われるなどの制約を受けるわけです。
犯罪を犯したのだから、身体の拘束などの必要最小限度の制約を受けることは仕方のないことです。自業自得です。
自業自得とはいえ、捜査の過程で、無理やり自白を強要したり、拷問がなされるなどのことがあってはなりません。
そこで、日本では、事件の捜査などの刑事手続の過程において、犯人に与える制約を必要最小限のものにし、犯人の最低限の基本的人権が守られることが、憲法と法律によって保障されています。
この保障を
適正手続の保障
といいます。
これから、適正手続の保障の具体的な内容について説明します。
刑事手続法と刑事実体法
適正手続の保障は、法律によって実現されます。
その法律とは、刑事訴訟法です。
刑事訴訟法には、刑事手続のルールが記載されています。
たとえば、
- 犯人を逮捕するためには、裁判官の発した逮捕状が必要である
- 犯人の家に押しかけて、証拠物を押収するには、捜索差押令状が必要である
といったルールです。
刑事訴訟法があるおかげで、
- 警察官が暴力を振るって犯人を捕まえたりできない
- 警察官が犯人の家に勝手にズカズカ入り、証拠品になりそうな物を押収することができない
など、捜査の過程において、犯人の基本的人権が最低限保障されるルールになっているのです。
刑事訴訟法のように、
刑事手続のルール
を記載した法律を
刑事手続法
といいます。
これに対し、刑法のように、
どのような行為が犯罪になり、どれくらいの罰が科されるのか
を記載した法律を
刑事実体法
といいます。
刑事手続法があるおかけで、
- 犯人に与える制約を必要最小限にする
- 捜査機関の不当な捜査を抑制する
といったことが実現されるのです。
憲法による適正手続の保障
歴史的に見ると、世界では、犯罪者を裁く手続の中で、拷問などの非人道的な行為が行われてきました。
日本では、拷問などの非人道的な行為が行われないように、憲法31条において、
『何人も、法律に定める手続によらなければ、その生命もしくは自由を奪われ、又はその刑罰を科せられない』
と定めてます。
憲法31条の『法律に定める手続』とは、刑事手続法(刑事訴訟法、刑事訴訟法規則など)を指します。
適正手続の保障は、法律のみならず、憲法でも定められている強力なルールなのです。
適正手続の保障は、憲法31条のほか
憲法32条…全ての人は裁判を受ける権利をもつ
憲法33条…逮捕は令状が必要
憲法34条…犯人は弁護人依頼できる
憲法35条…捜索差押は令状が必要
憲法36条…拷問、残虐な処罰は禁止
憲法37条…犯人は公平・迅速な裁判を受けることができる
憲法38条…犯人は不利益な供述を強要されない
憲法39条…同一の犯罪について重ねて処罰されない
憲法40条…無罪となった場合は国に補償を請求できる
といった事項が定められています。
適正手続の保障は、まず憲法によって定められ、その具体的な実現として、刑事手続法(刑事訴訟法、刑事訴訟法規則など)が作れれているという設計になっているのです。