人間は、集団本能に支配されながら生きています。
そのため、人間は、集団の力に簡単に屈します。
集団の力は、人間の記憶を書き変えるほど強力です。
集団の力で、人間の記憶が書き変わること示した実験を紹介します。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン教授のターリ・シャーロットの実験
実験内容
実験参加者たちに映画を見せる。
実験参加者に対し、映画に出演した女性の服の色を質問する(答えは赤色)。
当然、実験参加者たちは、記憶のとおり赤色と答える。
数日後、サクラ4人を交えて、実験参加者たちに対し、もう一度映画に出演した女性の服の色の質問をする。
ただし、今回は解答者にサクラ4人をまぜ、サクラ4人が「映画に出演した女性の服の色は白色だった」と誤った解答をするのを実験参加者たちに見せた上で、回答を求める。
結果
実験参加者の70%がサクラの誤回答に従い、「女性の服の色は白色」と答えた。
さらに
テスト終了後、実はサクラ4人の答えが偽りだったことを実験参加者に明かす。
その上で、自分自身の記憶に従ってもう一度テストを受けてもらう。
実験参加者の約半分が「女性の服は白色」と答え、記憶が変わってしまっていた。
記憶を回復することができた人の脳の動き
サクラが偽りの答えを言っていると分かったとき、脳の前頭葉(言語、思考をつかさどり、進化の過程で最も新しい脳の部位、人間脳の部分)が活性化していた参実験参加者は、記憶を回復することができた。
記憶を回復することができなかった人の脳の動き
サクラの偽りの答えに対し、脳の偏桃体(危険や恐怖の感情をつかさどり、進化の過程で最も古い脳の部位、爬虫類脳の部分)が反応していた実験参加者は、サクラの偽りの答えの方が正しい答えだと思い込み、前頭葉が機能せず、記憶の誤り正すことができなかった。
集団本能は人の記憶を書き変えるほど驚異的な力をもつ
集団の力によって、人は自分の意見、信念、記憶を集団に合わせて変えてしまいます。
これは、人間に集団本能という本能がそなわっているためです。
人類は、集団を作って生存可能性を高め、生き延びてきました。
大昔の人類にとって、外敵、病気、災害から身を守るために、集団の一員であることが必須であり、集団からはぶかれてしまうことは死を意味しました。
集団本能は、生きるための必須本能だったのです。
そのため、今を生きる私たちも、しっかりと集団本能を継承し、集団本能に支配されながら生きてきます。
集団本能は、自分の生存を左右するほど重要な本能だったので、驚異的な力をもっています。
どれくらい驚異的かというと、人の記憶を変えるほどです。
集団本能に立ち向かうには
先ほどの実験で、集団の力に打ち勝ち、記憶を回復できた人たちは、思考・言語をつかさどる前頭葉(人間脳)を活性化させていたことから分かるとおり、集団の力に打ち勝つには、思考力と言語を武器にして戦う必要があります。
集団本能などの本能が生み出す衝動を乗り越えるには、思考力と言語を駆使して、衝動の原因を言語化することで、冷静な対処が可能な状況までもっていくことが大切です。