法律(刑事訴訟法)

捜索・差押え・記録命令付差押えとは?② ~「令状の発布要件(罪を犯したと思料されること)」「捜索の場所、差し押さえるべき物の明示」などを判例で解説~

捜索・差押えの令状の発布要件

 捜索・差押えの令状(捜索差押許可状など)が発布されるためには、以下の3つの要件が必要になります。

 その要件とは、

  1. 犯罪捜査のための必要があること(刑訴法218条1項
  2. 罪を犯したと思料されること(刑訴法規則156条1項)
  3. 押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があること(刑訴法102条2項222条1項

になります。

捜索・差押えの令状請求権者

 捜索・差押えの令状を請求できるのは、

  • 検察官
  • 検察事務官
  • 司法警察員

です。

 ポイントは、

  • 司法巡査には、捜査・差押えの令状を請求する権限はない

点にあります(刑訴法218条4項)。

※ 司法警察員と司法巡査の違いは、前の記事で説明しています。

捜索・差押えの令状請求手続

 捜索・差押えの令状の請求は、刑訴法規則139条、155条、299条に基づき、令状請求の書面を裁判官に提出して行います。

 さらに、令状請求の書面に加え、刑訴法規則156条に基づき、被疑者・被告人が

罪を犯したと思料されるべき資料

を裁判官に提出します。

刑訴法規則139条(令状請求の方式)

1 令状の請求は、書面でこれをしなければならない。

2 逮捕状の請求書には、謄本一通を添附しなければならない。

刑訴法規則第155条(差押等の令状請求書の記載要件)

1 差押、捜索又は検証のための令状の請求書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

⑴ 差し押えるべき物又は捜索し若しくは検証すべき場所、身体若しくは物

⑵ 請求者の官公職氏名

⑶ 被疑者又は被告人の氏名(被疑者又は被告人が法人であるときは、その名称)

⑷ 罪名及び犯罪事実の要旨

⑸ 7日を超える有効期間を必要とするときは、その旨及び事由

⑹ 日出前又は日没後に差押、捜索又は検証をする必要があるときは、その旨及び事由

2 身体検査令状の請求書には、前項に規定する事項の外、法第218条第4項に規定する事項を記載しなければならない。

3 被疑者又は被告人の氏名又は名称が明らかでないときは、その旨を記載すれば足りる。

刑訴法規則第156条(資料の提供)

1 前条第1項の請求をするには、被疑者又は被告人が罪を犯したと思料されるべき資料を提供しなければならない。

2 郵便物、信書便物又は電信に関する書類で法令の規定に基づき通信事務を取り扱う者が保管し、又は所持するもの(被疑者若しくは被告人から発し、又は被疑者若しくは被告人に対して発したものを除く。)の差押えのための令状を請求するには、その物が被疑事件又は被告事件に関係があると認めるに足りる状況があることを認めるべき資料を提供しなければならない。

3 被疑者又は被告人以外の者の身体、物又は住居その他の場所についての捜索のための令状を請求するには、差し押さえるべき物の存在を認めるに足りる状況があることを認めるべき資料を提供しなければならない。

刑訴法規則第299条(裁判官に対する取調等の請求)

1 検察官、検察事務官又は司法警察職員の裁判官に対する取調、処分又は令状の請求は、当該事件の管轄にかかわらず、これらの者の所属の官公署の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官にこれをしなければならない。但し、やむを得ない事情があるときは、最寄の下級裁判所の裁判官にこれをすることができる。

2 前項の請求は、少年事件については、同項本文の規定にかかわらず、同項に規定する者の所属の官公署の所在地を管轄する家庭裁判所の裁判官にもこれをすることができる。

捜索・差押の令状の発布

 裁判官は、捜索・差押えの令状の発布要件である

  1. 犯罪捜査のための必要があること(刑訴法218条1項
  2. 罪を犯したと思料されること(刑訴法規則156条1項)
  3. 押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のあること(刑訴法102条2項刑訴法222条1項

を満たしていると認めるときは、捜索差押許可状などの捜索・差押えの令状を発布します。

 ただし、上記①~③の要件を満たしていても、

明らかに差押えの必要がないと認められるとき

は、裁判官は、捜索・差押えの令状を発布しないことができます。

 この点については、最高裁判例(昭和44年3月18日)があり、裁判官は、

『犯罪の態様、軽重、差押物の証拠としての価値、重要性、差押物が隠滅毀損されるおそれの有無、差押によって受ける被差押者の不利益の程度その他諸般の事情に照らし明らかに差押の必要がないと認められるときにまで、差押を是認しなければならない理由はない』

と判示しています。

捜索の場所、差し押さえるべき物の明示

 発布する令状には、捜索する場所と差し押さえるべき物を明示しなければなりません。

 根拠法令は、憲法35条1項にあり、

『捜索する場所及び押収する物を明示する』

と規定しています。

 これを受けて、刑訴法219条1項では、

『令状には、…差し押さえるべき物、…捜索すべき場所、…を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない』

と規定しています。

令状に記載する捜索場所の特定の程度

 令状に記載する捜索場所の特定の程度は、

その場所を特定し得る程度の記載

があればよいとされます。

 この点については、最高裁判例(昭和30年11月22日)があり、裁判官は、

『押収又は捜索すべき場所の表示は、合理的に解釈してその場所を特定し得る程度に記載することを必要とするとともに、その程度の記載があれば足りる』

と判示してます。

 この判例では、「京都市a区bc町d、通称AことB方家屋内ならび附属建物全般」という記載は、捜索すべき場所を特定できていると判断しています。

 捜索する場所の特定は、

捜索場所の管理者の権利を保護するために必要

とされます。

 なので、管理者が管理する建物の範囲が特定できていればOKということになります。

 捜索場所は、捜索場所の管理者単位で令状に記載するという考え方になるので、ホテル客室や集合住宅の居室など、個々の客室や居室で管理者が異なる場合は、令状には、ホテルや集合住宅の号室まで記載する必要があります。

 たとえば、Aホテルの101号室の捜索を行いたいのに、捜索の令状に「Aホテル」とだけ捜索場所を記載した場合は、捜索場所が特定しきれておらず、そのままAホテル101号室の捜索を行うと違法になります。

 この場合、捜索場所が「Aホテル101号室」と記載された捜索の令状の発布を受けた上で、捜索を行う必要があります。

令状に記載する差し押さえるべき物の特定の程度

 差し押さえるべき物が特定されているといえるためには、差押えの令状に、

「会議議事録、日誌、指令、通達類、連絡文書、報告書、メモ」

などの具体的な例示が記載された上で、

「本件に関係ありと思料さられる一切の文書及び物件」

という記載があれば、特定の程度として足りるとされます。

 この点については、最高裁判例(昭和33年7月29日)があり、裁判官は、

『本件許可状に記載された「本件に関係ありと思料せられる一切の文書及び物件」とは、「会議議事録、逃走日誌、指令、通達類、連絡文書、報告書、メモ」と記載された具体的な例示に附加されたものであって、同許可状に記載された地方公務員法違反被疑事件に関係があり、かつ右例示の物件に準じられるような闘争関係の文書、物件を指すことが明らかであるから、同許可状が物の明示に欠くるところがあるということもできない』

と判示しています。

 さらに、この判例では、

「事件に関係する一切の文書及び物件」といった記載だけでは、差し押さえるべき物の特定として足りず、

この記載に加え、

差し押さえるべき物の具体的な例示が必要である

という判断基準を示しています。

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