刑法(虚偽告訴罪)

虚偽告訴罪(13)~「自白による刑の減免」を説明

 前回の記事の続きです。

虚偽告訴罪における自白による刑の減免

1⃣ 刑法173条は、虚偽告訴罪の自白による刑の減免(刑の減軽又は刑の免除)を規定します。

 刑法173条は、

前条(刑法172条:虚偽告訴罪)の罪を犯した者が、その申告をした事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる

と規定します。

 刑法173条の虚偽告訴罪の自白による刑の減免は、

虚偽告訴によって不当な刑事処分又は懲戒権行使が行われることを未然に防止するため政策的に設けられた規定

です。

2⃣ 自白とは、自首(刑法42条)よりも広い概念であり、捜査官の質問に対して虚偽告訴の事実を自認した場合でもよいとされます。

 この点を判示したのが以下の判例です。

大審院判決(明治42年12月16日)

 裁判所は、

  • 犯人が自己の犯罪事実を自首し、又は当該官の間いに対して自認したる場合は、刑法第170条のいわゆる自白に該当するものとす

と判示しました。

3⃣ 刑の減軽又は免除をするか否かは裁判所の裁量によって決められます。

 この点を判示した以下の判例があります。

大審院判決(明治43年2月8日)

 裁判所は、

  • 誣告罪(虚偽告訴罪)成立する場合において、犯人がその申告したる事件の裁判確定前又は懲戒処分前自白したるとき、犯人に対し刑を減軽又は免除するや否は判決裁判所の職権に属す
  • 而して、その減軽若くは免除すべきものと認むる場合においては刑法第173条を適用するを要するものにあらず
  • 故に原院においてその必要なき事実を認め減軽等を為さず、従って同条を適用せざりしは相当なり

と判示し、虚偽告訴罪の自白による刑の減免は裁判所の裁量に属することを明らかにしました。

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