衝突のダンスとは?
衝突のダンスとは、
2人の間に問題が生じると、お互いに自分を正当化して相手を責める
というコミュニケーション形態です。
人は、正当化バイアスをもっているので、本能的に、自分を正当化せずにはいられないのです。
自分に非があると認めることは、苦しくて不快なので、自分の精神が傷つくことを防ぐために、反射的に
「自分は間違っていない。自分は正しい。」
「あなたが間違っている。あなたに非があることを認めるべきだ。」
とする言動を発してしまいます。
衝突のダンスは、お互いに、
自分に非はなく、相手に非がある
という言い争いを繰り広げます。
その根底には、
- 正当化バイアスによる自分を正当化せずにはいられない本能
- 自分の言い分を認めてほしいという欲求
- 自分を悪者にするなという要求
があります。
これが満たされないと感じると、自尊心が傷つき、怒りや憤りが生まれ、相手に攻撃的に出てしまい、衝突することになります。
人は、自分が傷つくことには、飛び切り敏感なのですが、相手が傷つくことに対しては、自分の傷つきに比べると、はるかに鈍感です。
そのため、衝突のダンスが起こると、自分の気持ちや考えはストレートにぶつけるのですが、相手の話を冷静に聞いて理解しようとする意思に欠けるので、争いが泥沼化します。
衝突のダンスから抜け出すためには、
- 最初に『自分と相手は、人格、精神性、立場、育った環境などが異なる独立した存在なのだから、意見が異なる方が当然』という前提に立つこと
- 相手と一緒であることや、一体感を求めすぎないこと
- 相手が自分の思いや欲求を理解し、折れることを期待しすぎないこと
- 「言いたいことは何でも言ってよい」という思い込みを捨てること
が必要になりなります。
衝突のダンスを回避するための具体的な行動は、
- お互いに相手の話を冷静に聴くこと
- 自分の気持ちや考えをパートナーに伝える際に、攻撃的ではなくアサーティブに伝えること
- 非言語的な側面にも気を付けて、必要以上に大きな声で話したり、一方的にしゃべり続けたりしないこと
- 威圧的な態度をとらないこと
になります。
距離をとるダンスとは?
距離をとるダンスとは、
2人が問題に直面すると、お互いに自分の気持ちや考えを率直にパートナーに伝えないで、自分の心の中にしまいこむ
というコミュニケーション形態です。
衝突のダンスとは正反対のコミュニケーションです。
距離をとるダンスでは、相手と表面的な会話だけをするように努めます。
そして、なるべく一緒にいる時間を減らして、物理的に距離をとろうとします。
いわば、「冷戦状態」です。
内心はお互いイライラ、ギスギスしていますが、お互いに距離をとっているので、表面的には問題がないように見えることもあります。
距離をとるダンスになってしまう原因は、
- 衝突することによる関係悪化を恐れること
- 自分自身が傷つくのを恐れること
- 適切な自己主張をするコミュニケーション能力不足
にあります。
心の底では、お互いに不満や怒りを感じていたり、相手が自分のことをどう思っているかを気にしています。
しかし、その気持ちを相手に伝えたり、話し合うことで、衝突が生まれ、それにより自分が傷つくことを恐れます。
これを防ぐためには、自分の考えや気持ちを素直に相手に伝えるとともに、相手から、相手の考えと気持ちを話してもらい、お互いがそれをいったん受け止めるというコミュニケーションスキル(アサーティブな自己主張)が必要になります。
少しずつでもよいので、自分の気持ちや考えを相手に伝える行動を積み上げることが必要です。
追跡者・回避者のダンスとは?
追跡者・回避者のダンスとは、
問題に直面したときに、片方が感情的になって攻撃的に責める(追跡者)、もう片方は追跡者からぶつけられた感情にうまく対応できず、苦し紛れの理屈で自己防衛したり、黙り込んでしまう(回避者)
というコミュニケーション形態です。
片方は「衝突のダンス」をする、もう片方は「距離をとるダンス」をする状態です。
追跡者は、感情的かつ攻撃的に相手を追求し、相手に自分の意に沿う供述を吐かせようとします。
回避者は、追求者の攻めに臆して精神的に追い込まれ、ストレスで脳の前頭葉(論理的な思考をつかさどる脳の部位)の機能が激減し、適切な自己表現ができなくなります。
症状が重くなると、言葉が出てこなくなり、失語症のような状態になります。
そして、回避者は、逃げるように相手との距離を取ろうとします。
(このとき、回避者は、相手が自分を責めすぎていることが問題だと思っています)
すると、追跡者は、ますます怒り、回避者をさらに強く追及します。
(このとき、追求者は、相手が自分のようにしっかりと向き合わず、逃げようとしていることが問題だと思っています)
こうして、2人は、負えば負うほど逃げられる、逃げれば逃げるほど追われるという悪循環に陥ります。
この場合、お互いに、相手が自分のようにかかわろうとしないことが問題だと考えています。
追求者と回避者の対応は、どちらが悪いということはありません。
時に、相手と向き合うことも、相手から距離を取ることも両方大切なので、ある意味で2人とも正解です。
このことから、追求者・回避者のダンスをやめる方法は、どちらか一方が折れて態度を変えればよいというものではありません。
追跡者は相手を追いかけないで立ち止まるが必要ありますし、一方で、回避者は追跡者と距離を取ろうとせず、言葉を使って向き合うことが必要になります。
追跡者は、自分が責めすぎたことを自覚し、回避者に対し、
「責めすぎてごめん。責めるのをやめるから、私と向き合うようにして。」
などと自己表現することが有効になります。
回避者は、追跡者に対し、
「責められるとパニックになって頭がまっ白になってしまう。少し責めるのをやめて。これから逃げずに向き合うから。」
などと自己表現することが有効になります。