法律(刑事訴訟法)

現行犯逮捕とは?② ~「現行犯逮捕の方法(通常逮捕と緊急逮捕との違い)」「一般人(私人)による現行犯逮現場における捜索・差押・検証、逮捕時の実力行使、逮捕後の手続」を解説~

現行犯逮捕の方法(通常逮捕と緊急逮捕との違い)

 現行犯人は、犯罪を犯した犯人が明らかであることから、誰でも、逮捕状なしに、犯人を逮捕することができます。

 逮捕に当たっては、逮捕理由と犯罪事実を告げる必要もありまん。

 これは、何の犯罪事実でなぜ逮捕されるかが、犯罪を犯したばかりの犯人にとって理解できているからです。

通常逮捕と緊急逮捕との違い

1 逮捕状について

 通常逮捕の場合は、前もって裁判官から逮捕状を発布してもらっている必要があります(前の記事参照)。

 緊急逮捕の場合は、逮捕後に、裁判官に逮捕状を請求し、逮捕状を発布してもらわなければなりません(前の記事参照)。

 これに対し、現行犯逮捕は、裁判官に逮捕状を請求して発布してもらう必要がなく、逮捕状なしで逮捕行為ができる点に違いがあります。

2 逮捕理由と犯罪事実の告知について

 通常逮捕と緊急逮捕は、逮捕理由と犯罪事実を被疑者に告げてから逮捕しなければなりません。

 これに対し、現行逮捕の場合は、逮捕理由と犯罪事実を被疑者に告げる必要がない点に違いがあります。

被害申告を理由とする現行犯人の逮捕

 現行犯逮捕は、

現に犯行を目撃した人が逮捕する方法

のほかに、

犯行を目撃してしていないが、目撃者からの申告や諸般の事情(犯人の挙動、犯行状況、証跡など)から現行犯人と認めて逮捕する方法

があります。

 たとえば、スーパーの店員が万引きを目撃して警察に通報し、すぐに駆けつけた警察官が、店員の話や現場の状況から、万引き犯を現行犯逮捕する場合がこれに当たります。

 警察官は、客が万引きをしたところを目撃していませんが、スーパーの店員が被害申告した内容や、万引き犯が店の事務所で万引きした商品を出している状況などから、万引き犯を現行犯人と認め、現行犯逮捕することができます。

現行犯逮現場における捜索・差押・検証

 捜査機関(検察官、検察事務官、司法警察職員)が犯人を現行犯逮捕した場合は、逮捕に伴い、令状(捜索差押令状、検証許可状)なしで、逮捕現場における捜索・差押・検証をすることができます(刑訴法220条1項)。

 逮捕現場で、令状なしで、逮捕に伴う捜索・差押・検証ができる点については、通常逮捕、緊急逮捕と同じです。

 ここでのポイントは、一般人が現行犯逮捕した場合は、一般人は逮捕現場における捜索・差押・検証をすることができない点にあります。

 これは、法が、逮捕現場において令状なしで逮捕に伴う捜索・差押・検証ができるのは、

検察官、検察事務官、司法警察職員

に限定する規定になっているためです(刑訴法220条1項)。

 そもそも、一般人は、犯罪捜査の素人なので、捜索・差押・検証などの捜査を行わせるのは適切ではありません。

逮捕時の実力行使の適法性

 現行犯逮捕するときに、

捜査機関であるか、一般人あるかを問わず、

社会通念上必要かつ相当であると認められる限度内の実力行使

ができます。

 この点については、通常逮捕、緊急逮捕と同じです。

 ここでのポイントは、一般人(私人)も現行犯逮捕するに当たり、ある程度の実力行使ができるということです。

 逮捕行為をするに当たり、犯人が逮捕されまいとして抵抗することが想定されます。

 犯人から抵抗を受けた場合、逮捕者は、自身の身を守るためにも、社会通念上必要かつ相当であると認められる限度内の実力行使をすることが必要になります。

 この点については、最高裁判例(昭和50年4月3日)があり、裁判官は、

  • 現行犯逮捕をしようとする場合において、現行犯人から抵抗を受けたときは、逮捕をしようとする者は、警察官であると私人(一般人)であるとをとわず、その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度内の実力を行使することが許される
  • たとえその実力の行使が刑罰法令に触れることがあるとしても、刑法35条により罰せられないものと解すべきである

と判示しています。

 たとえ逮捕行為で相手に傷害を負わせたとしても、それは刑法35条正当業務行為として、傷害罪に問われずに済みます。

現行犯逮捕後の手続

 現行逮捕後の手続は、通常逮捕の場合と同じです(刑訴法216条)。

※ 具体的な手続の説明は前の記事参照

 ただし、通常逮捕の場合と異なる点が1つあります。

 それは、一般人(私人)が現行犯逮捕した場合です。

 一般人が現行犯逮捕した場合は、直ちに、検察官か司法警察職員(司法警察員、司法巡査)に犯人を引き渡さなければなりません(刑訴法214条)。

 司法巡査が一般人から犯人を受け取ったときは、司法巡査は、速やかに犯人を司法警察員に引き渡さなければなりません(刑訴法215条1項)。

 司法巡査は、階級が下位に位置するため、犯人の留置を継続するか、それとも釈放するかを決める権限がありません。

 するため、上位の階級に位置し、犯人の留置を継続するか、釈放するかを決めることができる司法警察員に犯人を引き渡す必要があるのです。

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