刑事訴訟法(捜査)

逮捕・勾留の効力範囲①~「事件単位の原則」を説明

 前回の記事の続きです。

事件単位の原則

 逮捕・勾留は、逮捕状・勾留状に記載されている犯罪事実を基準として行われます。

 そして、逮捕・勾留の効力は、逮捕状・勾留状に記載されている犯罪事実のみに及びます。

 これを、「事件単位の原則」といいます。

 具体的には、逮捕・勾留の要件、勾留延長事由、保釈事由の存否などの身柄拘束に係る判断は、逮捕・勾留事実についてなされます。

 この点に関する以下の裁判例があります。

福岡高裁判決(昭和30年7月12日)

 裁判所は、

  • 元来、被告人又は被疑者に対する勾留原由の有無は勾留状記載の犯罪事実だけを基準にして判断すべきものなることは憲法第33条刑事訴訟法第60条第1項第61条第64条第1項第207条第208条第345条の各規定の趣旨に照らして疑をいれないところであり、また勾留の目的は勾留されている罪についての捜査、審判、刑執行の確保にあるものと解するのを相当とするから、これらの点に徹すれば、刑事訴訟法第60条第2項の勾留更新事由の有無、同法第98条の権利保釈事由の存否及び同法第96条第1項の保釈取消事由の有無は全て現に併合審理中の起訴事実全部を対象として判断すべきものではなく、当該勾留状記載の犯罪事実のみを基準にして決すべきものと解するのが相当である

と判示しました。

同一人につき、複数の犯罪事実で一度に逮捕・勾留することができる

 逮捕・勾留の単位を犯罪事実とすることから、同一人につき、複数の犯罪事実で一度に逮捕・勾留することが可能です。

 例えば、被疑者Aを窃盗罪と詐欺罪の両事実で逮捕・勾留することができます。

同一人に対し、異なる犯罪事実で逮捕・勾留を繰り返すことができる

 逮捕・勾留の単位を犯罪事実とすることから、同一人に対し、異なる犯罪事実で逮捕・勾留を繰り返すことができます。

 例えば、被疑者を窃盗罪で逮捕・勾留した後、その後再び、詐欺罪で逮捕・勾留することができます(「再逮捕」「再勾留」と呼ばれます)。

 しかし、合理的な理由を欠く逮捕・勾留の不当な蒸し返しは避けなければならないとされます。

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