コミュニケーション

【アサーション③】アサーティブな自己表現 ~自分と他人の両方を大切にするコミュニケーション~

アサーティブな自己表現とは?

 アサーティブな自己表現とは、

自分の気持ちや考えを、率直かつ状況に合った適切な方法で、相手の気持ちに配慮した上で伝える自己表現

です。

 ‶ 非主張的な自己表現 ″ と ‶ 攻撃的な自己表現 ″ を避けた先にたどり着くのが、‶ アサーティブな自己表現 ″ です。

 非主張的な自己表現は、

自分の考え・気持ち・要望を率直に伝えない自己表現

なので、曖昧でオドオドした意思の伝え方になり、相手に真意がはっきりと伝わりません。

 攻撃的な自己表現は、

相手の気持ちや考えを考慮ぜず、高圧的に自分の気持ちや考えを率直に伝える自己表現

であり、相手を威力でねじ伏せるので、相手の心にダメージを与えます。

 ここで、‶ 非主張的な自己表現 ″ と ‶ 攻撃的な自己表現 ″を避け、「適切なコミュニケーションがしたい」と思ったときに採用されるのが ‶ アサーティブな自己表現 ″ です。

アサーティブとは?

 アサーティブとは、アサーションを語源とする言葉です。

 アサーションについて説明します。

 アサーションとは、

  • 自分の気持ち・考え・欲求を率直に、正直に、その場の状況に合った適切な方法で述べること
  • 相手の権利を侵すことなく、かつ、自分の権利のために意思表示を行うこと
  • 自分も他人も大切にする自己表現を行うこと

を考え方とするコミュニケーションスキルです。

「自分の気持ち・考え・欲求を率直に、正直に、その場の状況に合った適切な方法で述べること」について

 自分の気持ち・考え・欲求を素直に、正直に表現することは、誰もが生まれながらにして与えられている権利です。

 日本国憲法でいうところの表現の自由です(憲法21条)。

 まずは「自分の気持ち・考え・欲求は表現してよい」と考えられることが大切です。

 「自分の気持ち・考え・欲求は表現してよい」と考えられない人は、非主張的な自己表現をしてしまい、自分の気持ち・考え・欲求を素直に、正直に表現する権利を行使しないという選択をしてしまいます。

 それでは、良質なコミュニケーションをとることができず、他人と良好で親密な関係を築くことはできません。

「相手の権利を侵すことなく、かつ、自分の権利のために意思表示を行うこと」について

 自分自身に、自分の気持ち・考え・欲求を素直に、正直に表現する権利があると同時に、相手にも、気持ち・考え・欲求を素直に、正直に表現する権利があります。

 にもかかわらず、相手にも権利があることを自覚せず、自分の気持ち・考え・欲求を素直に、正直に表現する権利だけを考える人は、攻撃的な自己表現をしてしまいます。

 攻撃的な自己表現をすることは、相手を自分の思うとおりに動かそうとすることです。

 これでは、自分も他人も大切にするというアサーションの精神に反します。

 アサーションは、自分のことだけでなく、相手のことも大切にする自己表現なので、相手の気持ち・考え・欲求を理解しようとする姿勢が必須になります。

 なので、アサーションを実行しようとしたら、攻撃的な自己表現は排除されます。

 アサーションを実行すれば、自分の気持ち・考え・欲求を表現して相手に伝えるだけでなく、相手の気持ち・考え・欲求にも関心をもち、理解しようと努め、相手の話を聞くコミュニケーシになるのです。

アサーティブな自己表現をする方法

 アサーティブな自己表現の目指すところは、

  • 自分の気持ち・考え・欲求を率直に表現するとともに、相手にも関心を持つ
  • 相手の気持ちや考えも大切にし理解しようとする
  • 自分と他人のどちらも尊重する

コミュニケーションの実現です。

 アサーティブな自己表現を実現する方法を3つあげます。

‶ 非主張的な自己表現 ″ と ‶ 攻撃的な自己表現 ″ をしない

 アサーティブな自己表現を実現する最も分かりやすい方法は、‶ 非主張的な自己表現 ″ と ‶ 攻撃的な自己表現 ″ をしないコミュニケーションをすることです。

 非主張的と攻撃的の2つのコミュニケーションを意識的に避けるだけで、だいぶアサーティブな自己表現に近づきます。

「アサーティブな自己表現をする。非主張的な自己表現はしない。攻撃的な自己表現はしない。」と念じてからコミュニケーションをするだけで、かなりの効果があります。

 直前に念じて発動させた意志力は、しっかりと仕事をしてくれるからです。

 良いコミュニケーションをするために、悪いコミュニケーションをしないことが、シンプルで確実に効果のある方法です。

自分の話をすると同時に、相手がどんなことを考えているかに注力する

 アサーティブな自己表現は、自他尊重がベースにあります。

 なので、自分の気持ち・考え・欲求を率直に表現すると同時に、相手の気持ち・考えに関心を持って、

相手の話にも耳を傾ける

ことをします。

 つまり、自分の話を伝えるだけでなく、相手の話を聴いて、理解して、受けとめることに力を注ぎます。

 これを実現するために、‶ アイ・メッセージ ″ という手法が有効です。

 ‶ アイ・メッセージ ″ は、

「私はこう思うけれど、あなたははどう思う?」

「私は~だった。あなたはどうだった?」

というふうに、

自分の考えや意見を言うと同時に、相手の考えや気持ちを聴くための質問をする

というコミュニケーションスキルです。

 「私」のあとに、「あなた」を続けることで、自分の考えや意見を言うと同時に、相手の考えを気持ちを引き出す機会を作ります。

(実際に、「私」「あなた」という単語を使うことは必須ではなく、「私」「あなた」という単語を使ったようなコミュニケーションになればOKです)

 相手の考えや気持ちを引き出すことができれば、引き出した相手の考えや気持ちを拾って質問をなげかけ(フォローアップクエスチョン)、会話のラリーにつなげることもできます。

 ‶ アイ・メッセージ ″ が有効に使えそうなチャンスがあれば、そのチャンスを逃さずに積極的に ‶ アイ・メッセージ ″ を会話に取り入れていくことで、アサーティブさが増した自己表現になります。

相手への尊重を伝える

 アサーティブな自己表現は、他人を尊重することがテーマにあります。

 相手を尊重していることを伝えるために、会話の中に、相手に対する肯定的なメッセージを織り交ぜていくことが有効になります。

 たとえば、

「あなたの考えを聞かせてくれて、ありがとう。」

「あなたの話を聞いて、勉強になりました。」

とか、

「おつかれさま」

「すごい」「さすがですね」

「だよね」「わかる!」

などの、相手への感謝、配慮、好意のメッセージを会話の中に取り入れていきます。

 こうした何気ない肯定的なメッセージが、相手の自分に対する心の距離を縮め、良好で親密な関係を築くきっかけとなります。

アサーティブな自己表現をするときの前提条件 ~相手は異なる個性をもった人間である~

 アサーティブな自己表現をする前提として、

相手はまったく異なる個性をもった別々の人間同士なのだから、気持ちや考えが異なるのは当然

という価値観を作ってからコミュニケーションに臨むことが必要条件になります。

 なぜなら、自分がアサーティブな自己表現を頑張って実行しても、相手がそれに応えて、相手もアサーティブな自己表現で返してくれるとは限らないからです。

 そもそも、アサーティブな自己表現という考え方は、世の中の99%の人は知りません。

 たいていの場合、相手からは、非主張的な自己表現か、攻撃的な自己表現が返ってきます。

 その時に、

「異なる人間同士なんだから、コミュニケーションが食い違ってもしょうがないよね」

と落としどころを作れることが大切です。

 時に、話し合いや交渉が決裂することもあるかもしれませんが、それもやむなしです。

 相手に無用の期待は抱かない…

 そのためには、

相手はまったく異なる個性をもった別々の人間同士なのだから、気持ちや考えが異なるのは当然

という価値観を作ってからコミュニケーションに臨むことが必要なのです。

アサーティブでない人間関係は切るのもアリ

 自分がアサーティブな自己主張をする努力をしても、相手があまりにもアサーティブでない場合(攻撃的または非主張的である場合)、その相手とはそっと距離をとることも必要です。

 世の中には、たくさんの人がいるので、あえて合わない人や、人間性が成熟していない人と頑張って付き合う必要はないのです。

 むしろ、そのような人との関係を切って時間を作ることで、別の新しい人と出会う機会が生まれます。

 それにより、人間的に成熟した人と出会って関係を築き、親密になれるチャンスが生まれます。

 人間関係は、既存の関係に固定する必要はありません。

 人の考えや気持ちは、社会や環境の変化に合わせて、日々、変化していきます。

 自分の変化・他人の変化に合わせて、誰と付き合うかも代謝よく変化させ、人間関係をリセットしていく方が健全です。

このシリーズの記事まとめ一覧

【アサーション①】非主張的な自己表現 ~自己主張できない人のコミュニケーション~

【アサーション②】攻撃的な自己表現 ~相手を責めてしまう人のコミュニケーション~

【アサーション③】アサーティブな自己表現 ~自分と他人の両方を大切にするコミュニケーション~