アサーティブな自己表現とは?
アサーティブな自己表現とは、
自分の気持ちや考えを、率直かつ状況に合った適切な方法で、相手の気持ちに配慮した上で伝える自己表現
です。
‶ 非主張的な自己表現 ″ と ‶ 攻撃的な自己表現 ″ を避けた先にたどり着くのが、‶ アサーティブな自己表現 ″ です。
非主張的な自己表現は、
自分の考え・気持ち・要望を率直に伝えない自己表現
なので、曖昧でオドオドした意思の伝え方になり、相手に真意がはっきりと伝わりません。
攻撃的な自己表現は、
相手の気持ちや考えを考慮ぜず、高圧的に自分の気持ちや考えを率直に伝える自己表現
であり、相手を威力でねじ伏せるので、相手の心にダメージを与えます。
ここで、‶ 非主張的な自己表現 ″ と ‶ 攻撃的な自己表現 ″を避け、「適切なコミュニケーションがしたい」と思ったときに採用されるのが ‶ アサーティブな自己表現 ″ です。
アサーティブとは?
アサーティブとは、アサーションを語源とする言葉です。
アサーションについて説明します。
アサーションとは、
- 自分の気持ち・考え・欲求を率直に、正直に、その場の状況に合った適切な方法で述べること
- 相手の権利を侵すことなく、かつ、自分の権利のために意思表示を行うこと
- 自分も他人も大切にする自己表現を行うこと
を考え方とするコミュニケーションスキルです。
「自分の気持ち・考え・欲求を率直に、正直に、その場の状況に合った適切な方法で述べること」について
自分の気持ち・考え・欲求を素直に、正直に表現することは、誰もが生まれながらにして与えられている権利です。
日本国憲法でいうところの表現の自由です(憲法21条)。
まずは「自分の気持ち・考え・欲求は表現してよい」と考えられることが大切です。
「自分の気持ち・考え・欲求は表現してよい」と考えられない人は、非主張的な自己表現をしてしまい、自分の気持ち・考え・欲求を素直に、正直に表現する権利を行使しないという選択をしてしまいます。
それでは、良質なコミュニケーションをとることができず、他人と良好で親密な関係を築くことはできません。
「相手の権利を侵すことなく、かつ、自分の権利のために意思表示を行うこと」について
自分自身に、自分の気持ち・考え・欲求を素直に、正直に表現する権利があると同時に、相手にも、気持ち・考え・欲求を素直に、正直に表現する権利があります。
にもかかわらず、相手にも権利があることを自覚せず、自分の気持ち・考え・欲求を素直に、正直に表現する権利だけを考える人は、攻撃的な自己表現をしてしまいます。
攻撃的な自己表現をすることは、相手を自分の思うとおりに動かそうとすることです。
これでは、自分も他人も大切にするというアサーションの精神に反します。
アサーションは、自分のことだけでなく、相手のことも大切にする自己表現なので、相手の気持ち・考え・欲求を理解しようとする姿勢が必須になります。
なので、アサーションを実行しようとしたら、攻撃的な自己表現は排除されます。
アサーションを実行すれば、自分の気持ち・考え・欲求を表現して相手に伝えるだけでなく、相手の気持ち・考え・欲求にも関心をもち、理解しようと努め、相手の話を聞くコミュニケーシになるのです。
アサーティブな自己表現をする方法
アサーティブな自己表現の目指すところは、
- 自分の気持ち・考え・欲求を率直に表現するとともに、相手にも関心を持つ
- 相手の気持ちや考えも大切にし理解しようとする
- 自分と他人のどちらも尊重する
コミュニケーションの実現です。
アサーティブな自己表現を実現する方法を3つあげます。
‶ 非主張的な自己表現 ″ と ‶ 攻撃的な自己表現 ″ をしない
アサーティブな自己表現を実現する最も分かりやすい方法は、‶ 非主張的な自己表現 ″ と ‶ 攻撃的な自己表現 ″ をしないコミュニケーションをすることです。
非主張的と攻撃的の2つのコミュニケーションを意識的に避けるだけで、だいぶアサーティブな自己表現に近づきます。
「アサーティブな自己表現をする。非主張的な自己表現はしない。攻撃的な自己表現はしない。」と念じてからコミュニケーションをするだけで、かなりの効果があります。
直前に念じて発動させた意志力は、しっかりと仕事をしてくれるからです。
良いコミュニケーションをするために、悪いコミュニケーションをしないことが、シンプルで確実に効果のある方法です。
自分の話をすると同時に、相手がどんなことを考えているかに注力する
アサーティブな自己表現は、自他尊重がベースにあります。
なので、自分の気持ち・考え・欲求を率直に表現すると同時に、相手の気持ち・考えに関心を持って、
相手の話にも耳を傾ける
ことをします。
つまり、自分の話を伝えるだけでなく、相手の話を聴いて、理解して、受けとめることに力を注ぎます。
これを実現するために、‶ アイ・メッセージ ″ という手法が有効です。
‶ アイ・メッセージ ″ は、
「私はこう思うけれど、あなたははどう思う?」
「私は~だった。あなたはどうだった?」
というふうに、
自分の考えや意見を言うと同時に、相手の考えや気持ちを聴くための質問をする
というコミュニケーションスキルです。
「私」のあとに、「あなた」を続けることで、自分の考えや意見を言うと同時に、相手の考えを気持ちを引き出す機会を作ります。
(実際に、「私」「あなた」という単語を使うことは必須ではなく、「私」「あなた」という単語を使ったようなコミュニケーションになればOKです)
相手の考えや気持ちを引き出すことができれば、引き出した相手の考えや気持ちを拾って質問をなげかけ(フォローアップクエスチョン)、会話のラリーにつなげることもできます。
‶ アイ・メッセージ ″ が有効に使えそうなチャンスがあれば、そのチャンスを逃さずに積極的に ‶ アイ・メッセージ ″ を会話に取り入れていくことで、アサーティブさが増した自己表現になります。
相手への尊重を伝える
アサーティブな自己表現は、他人を尊重することがテーマにあります。
相手を尊重していることを伝えるために、会話の中に、相手に対する肯定的なメッセージを織り交ぜていくことが有効になります。
たとえば、
「あなたの考えを聞かせてくれて、ありがとう。」
「あなたの話を聞いて、勉強になりました。」
とか、
「おつかれさま」
「すごい」「さすがですね」
「だよね」「わかる!」
などの、相手への感謝、配慮、好意のメッセージを会話の中に取り入れていきます。
こうした何気ない肯定的なメッセージが、相手の自分に対する心の距離を縮め、良好で親密な関係を築くきっかけとなります。
アサーティブな自己表現をするときの前提条件 ~相手は異なる個性をもった人間である~
アサーティブな自己表現をする前提として、
相手はまったく異なる個性をもった別々の人間同士なのだから、気持ちや考えが異なるのは当然
という価値観を作ってからコミュニケーションに臨むことが必要条件になります。
なぜなら、自分がアサーティブな自己表現を頑張って実行しても、相手がそれに応えて、相手もアサーティブな自己表現で返してくれるとは限らないからです。
そもそも、アサーティブな自己表現という考え方は、世の中の99%の人は知りません。
たいていの場合、相手からは、非主張的な自己表現か、攻撃的な自己表現が返ってきます。
その時に、
「異なる人間同士なんだから、コミュニケーションが食い違ってもしょうがないよね」
と落としどころを作れることが大切です。
時に、話し合いや交渉が決裂することもあるかもしれませんが、それもやむなしです。
相手に無用の期待は抱かない…
そのためには、
相手はまったく異なる個性をもった別々の人間同士なのだから、気持ちや考えが異なるのは当然
という価値観を作ってからコミュニケーションに臨むことが必要なのです。
アサーティブでない人間関係は切るのもアリ
自分がアサーティブな自己主張をする努力をしても、相手があまりにもアサーティブでない場合(攻撃的または非主張的である場合)、その相手とはそっと距離をとることも必要です。
世の中には、たくさんの人がいるので、あえて合わない人や、人間性が成熟していない人と頑張って付き合う必要はないのです。
むしろ、そのような人との関係を切って時間を作ることで、別の新しい人と出会う機会が生まれます。
それにより、人間的に成熟した人と出会って関係を築き、親密になれるチャンスが生まれます。
人間関係は、既存の関係に固定する必要はありません。
人の考えや気持ちは、社会や環境の変化に合わせて、日々、変化していきます。
自分の変化・他人の変化に合わせて、誰と付き合うかも代謝よく変化させ、人間関係をリセットしていく方が健全です。
このシリーズの記事まとめ一覧
【アサーション①】非主張的な自己表現 ~自己主張できない人のコミュニケーション~
【アサーション②】攻撃的な自己表現 ~相手を責めてしまう人のコミュニケーション~
【アサーション③】アサーティブな自己表現 ~自分と他人の両方を大切にするコミュニケーション~