傷害の治療日数の考え方
傷害罪(刑法204条)において、犯罪事実を構成するときに、その犯罪事実の中に被害者が負った傷害の程度(傷害が回復するのに必要な治療日数)が記載されます。
通常、治療日数は、医師の診断書に記載されている治療日数が記載されます。
とはいえ、傷害の治療日数の考え方については、裁判でしばしば争われることがあります。
そこで、傷害の治療日数の考え方について参考となる判例を紹介します。
福岡高裁判決(昭和33年2月13日)
この判例で、裁判官は、
と判示しました。
仙台高裁判決(昭和27年6月23日)
傷害事実の認定について、裁判官は、
- 傷害の部位程度の証明は必ずしも医師の診断書に俟つの要なく、原判示事実はその挙示する証拠を総合すれば優に認定しうる
と判示し、傷害の程度(日数)は、必ずしも医師の診断書による必要はなく、その他の証拠で総合的に認定することができるとしました。
最高裁判決(昭和24年4月2日)
傷害の程度の認定について、裁判官は、
- 顔面に挫創を受けた被害者が、受傷後3日後に自ら歩いて警察署に出頭し、告訴をした事実があるからといって、『向後約2週間安静加療を要するものと認める』という右被害者に対する医師診断書の記載を措信してはならないという道理はない
と判示し、被害者が傷害を負った後、3日後に警察署まで歩いて出頭している事実をもって、医師の診断書に記載された傷害の加療日数が信用できないと認定されるものではないとしました。
傷害の治療日数の判示がなくとも違法ではない
判決において、傷害の治療日数の判示がなくても違法ではありません。
この点について判示した以下の判例があります。
大審院判決(明治43年11月17日)
この判例で、裁判官は、
- 短刀を持って左上膊ほか数か所に創傷を負わせた旨の判示は、やや簡略に過ぎる嫌いがないでもないが違法ではない
と判示し、傷害の程度を全治や加療日数で特定していないとしても違法ではないとしました。
大審院判決(大正4年10月5日)
原判決が「ほか数名と共に頭部その他を乱打し、よって頭部等に数個の創傷を負わせた」とのみ判示したことについて、裁判官は
と判示し、傷害の程度について、常に詳しく説明する必要があるわけではないと述べました。