自分の期待や要望に100%応えてくれる人などいない
コミュニケーションや人間関係において、相手に不満や怒りが生じるのは、相手に期待や要望を抱くからです。
「このくらいできて当然だよね」という期待や、「ああしてほしい」「こうしてほしい」という要望どおりに相手が動かなったときに、コントロール不能感を感じ、相手に対する不満や怒りが生まれます。
上司と部下の仕事の関係で、部下を期待どおりに動くようにコントロールしなければならない場面など、相手に対して期待や要望を抱く必要がある場面はあるかもしれません。
しかし、たいていの場合、不満や怒りが生まれるコミュニケーションや人間関係は、避けた方が無難です。
人間は、マイナスの優位性というネガティブなことを強烈に記憶に残そうとする本能をもっています。
そのため、不満や怒りなどのネガティブな出来事や記憶は忘れることはありません(忘れていてもふとしたきっかけで思い出します)。
1回のネガティブな出来事や記憶で、良好で親密な人間関係が崩れ去ってしまうこともあります。
なので、コミュニケーションや人間関係において、不満や怒りが生じないように、始めから、
自分の期待や要望に100%応えてくれる人などいない
という前提を自分の心の中に作っておくことが有効です。
その前提を持っていれば、相手が自分の期待や要望に応えてくれなかったとしても、「まぁ、しょうがないよね」と落としどころを作って、気持ちを整理することができます。
自分が相手の期待や要望に100%応えられないのだから、相手も自分の期待や要望に100%応えられない
そもそも、自分自身は、相手の期待や要望に100%応えられる人間でしょうか?
こたえはNOです。
自分も相手も、何でもかんでも相手の期待や要望に100%応えられる完璧な人間ではありません。
つまり、自分が相手の期待や要望に100%応えることができないのと同じく、相手も自分の期待や要望に100%応えることはできないのです。
にもかかわらず、相手に自分の期待や要求に100%応えるように求めることは、
「私は、あなたの期待や要望に100%応えられないけど、あなたは私の期待や要求に100%応えてね」
と言っているのと同じです。
そのことを理解しておけば、相手が自分の期待や要望に応えてくれなかったとしても、自分の心の中に不満や怒りなどのネガティブな感情を作り出さなくてすむ可能性が高くなります。
不満や怒りなどのネガティブな感情は、自分の心が生み出すものです。
なので、不満や怒りなどのネガティブな感情を生み出した最終責任者は自分自身と考えることもできます。
自分の責任は自分で処理できるようにしましょう。
自分の責任を他人に転嫁してはいけません。
自分も他人も完璧にはなれない
世の中に完璧な人はいません。
長所ばかりで完璧そうに見える人でも、状況や環境によって、その長所は短所に変わるので、完璧な人というのはいないのです。
自分が完璧になれないのと同じで、相手も完璧になれません。
自分が完璧になれないのに、相手に完璧を求めるのは、都合の良い話です。
相手に、自分の理想を求めても、相手はその理想にいつかは答えられなくなるので、その段階で、自分の心の中に相手に対する不満や怒りを生み出してしまいます。
これでは、良好で親密な人間関係を築くことはできません。
「自分も他人も完璧になれない。だから、相手の不完全さも受け入れる」という姿勢が、良好で親密な人間関係を築くためには必要です。
相手を傷つけ、相手に傷つけられることもある
自分も相手も不完全な存在です。
なので、自分も相手も、時に失敗して失望させ合ったり、失言するなどして傷つけ合ったりすることもあります。
たとえ相手のことを思いやる気持ちがあったとしても、相手に失望して相手を傷つけることや、反対に、相手から失望されて相手から傷つけられることが起こってしまうものです。
そのようなときに、大切なことは、
私たちは相手に対して完璧になることはできない
ことを認めた上で、
自分は相手を失望させて傷つけてしまうことがあり得るし、相手から失望させられたり傷つけられたりすることもあり得る
という前提で、コミュニケーションをして、人間関係を築いていくことです。
そうすることで、もしお互いに失望させたり傷つけたりしてしまうような言動をしてしまったとしても、
「お互い不完全な存在なんだからしょうがない」
と考えることができ、それが、きちんと謝り、関係を修復する手当をする機会をくれます。