恐怖・不安などのネガティブな記憶は、消すことはできない
人は、恐怖・不安などのネガティブな記憶を消すことはできません。
その理由は、脳に可塑性という性質があるためです。
可塑性とは、個体に力を加えて変形を与えたとき、力を取り去ってもひずみが残る性質をいいます。
(粘土の上にレンガを落とすと、粘土はレンガが押し込まれた形に変形し、元の状態には戻らないイメージです)
一度、脳に記憶が刻まれると、脳回路が変形し、もう元の脳の状態には戻ることはないため、記憶が消えることはないのです。
なので、恐怖・不安などのネガティブな記憶の回路が出来上がると、その脳回路はずっと残り続けます。
これにより、恐怖・不安などのネガティブな記憶は死ぬまで残り続けるのです。
恐怖消去
恐怖・不安などのネガティブな記憶が残り続けることで、ふとしたきっかけで、その記憶が再生されてしまい、不快な感情にさいなまれることになります。
ネガティブな記憶の再生が頻繁に起こるようになると、人生は苦しいものになります。
だからこそ、対処しなければなりません。
まず、いったん出来上がった恐怖・不安などのネガティブな記憶の脳回路は、消すことができません。
なので、記憶を消そうと頑張っても無駄です。
むしろ、記憶を消そうと念じれば念じるほど、その記憶の脳回路は太くなり、より一層、記憶が再生されやすくなります。
そこで、やるべきことは、元の恐怖・不安などのネガティブな記憶を消すことはできないことを理解することです。
その上で、別の記憶の脳回路を作り出し、それを強化することで、元の記憶を脳のすみへ押しやるのです。
このプロセスを「恐怖消去」といいます。
恐怖の記憶と並行する脳回路を築くことで、不安や恐怖を感じそうな状況でも、無害な代替案となる記憶の方を示すことができます。
たとえば、仕事で新しいことにチャレンジするときに、過去にチャレンジして失敗した記憶を再生してしまうと、不安と恐怖を感じてしまいます。
しかし、過去にチャレンジして成功した記憶を再生する努力をすることで、その記憶の脳回路を強化し、過去にチャレンジして失敗した記憶を再生されにくくすることができます。
そうやって不安と恐怖を感じる必要がないことを脳に学習させます。
不安や恐怖を感じる解釈をしないように脳をしつけると同時に、無害な解釈をするように脳をしつけるのです。
ごみ回路
私は、恐怖・不安などのネガティブな記憶を再生する脳回路を「ごみ回路」と名づけています。
ごみ箱に捨てるべき脳回路という意味です。
ごみ回路が動き出したら、すぐにそれに気づいて反応し、別の無害な思考をする脳回路を立ち上げましょう。
ごみ回路は脳のすみに追いやり、無害な脳回路を前面に押し出して動かすのです。
それができれば、不安や恐怖などの不快な感情にさいなまれる人生から脱却できます。