刑法についての記事を書いています。
今回は、正当行為について説明します。
違法性とは?
正当行為を説明する前提として、違法性を説明します。
違法性とは、犯罪成立要件の1つです。
犯罪は、
- 構成要件該当性
- 違法性
- 有責性
の3つの要件がそろうと成立します。
(この点については、前の記事で詳しく書いています)
もし、殺人をしても、殺人行為に違法性が認められなければ、無罪となります。
この違法性が認められない条件(『違法性阻却事由』といいます)が、
となります。
今回は、正当行為について詳しく説明します。
正当行為とは?
正当行為とは、違法性阻却事由です。
正当行為は、
- 法令行為
- 正当業務行為
- 自救行為
- 被害者の承諾による行為
- 被害者の推定的承諾による行為
- 労働争議行為
に分類されます。
それでは①~⑧を順に説明していきます。
① 法令行為とは?
法令行為とは、
法律がそれを行うことを許している行為
をいいます。
法令行為は、以下の1⃣~3⃣の行為にカテゴライズされます。
1⃣ 職権・権利の行使として行われる行為
たとえば
- コロナなどの感染症患者を病院が強制的に入院・隔離させる行為
- 犯罪者の逮捕、死刑の執行
- 子供の教育のための親の子どもに対する懲戒行為(民法820条)
です。
ただし、職権乱用、権利乱用と認められる場合は、犯罪となるので注意が必要です。
たとえば、『しつけ』のつもりでも、子どもを叩いてケガをさせれば、傷害罪が成立します。
2⃣ 政策的理由から違法でないとされる行為
たとえば
- 宝くじ
- 競馬
- 競輪
- 競艇
- パチンコ
です。
日本において、賭博行為(賭け事)は犯罪であり、賭博罪が成立します。
宝くじ、競馬などは、税収や経済政策的観点から合法としているのです。
3⃣ 資格者に行うことを許している行為
たとえば
- 人口妊娠中絶
です。
人工妊娠中絶は、母体保護法第14条で認めれており、医師が人口妊娠中絶を行っても堕胎罪は成立しません。
正当業務行為
正当業務行為とは、
法令行為のように、法律がそれを行うことを明記して許している行為ではないが、
- 法律上正当と認められた業務行為
- 法律上の根拠はないが、社会通念上相当と認められる業務行為
をいいます。
1⃣ 「法律上正当と認められた業務行為」について
たとえば、
医師が行う手術
がこれにあたります。
外科医が手術で患者の体にメスを入れても、傷害罪は成立しません。
2⃣ 「法律上の根拠はないが、社会通念上相当と認められる業務行為」について
たとえば、
ボクシング、総合格闘技、相撲
がこれにあたります。
ボクシングで相手にケガをさせても、傷害罪は成立しません。
次回
今回は、以下の①~⑧の正当行為のうち、「① 法令行為」、「② 正当業務行為」について説明しました。
- 法令行為
- 正当業務行為
- 自救行為
- 被害者の承諾による行為
- 被害者の推定的承諾による行為
- 労働争議行為
次回以降は、「③ 自救行為」について説明します。