人は、二者択一思考をしたがる
- あの人は好き、あの人は嫌い
- あの人は気が利く、あの人は気が利かない
- 世の中は、勝ち組と負け組に分けることができる
このように、人は、
- あれかこれか
- 二つにひとつしかない
と考える二者択一思考をしたがります。
しかしながら、現実は、人・社会など、あらゆる物事・出来事・事象は、複雑であり、二者択一で考えられることは、ほとんどありません。
にもかかわらず、多くの人は、物事を二者択一で考えたくなる本能にあらがうことができません。
なぜならば、物事を多面的にとらえ、複雑に考えることは、脳に負担がかかり、苦痛を伴うからです。
脳は、多くのエネルギーを消費する臓器であり、動かすのがしんどいため、なるべく楽をしたがるのです。
「複雑な計算をしたくない」「答えが見えないことはしたくない」という感情反応は、楽をしたがる脳からのメッセージです。
ここで、物事を二者択一にし、単純化してしまえば、思考が楽になり、脳が喜びます。
しかも、思考がすっきりすることで、確信がもてるので(その確信は錯覚ですが)、心地良さも手に入れることができます。
それゆえ、人は、二者択一にして、物事をとらえたがるのです。
分断本能 ~二者択一思考は本能である~
二者択一で物事を考えずにはいられない心理メカニズムを「分断本能」といいます。
分断本能により、人は、
- さまざまな物事や人々を2つのグループに分けないと気が済まない
- 頭の中で作り出した2つのグループの間には、決して埋まることのない溝があると思い込む
という状況におちいります。
二者択一思考をしてしまうのは、人の本能でもあるのです。
焦点錯覚 ~注目した一つの要因に対する答えが、全体の答えになる~
二者択一思考、分断本能が起こる理由として、「焦点錯覚」という人が持つ認知の歪みがあげられます。
焦点錯覚とは、ある代表的な問題に注意しすぎると、その代表的な問題ばかりに気を払い、他の要因を見ようとしなくなる状態になることをいいます。
たとえば、身近な人に、ひどい言葉を浴びせられたら、その出来事が代表的な問題として記憶に残り、その記憶ばかりに気を払ってしまうため、今後は、「この人は、ひどい人間だ」という認知が形成されます。
ひどい言葉を言った人も、良い所もあるかもしれません。
しかし、焦点錯覚におちいると、他の要因を見ようとしなくなるので、「この人は、ひどい人だ」という認知で固定されるのです。
まさに、二者択一思考が誕生し、分断本能が発動する瞬間です。
焦点錯覚は、二者択一思考と分断本能を形成させる引き金になるのです。
(焦点錯覚については、「焦点錯覚とは? ~注目した一つの要因に対する答えが、全体の答えになる~」で詳しく書いています)
まとめ
何事も、単純化して、白か黒かで物事を考えてしまえば、楽です。
しかし、白黒はっきりさせようとする姿勢でいたのでは、現実は複雑であるという事実から目を背け、物事を多面的に見ることができなくなってしまいます。
とはいえ、単純思考をやめるのは、なかなか難しいでしょう。
二者択一思考、分断本能、焦点錯覚には、あらがい難いからです。
私は、たいていの場合、白か黒かで物事を判断しています。